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大学に推薦する優秀卒業論文の推薦文一括掲載

以下の推薦論文はすべて大学の推薦論文として認定され、現在大学ホームページに掲載されています。
→http://www.tufs.ac.jp/insidetufs/kyoumu/yushuronbun23.html

今朝8時から現在まで、気づけば11時間ほぼノンストップで4人の
卒論と推薦文と格闘して終わってしまいました・・・。せっかくの力作
つまらないミスで台無しになってはという気持ちでしたが、終わって
みれば、1日ってなんて短いのだろう・・・といささか絶望的な気持ち
に。これで教務委員会にはねられては残念ですが、やるだけやった
学生と私。すべては透明性のもとに評価をする私ですから、推薦文
一括載せてしまいます。もし大学のウェブに皆の論文が掲載されな
くても、ゼミのには掲載するからね。
 大学がいいと思わなくても、私は全員の論文がいいものだったと
思います。(もちろん、学術ジャーナルに掲載するとか、修士論文
とかだったら別の基準になるので、そこはお間違えなく!)
 なお、12卒論の内この4名の論文が選ばれたのは、学生・院生・
教員(3名)・卒業生の総勢三十数名総合評価の結果によります。
12名の論文全部に推薦状を書きたかったのですが、でもコメント
は先月全員に送ったからね(あっ。団子四兄弟の末っ子以外・・)
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平成23年度優秀卒業論文 推薦文

■推薦論文:中所得国が生む格差〜「アフリカの優等生」ボツワナを事例に〜(論文執筆者:ドイツ語専攻4年 山脇遼介)
 本論文は、一国内の所得格差が「最も深刻(the most unequal)」とされる中所得国において格差が生じるメカニズムを、その顕著な経済成長と人間開発指標等の改善により世界的に称賛されるアフリカのボツワナを事例として明らかにしようと試みた労作である。
 世界的にみて、一国内の経済格差に関する議論は、所謂「富裕国(高所得国)」内の格差や、「貧困国(低所得国)」内における貧富の格差に注目が集まってきた。それは、「豊かな国の貧困層」「貧しい国の富裕層」のコントラスト/矛盾が、その分かりやすさゆえに関心を惹いてきたからである。しかし、本論文が指摘するように、所得格差を表すジニ係数の中所得国平均は43.2と、低所得国平均の38.8、高中所得国平均の37.1を大きく上回っている。冷戦の終結以降、グローバル化が進む現在の世界において、中所得国の数は増え続け、109か国を数えるほどになり、世界の大半を占めるに至っている。したがって、中所得国の格差を考えることは、従来の貧困国から経済成長を経て富裕国へという単線的な経済成長至上主義、あるいは一国の経済成長率の増大が国民の豊かさにつながるというトリクルダウン至上主義の再考にもつながり、世界的な広がりを持ちうるテーマといえる。
 本論文では、まず第1章で、経済成長と格差の相関関係に関する先行研究の整理によって、中所得国に焦点をあてて格差を議論することの学術的な位置づけが示された上で、先行研究の課題が明らかにされる。特に、サイモン・クズネッツ(Simon Kuznets)が1955年に提唱した逆U字曲線(Inverted U Curve)に関する議論を出発点として現在までの流れが振り返えられる。その上で、中所得国の格差について検討することの学術的な位置づけが示される。そして、本論文の事例と同様に、経済成長と同時に格差が増大した二か国(南アフリカ及びメキシコ)を焦点として先行研究の整理が行われ、中所得国における格差の要因に関する共通点と限界が整理される。
 次に、第2章では、本論文の事例となるボツワナにおける格差の要因が検討されるが、第1章の整理に基づき、特に社会、政治的な背景に着目した考察が行われる。格差の根本原因として、ボツワナに居住する先住民族であるバサルワ(Basarwa)の周辺化があること、バサルワの周辺化が決定づけられた要因として、同国が「中所得国」となり、周辺化に対処するきっかけを失ったためであったことを明らかにしている。
結語では、第一章における理論研究及び第二章における事例研究を踏まえ、(1)統計に頼りがちな格差研究の問題点、(2)経済成長を目指すことやその結果として中所得国家となることそれ自体によって格差が引き起こされる可能性があるという点を指摘している。
 本論文は、英語文献67点、日本語文献6点にも上る英語文献を駆使し、先行研究に基づく理論及び事例研究を行っているとともに、地域研究の視点を取り入れた大変な労作となっている。論文の中の記述に直接反映されているわけではないが、ボツワナの日本大使館で2年間働いた経験が十分に活きた卒業論文となっており、本学外国語学部の優秀論文として相応しい論文と考え、ここに推薦する。

■推薦論文:サブサハラ・アフリカでのMDGs達成におけるBOPビジネスの役割~持続可能性の視点から~
(論文執筆者:英語専攻4年 崎山いぶき) 
 本論文は、世界の貧困者を半減させる等の目標を掲げた「国連ミレニアム開発目標(MDGs)」の期限が3年後に迫った現在、近年世界的に関心が高まる「BOPビジネス(Bottom/Base of the Pyramid)」の同目標達成への寄与の可能性と課題を、筆者独自の指標を用いて検討したものである。
2012年現在、中国やインドの経済成長は数字の上でのMDGs達成を確実なものとしているが、サブサハラ・アフリカに限ってみると、同地域でのMDGsの達成は絶望的とされている。筆者は、MDGsにも掲げられる多様なアクター間のパートナーシップに注目し、従来の開発援助機関やNGOに留まらず、民間企業の果たしうる役割の重要性を指摘する。中でも、近年多国籍企業をはじめとして、日本企業も急速に取り入れられつつあるBOPビジネスが、サブサハラ・アフリカのMDGs達成に貢献できるのか否かについて、二つの事例に焦点を当てて検討している。
本論文の構成は次の通りとなっている。
 第1章では、BOPビジネスをめぐる議論の変遷と、BOPビジネスによって期待される開発の効果が論じられる。特に、BOPビジネスへの高まる期待の一方で、先行研究にみられるBOPビジネス批判を丁寧に整理しながら、BOPビジネスが最近では「BOP1.0」と「BOP2.0」の二つに分類されて議論されつつあることを示すなど、最新の議論の提示が行われている。さらに、次章で使用する指標も紹介されるが、これはすでにある三つの異なる指標にさらに「持続可能性」という要素を加えた筆者独自のものとなっている。
 続く第2章では、「BOP1.0」と「BOP2.0」の両方を事例として取り上げて検証するため、P&G(BOP1.0)と住友化学(BOP2.0)のアフリカでの事業が事例として選定され、その概要が述べられた後、まずはMDGsの各ゴール(ゴール4、6、7)の達成にどの程度寄与しているのかについて前章で作成した指標を用いた検証がなされている。本章の結論としては、両事例はゴール達成に寄与しているものの、「持続可能性」という点を加味すると、大いに課題があることが明らかにされる。
 結語では、以上の先行研究整理と指標、事例研究を踏まえ、BOPビジネスの課題と展望について、MDGsの今後と「持続可能性」の観点から意見が述べられている。
 本論文の重要な意義は、BOPビジネスを標榜する企業やそれを支援する援助機関や政府、研究者が唱える事業のMDGsへの寄与というポジティブな評価が、「持続可能性」という観点を加味して検証し直されると、異なった結果(ネガティブな評価)をもたらすことを明らかにしている点にある。これは現在国内外で顕著な「BOPビジネス信仰」に警鐘を鳴らす結論であり、企業自身のみならずそれを推進する側、あるいはこれらの企業を消費という形で買い支えする消費者も注目していくべき点であることは間違いないであろう。MDGsの期限が2015年に迫った今、サブサハラ・アフリカの抱える社会課題に世界が取り組むことは重要であるものの、その取り組み方や「2015年(MDGs)後」を考える議論がもっと盛り上がるべきという主張は、的を得た指摘である。
 筆者は、入学時からアフリカ課題における企業の役割をテーマとし、CSRやBOPビジネスの可能性について研究を積み重ねてきた。このような机上の考察ばかりでなく、虐殺後のルワンダで女性たちが生産したコーヒーを輸入・焙煎・販売する学生サークル「ファムカフェ(FammeCafe)」初代代表として実践面からも試行錯誤を繰り返し、本論文の執筆に至っている。筆者は、今夏にはルワンダを訪問し、身を以て現地の課題の大きさを認識するとともに、ここ数年来経済ブームが続くアフリカへの企業進出を目の当たりにした。この企業の役割の大きさと危険を肌で感じたことこそ、本論文に通底する問題意識の原点であったと考えられる。なお、本論文は、43の英語文献、25の日本語文献を用いて執筆されており、十分な先行研究に基づく理論及び事例研究を行っている点を追記する。
 以上から、本学外国語学部の優秀論文として相応しい論文と考え、ここに推薦する。

■推薦論文:サハラ以南アフリカにおいてマイクロクレジットが女性のエンパワーメントに与える効果と外部者の役割(論文執筆者:ポルトガル語専攻4年 関美咲)
 本論文は、女性の貧困化が進むアフリカにおいて、脚光を浴びつつあるマイクロクレジットの導入が、女性のエンパワーメントを促すのかどうかについて明らかにするとともに、女性と外部者との関わりについて検討を加えることを目的としている。近年のアジア、特にバングラデッシュにおけるグラミン銀行の成功によって、マイクロクレジットが貧困女性のエンパワーメントに役立ったという理解が、先行研究上においても世界的な認識においても広まっている。同様のことが、近年急速にマイクロクレジットが普及しつつあるアフリカにおいてもいえるのかについて、スーダン及びガーナを事例として検討するのが本論の狙いである。本論文の手順は次の通りである。
 第1章では女性のエンパワーメントとマイクロクレジットに関する先行研究の整理が行われる。多様なエンパワーメントの定義や理論を検討したのち、本論文では女性のエンパワーメントに焦点を絞り、「男性と比較して相対的に権利や資源、パワーを奪われている女性が経済的、社会的、政治的、心理的パワーを獲得し、最終的に男女間の関係に変化が起こる(=ジェンダーの平等が達成される)プロセス」と定義することが示される。この際、アフリカにおいて女性の権利や平等、人権活動に30年余り従事してきたサラ・ロングウェ(Sara Longwe)の「五段階のエンパワーメント・フレームワーク(five level of a Women’s Empowerment Framework)」が参考にされる。次に、本論文で焦点を当てるマイクロクレジットの説明の後に、マイクロクレジットによって女性が獲得しうるパワーを、リンダ・マイユー(Linda Mayoux)の見解を参考に、アジアに関する先行研究が整理される。その際、先述のロングウェのエンパワーメント・フレームワークが用いられ、小口融資によって女性のエンパワーメントが達成されるプロセスが分類され、先行研究における議論の違いが外部者の役割にあるという本論文の主張が導かれるとともに、事例検証で使われる指標が提示される。
 続く第2章では、スーダンとガーナで実施されたマイクロクレジット事業が、地元の女性のエンパワーメントにどのような効果を果たしているのかについて分析が行われる。その際に、前章の結論を踏まえ、外部者の介入が注目されるとともに、指標を使ったエンパワーメント段階の評価がそれぞれの事例について行われる。
 以上の先行研究整理、アジアでの先行事例を踏まえた指標の整理、それに基づくアフリカの二つの事例研究を踏まえ、結語では、女性のエンパワーメントに対してマイクロクレジットが果たす役割を、外部者の介入という視点から考察した後に、エンパワーメントにおける社会関係の変革の重要性が触れられる。   
 本論文の意義は、豊富な先行研究の整理と、アジアの事例で得た知見をアフリカの事例に活かして分析を加えている点にあるが、それだけに留まらない。そもそも女性のエンパワーメントとは何であり、エンパワーメントをマイクロクレジットのような外部関与が促すことができるのかという問いを、全体を通して検討し続けている点にある。これは、論文の冒頭にも示されている通り、筆者が1年間モザンビークに留学した経験が大いに影響していると考えられる。アフリカへの公的な交換留学生一号として都市だけでなく農村社会にも溶け込もうとした筆者ならではの、理解と問題意識、そして意気込みが感じられる論文となっている。ただし、筆者は論文の事例として取り組みやすいが先行研究のないモザンビークを対象として選ばなかった。あえて先行研究のあるアフリカの他の事例を取り上げて検証を行っている点に、筆者の努力の痕が見受けられる。自分が関心を寄せ対象として学ぶ一地域だけに焦点を当てた分析で満足するのではなく、「女性のエンパワーメント」といういずれの社会においても、そして世界にとっても重要なテーマについて、アフリカ内の二か国、そしてアジアとの地域間比較を行いながら考察を行っている点で、筆者は地域研究の新しい手法を提示したともいえる。
また、本論文は、40点近くにも上る英語及び日本語文献(合計80点近く)を駆使し、先行研究に基づく理論及び事例研究を行っている点を追記する。
 以上から、本学外国語学部の優秀論文として相応しい論文と考え、ここに推薦する。

■推薦論文: 「少年と両親の情緒的つながりと少年非行の関係―社会的絆理論の 視点から―」(論文執筆者:ポルトガル語専攻 4 年 田中めぐみ) 
 本論文は、ケニアのスラムを訪問した筆者が、貧困の中希望を捨てず笑顔を忘れず生きる住民の姿と日本社会の現状にギャップを感じ、この違いの背景を探り続け執筆されたものである。早い段階から社会関係資本の違いに注目した筆者であったが、この概念・手法は依然新しく、相当な現地調査を必要とするため、実証的に用いるのが極めて困難であることから、犯罪学における社会的絆理論に注目して現代日本社会の課題を浮き彫りにしたものである。奇しくも、2011 年 3 月 11 日には東日本大震災が発生した。このことが、筆者の3年にわたって試行錯誤してきたこのテーマが、現在の日本社会にとっていかに重要なものであるかが、絶望の淵で明らかにされたともいえる。
 本論文では、社会的課題と人間同士の絆が密接にかかわっていることを実証的に示すために、少年犯罪を事例として取り上げ、次の手順で議論が進められる。
 まず第 1 章では、日本の少年非行を抑止する要因を明らかにするために、日本における少年非行の現状、歴史的特徴の変化が考察される。その上で、これまで国内外で展開されてきた犯罪学の各種理論の変遷が示され、犯罪の原因としてどのような要素が注目されてきたかについて明らかにされる。近年の重要な理論として、アノミー論、ラベリング理論、分化的接触理論 などが説明された上で、ハーシの社会的絆理論が本論文で依拠する基本理論として示される。ハーシは、「なぜ少年は非行を起こすのか」という問いの逆、つまり「なぜ少年は非行を起こさないのか」という問いを立て、「非行と家族の密接な関わり」が非行を抑制することを実証的に明らかにし、社会的絆論を提唱した。本章の最後で、筆者は、国内の多様な文献を検討し、それぞれの実証結果に基づき、日本国内の少年犯罪や非行についてもこの理論が妥当と結論づける。
 以上の認識に基づき、続く第2章の事例研究では、社会的絆理論が重視する「愛着」、「コミットメント」、 「巻き込み」、そして「規範観念」の四要素の中でも、「両親への愛着」に注目し、「両親との愛着の欠如は、少年非行につながる」という仮説を用いた実証を試みる。本実証にあたっては、筆者は、内閣府の「第 4 回非行原因に関する総合的研究調査(2010)」、久保崇人の『社会的絆理論に基づく非行抑制モデルの検討』、林世英の『少年犯罪・非行に 関する原因理論の実証的研究―社会的コントロール理論の検証』の調査結果を基礎データとして用い、検証を行っている。
 結語では、検証結果の整理と振り返りが行われ、現代の日本社会において少年非行を抑制するために何が行われるべきかについての提言がなされている。ただし、本論文の提言はそこに留まらない。少年と両親の間の絆の欠如が少年に与える影響を考察することは単に犯罪や非行抑制につながるのではなく、家族、地域の絆を再考するきっかけとなるであろうことが主張されている。これこそ、本論文を通じて筆者が一番言いたかったことであろう。
 本論文には、36点にも上る日本語文献と5点の英語文献が使われており、先行研究に基づく理論及び事例研究がしっかりなされている。高校教員になることを志し、本学やアフリカで学んだことを次世代の若者に伝える一方、社会の一員としてどのような役割かを模索し続ける中で書かれた本論文は、社会的な意義の他に、筆者の卒業後の次なるステージに十分な意義を持つものと考える。高校の教員として郷里の地域社会に戻っていく本学の学生の模範となる卒業論文となっており、本学外国語学部の優秀論文として相応しいと考え、ここに推薦する。
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by africa_class | 2012-02-10 19:31 | 【大学】アフリカゼミ(3・4年)
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