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今だからレヴィ=ストロース『悲しき熱帯』(1955)を読む:「世界は人間なしに始まったし…」

私は意図的に研究テーマと活動領域を分けてきた。
 不器用すぎて、その両方を同じ脳みそで思考し、深めることが出来なかったから。でも問題意識の根底は同じで、別の価値観があったわけではなかった。ただ、学術的に書く・・・ということについて、私は途方もなく原則に忠実に生きてこようとした。右脳左脳わけて思考し、生きる・・・そんな具合だった。
 私が、活動をしていなかったら、きっともう少し気楽に色々なテーマについて取り組み、書けたのかもしれない。でも、活動をしている以上、「活動的に学術論文を書く」という皆の想定を、徹底的に裏切りたいと思ってきた。天邪鬼だからというのもあるが、自分の思考を徹底的に鍛えるためでもあった。
 学術論文を書くという行為は、私にとって禅寺でやる座禅に似ている。一日中やるわけではないし、毎日できるわけではにものの、そこに行ってそこのルールに従ってその空間・時間を過ごす。そんな風に、農村に向かい、資料庫に潜り、自分の想定が間違ているすべての可能性を検討しながら、書き進める。
 なのに、私は1997年来自分に課してきたこのルールを破ろうとしている。現実の変化のスピードの激烈な速さ、その地球大の影響、思想からリアルポリティックスとドロドロとした利権までの結びつきの強固さ・・・そんな21世紀初頭の世界において、そして311後の権力と人びとの闘いの相克、明らかになった生命の破壊の容易さを身近で目の当たりにしながら、このことを、真正面から考えなければならない。脳内を分けてる場合じゃない、そんな風にようやく自分を説得できるようになった。
 でも、哲学者でもなく、思想家でもない私に、どのような表現でこれを示すことができるのか?小説でもなく、ブログでもなく、学術論文として・・・まだ全く見えないまま。とりあえずは資料を読むところから始めよう。結局、卒論と同じなのだ。

 これまで、人は何故戦争をするのか、を考えてきた。今、人は何故自分が最も優れた生き物だと信じ込み、「経済成長」の名の下に、自然や社会や生きとし生きる者たちを踏みにじってなお、まだ飽き足らずそれを極大化しようとするのか…。鋭い痛みと絶望を抱えながら、日本とアフリカの今を考えたい、と思う。今世界大で「当たり前」になっている「経済至上主義」が、命をどのように破壊しているのか、それを事例だけでなく、思想の問題として取り上げられないものか、ともがいている。また、抽象的な世界という言葉に陥らせず、あるいは日本だけ、アフリカだけを観るのではなく、その両者を包含しつつ、今パーソナル、ローカル、ナショナル、リージョナルを巻き込みながらグローバルに展開しているこの「何か」を見破れないものだろうか・・・と、アフリカで考え続けてきた。答えはないけど、ヒントになる資料を紹介したい。資料のまとめをブログでするのも何だけれど、これが学術と活動を結びつけるパーソナル実験のその1。

1955年に発表されたレヴィ=ストロースによる『悲しき熱帯』(1955年初版 中公クラシックス 川田順造訳)より。*解説はまた余裕のある時。関連する部分だけ書き出しておきます。

・「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」
・「人間は、それ自体が一つの機械、恐らく他のものよりはるかに完成された機械として立ち現れ、原初の秩序の風解を促し、強力に組織されている物質を、絶えず増大していつかは決定的なものになるであろう無活力へと追い遣っているのである」(Ⅱp.425)
・人間は、呼吸し、食物を獲得するようになってから、火の発見を経て原子力や熱核反応機関を発明するまで、人間を再生産する場合を除いて、喜々として無数の構造を分解し、もはや統合の可能性の失せた状態にまで還元してしまう以外、何もしなかった」(Ⅱp.426)
・「個人が集団の中で独りではなく、各々の社会が他の社会の中で独りでないのと同様に、人類は宇宙の中で独りではない。人類諸文化の虹が、われわれの熱狂によって穿たれた空白の中にすっかり呑み込まれてしまう時、われわれがこの世にいる限り、そして世界が存在する限り、われわれを接近不可能なものへと結び合わせているこのか細い掛け橋は、われわれの奴隷化へ向かうのとは逆の道を示しながら、われわれの傍らに留まり続けるであろう」
・「その道を、踏破出来なくとも熟視することによって、人間は人間にふさわしいことを彼が知っている唯一の恩恵を受けることが出来る。歩みを止めること。そして人間を駆り立てているあの衝動、必要という壁の上に口を開けている亀裂を一つ一つ人間に塞がせ、自らの手で牢獄を閉ざすことによって人間の事業を成就させようとしえる、あの衝動を抑えること」(Ⅱp.428)

解説は要らないと思います。
平易でいて難解。
でも、噛みしめて何度も読めば分かる。
この本の最後の一節。

「あるいはまた、ふと心が通い合って、折々一匹の猫とのあいだにも交わすことがある、忍耐と、静穏と、互いの赦しの重い瞬きのうちに」
by africa_class | 2012-09-14 02:53 | 【311】原発事故と問題
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