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記録1「モザンビークでのJICA熱帯サバンナ農業開発プログラム 市民社会との勉強会」11月15日

最後に、うー時間ぎりぎり・・・、先月私がコメンテイターを務めた報告会(http://afriqclass.exblog.jp/16705156/)の記録。自分の手元の資料と録音データをもとに、自分の発言だけまとめたものです。
 というのも、こちらも主催者に問い合わせたら、すべての講演議事録は全回小冊子として配布されているそうですが、こちらはスピードの問題ではなく、JICAが「事前に相談を受けていない」という理由で、公開を断ったということなので(?!)、とっても残念ですが、その箇所を省いて掲載します。
 しかし、国費で行われている事業の、一般公開された講演会での事業報告の記録を、些末な手続き問題を根拠として拒否するのは、JICAが掲げる「公開性・公益性」と逆行する姿勢だと思います。しかも、これほど巨額の税金が投じられている以上、大学等の公共機関で行われた一般講演会での報告を、一人でも多くの人に観ていただきたい・・・というのが、普通じゃないのでしょうかねえ。JICA職員の給料を支えるのは、我々一人一人の納税者。公金で支えられた機関の職員が公の場で話す内容を、喜んで公開していくのでなければ、なかなか理解と共感は得られないと思います。
 こういう不透明さが、モザンビーク市民社会にも伝わってるんですよね・・・。
 しかし、議事録公開がない前提の報告会って、どんな報告会なんでしょう・・・。密室報告会?今時の一般公開報告会、議事録作成は大前提だと思うのですが。私の感覚がおかしいのでしょうか。謎です。
 一市民として、ぜひ、再考・善処をお願いしたいと思います。

■プロサバンナに関する詳細は→http://afriqclass.exblog.jp/16925888
モザンビーク農民団体によるJICAプロサバンナ批判@ブラジル雑誌

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明治学院大学国際平和研究所(PRIME) 「平和学を考える」
AJF・JVC・HFW・明治学院大学国際平和研究所(PRIME)共催
連続公開セミナー「食べものの危機を考える」2012年度 第5回
「モザンビークでのJICA熱帯サバンナ農業開発プログラム
市民社会との勉強会」
講師:JICAアフリカ部アフリカ第三課 坂口幸太氏
コメンテイター:
舩田クラーセンさやか(東京外国語大学大学院 教員)
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ブラジルのセラードがあるミナス・ジェライス州の大学に1991年に留学し、日系ブラジル人のことを研究して歴史書を書いた。そして1994年からはモザンビーク北部を行ったり来たりして博士論文を書いた。これらの本を回覧する。その経験に基づき本日はコメントする。

本コメントの構成と手法~ProSAVANAが何かを理解するために
ProSAVANAについて理解することは容易ではない。そのため、本事業の理解のためには、学術的な手法でアプローチすることが望ましい。したがって、事業主体主であるJICA、ブラジルの政府組織、日本政府、モザンビーク政府、現地の農民や市民社会が言っていることを、一次資料(各機関の報告書、広報誌、ホームページ、声明文20点)、現地での直接的な聞き取り、日本からのe-mailを使った追加聞き取り、二次文献(新聞等の報道11点と先行研究10点)の分析に基づき、実証的にディスコース(言説)の分析を行った。今日はその分析に基づき、坂口さんの報告にコメントする。

JICAの資料によると、ProSAVANAとは、ブラジルのセラードの知見を活かして、モザンビーク熱帯サバンナの農業開発の貢献を計ることとある。ただし、まだ実施されているとは言い難い状態にある。今日もそのような説明がなされた。しかし、既に国内外で宣伝や評価がなされており、JICA報告書によると、米国のクリントン国務長官が有効な南南協力の事例として高く評価している、という。また、JICAと外務省はTICAD Vの目玉としてこのプロジェクトを位置付け、広く宣伝している。

歴史的な経過を見ると、このプロジェクトは「日本・ブラジルパートナーシッププログラム(JBPP)」の枠組みで出て来ていることが明らかである。この前後には国連改革があり、日本はBRICs諸国への外交交戦を仕掛けていた。ブラジルは南米で重要な役割を果たしており、日本はブラジルとの関係強化を包括的に行なった。自民党政権を背景として、2007年に麻生太郎外務大臣(当時)のブラジル訪問の際、2008年の日伯交流年に向けて日伯戦略的パートナーシップが作られ、JBPPの再活性化という文脈で出てきたのがProSAVANA。モザンビークを対象として2009年9月に調印され、始まる。

このように歴史的経過を見てみると、ProSAVANAは日伯関係である。戦略的パートナーシップという言葉が使われている。モザンビークはその対象に過ぎず、その意味で二国間の外交プロジェクトであり、政治案件でもある。日伯協力を行ううえで、公用語が同じポルトガル語であり、「自然環境が似ている」としてモザンビークが対象となった。

以上がProSAVANAの「起源」であるが、12のJICAの一次資料に基づき、年代ごとにどのような説明がされ、言説が形成され、推移しているかを検討した結果が、この表である。2009年から2010年までの期間を「第一フェーズ」、2010年から2011年を「第二フェーズ」、2011年~2012年を「第三フェーズ」、2012年以降を「第四フェーズ」と分類した。今日の坂口さんの報告で、この第四フェーズに特徴的な言説「JICAプログラム回帰と投資両立路線」に収まるか注目したが、その理解で変更なしと考えられる。

言説の推移。
「第一フェーズ」は、
・日本の対ブラジル協力(セラード開発)成功言説
・日伯連携/南南協力言説
・ブラジル/セラードの成功をアフリカへ言説。
・世界の食料安全保障、アフリカ熱帯サバンナ言説。
・モザンビーク農業停滞言説。
「第二フェーズ」は、
・モザンビーク北部未開墾言説。
・軌道修正、開発モデル言説。
・市場原理下小農・大農共存(儲ける農業)言説
・国際規範言説
「第三フェーズ」は、
・三者WinWinWin投資言説。
・日本(調達力)商機言説。
・ブラジル(入植)商機言説。
・土地争奪・対中国競争言説。
「第四フェーズ」は、
・JICAプログラム回帰と投資両立路線

「第一フェーズ」は、現場を知らないマクロ情報に頼るもので、「モザンビークは農業国だが停滞している、だから支援が必要」と主張。「第二フェーズ」になっても、依然マクロ情報に偏るが、「特に北部は未開拓である」と強調。そして、「第三フェーズ」になると、ブラジルと日本にとってのビジネスチャンスとして威勢の良い話が蔓延。しかし、この辺りで批判的な報道がされるなど、暗雲が立ち込める。

これらはいずれも、私の言葉ではなく、JICAその他の資料の言葉を拾った結果。抜き出した言葉は表に示した。

今日まず検討したい点は、「第一フェーズ」の最初に挙げられるモザンビーク北部の生態に関する言説。JICAの「第一フェーズ」から現在まで使われている言葉をピックアップした。
•ブラジルのセラードと熱帯サバンナは類似点多い
•農学的に多くの共通点
•同じ緯度で気候が類似
•今日の坂口さんの報告でも冒頭に、「自然環境は類似点が多い」とあった。

では、実際どうなのか一緒に考えたい。
JICAの資料で繰り返し強調される、「ブラジルとモザンビーク北部は同じ緯度にある」という点。これを示した地図は繰り返しJICA資料に出てくる。この地図もJICA資料から取ってきたもの。しかし、私が分からなかったのは「同じ緯度だと類似の農業環境」という点。今日の坂口報告で、日照時間が同じということが紹介された。

日本と同じ緯度は、世界のどこか?(坂口さん、アジアとか…)。私も調べないと分からないほどだった。大きく6カ国。中国、朝鮮半島、イラン、トルコ、スペイン、米国。これらの国の名前を聞いて、同じ緯度だからといって、果たして農業的な類似点があるのかについては疑問が残る。

次に、ProSAVANAの名称にも使われる「熱帯サバンナ」とは何かを考える。
皆さんは「熱帯サバンナ」というと、何をイメージするだろうか?当初私がこれを聞いたときのイメージは、草原が広がっているイメージだった。しかし、今年モザンビーク北部を訪問中に、息子の指摘「プロサバンナっていうけど、ここでやるってどういうこと?」を受けて、「熱帯サバンナ」について調べたら、従来のイメージすることと違っていた。

熱帯サバンナは19世紀末の気象学者が作った分類で、明確な乾季と雨季があること、一定の降雨量があることが条件となっている。植生とは関係ない。先ほど写真で見せたアフリカに広がる草原、寝そべる野生動物は、「熱帯サバンナ」と関係ない。

今、JICAだけでなく、世銀がこの熱帯サバンナの開発にお金を投資しようとしている。その先行事例がProSAVANAである。なぜ熱帯サバンナに注目しているかと言うと、雨が降るからであり、農業に不可欠な水があるから。つまり、「セラード地帯=熱帯サバンナ=農業に適した豊かな地域」であり、関係者はそれを知って投資を奨励している。
「セラードは不毛な地域であったため日本が開発した」と言っていたのは一体?

では、一般的なサバンナとはなにか。
サバンナには、Woodyサバンナ(林)とGrassサバンナ(草原)の2種類がある。JICAの皆さんに聞いてみよう。モザンビークにはどちらが多い?(Woodyサバンナ)。ではモザンビーク北部には?(Woodyサバンナ)。では、会場の皆さんは?(Woodyが6割、Grassが4割。JICAの皆さんはWoody。)

答えは、国際機関が出している地図で見ていく。これは、アフリカ大陸上のWoodyサバンナ地域。赤が100%で、緑、青と減っていくが、青の部分はWoodyサバンナ。見て分かる通り、モザンビーク北部は青あるいは緑で示され、森や林が多い。そして、北部地域の中でも、今日坂口さんの発表にあったProSAVANAの対象地を検討してみると、その大部分が緑で塗られる。モザンビークで唯一緑で示される、つまり広い範囲で森林が残った部分が、ProSAVANA対象地なのである。なお、Grassサバンナの地図も確認しておくと、モザンビーク北部には一般的なサバンナを意味するGrassサバンナはほぼない。

また、先週の報告会で出てきた「セラード=不毛」というJICAの繰り返すキャッチフレーズについて、同様の地図で確認してみたが、世界の「不毛barren」地帯は、このように北アフリカ等の砂漠地帯を指し、ブラジルにもサハラ以南アフリカにもない。

まとめると、アフリカには「不毛な地」はなく、草原サバンナよりもWoodyサバンナの方が大きな面積を示す。モザンビーク北部には「不毛の地」はなく、Grassサバンナもほとんどなく、モザンビーク中で唯一Woodyサバンナが濃く残る地域である。

なお、Woodyサバンナといってもピンとこないかもしれないので、写真を。モザンビーク北部で撮った写真。林の中、一見何にもないように見えるが必ず人が住んでいて、家と家の間は林を通って行く。ここで狩りなどを行う一方、周辺を開墾して農業を営んでいる。

次に、モザンビーク北部地域の農民の暮らしと農業を見てみたい。
まず、JICAの資料でモザンビークの農業について言われている言葉をピックアップする。これらの言説は、主として「第二フェーズ」から出てきたもの。
•一定雨量と広大な農耕可能地に恵まれる
•日本耕地面積3倍1400万ha以上の適地
•多くは未開墾地
•スケールの大きな農業開発で地域経済発展
•小規模農家の技術、伝統的で粗放的/簡素
•自給・商業作物ともに低生産性

JICAの言説を分析すると、当初は「不毛の大地」セラードとの共通性が指摘されていたが、実態として大きな違いがあったことが実際に現地(モザンビーク北部)に準備調査に行った2010年に判明。そこで、両者「(モザンビーク北部は)豊かなのに、活用されていない」という言説へ変化。例えば、「低投入・低生産性の自給自足型農業を余儀なくされ、貧困に苦しんでいます」という言葉に象徴される。また、当初「未耕地が多い」と言っていた。象徴的には、「農耕可能地は3600万ヘクタールであるが、実際耕作されている面積は約16%の570万ヘクタールにすぎない」という文章。

しかし、現地に行ってみたら「未耕地」は多くなかったため、「場所によっては人口密度が多く、まとまった土地を確保するのが困難」というのが最近の言説。

先程のやり取りで、グランドマスタープランを今作っておりまだ計画段階、とのお話しがあったが、国際的にも、国内的にもプロサバンナはもう成功しているプロジェクトとしてJICAが広報している。したがって、現場がよく分からないまま立案し、計画していて良いというわけにいかない。

なぜ、モザンビーク北部なのか。
モザンビークの関係者なら誰でも知っている北部の農業的特徴がある。おそらく、JICAの皆さんは立案前、知らなかったのだろう。
・豊かな大地と森林、最後の手つかずの自然。
・不毛ではなく、「豊か」故に人口密度も高く、農業生産性は高い。いずれも全国一。

豊かさには、土壌・水の豊かさだけでなく、住民の農業への熱意も含まれる。したがって、歴史的に、プランテーション栽培失敗後、小農生産が重視され、成果をあげてきた。JICAで繰り返される「粗放的」という言葉では表しきれていない。

だから、モザンビーク関係者は驚いた。ここでそんな大規模農地開発プロジェクトをやるのか、と。また、モザンビーク北部農民は、北部全域や国全体、あるいは周辺諸国に食べものを供給する、非常に重要な役割を果たしてきた。また、アフリカ全体に言えることであるが、食べものを作るのは女性なので、農業においても、食生活においても女性が重要な役割を果たしている。この点についての言及は、JICA資料のどこをみても見つからない。

ここまで検討すると、一体JICAはアフリカの人びとのために何がやりたいんだろう、という疑問が湧いてくる。そういう時は一次資料をあたることが重要。

JICAホームページ上のビジョン・ミッションを読むと、「グローバル化により問題が起こっている。それを解消したい」、という非常に重要なミッションを挙げている。①グローバル化に伴う課題への対応、②公正な成長と貧困削減、③ガバナンスの改善、④人間の安全保障の実現である。皆さんも一度読んでほしい。

では、JICAが取り組める「グローバル化にともなう課題」とは、モザンビーク北部農民にとってどのようなものがあるのだろうか?本来、そこから事業は興されなければならないはずだが、既にみたように、ProSAVANAの出発点は日伯連携であった。

モザンビーク北部地域の現在の課題
これはモザンビーク北部に限らないが、
・外資による土地奪取
・モノカルチャー換金作物生産による森林破壊や社会関係の破壊

土地奪取については、北部では急速に大豆、植林のための土地争奪が起こり、住民との衝突も。また「村の代表」と呼ばれる人たちの「一本釣り」が起こっており、村の中の人間関係が悪化している。

換金作物生産については、JICAの先にみた言説では、「低投入・低生産性の自給自足型農業を余儀なくされ」とあるが、ProSAVANAの主たる対象地ニアサ州ではタバコの契約栽培が急速に広がり、急速な環境破壊だけでなく、社会破壊が起きている。換金作物の栽培の多くは、男性が担う。結果、女性に金が入らない。男性だけ儲ける。酒や売春にあっという間にお金が消える。女性に対する暴力、一夫三妻、女性の早婚などが起きている。つまり、男性と女性のジェンダー関係が変化した。それだけでなく、タバコ生産を拡大できず、儲けられないお年寄りのニグレクトが生じ、これらすべてがコミュニティ崩壊に繋がっている。

先程あげたモザンビーク北部の農業の重要な役割、それを支えてきた小農生産も、これが成り立つのは、コミュニティが機能していたため。しかし、現在は換金作物契約栽培により若者の男性だけが儲けていることで、コミュニティの急速な破壊が起こっている。また、先に見たモザンビーク最後の豊かな森が、「もうかる」農業のためにどんどん伐り開かれている。写真を見てほしい。

この写真を見た瞬間、セラードのことを思い出した。私がブラジルに留学したのは、アフロ音楽に憧れてのことであるが、先週JICAのセラード、ProSAVANAの立案者の本郷さんが取り上げたレヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』を読んでのことでもあった。そのセラードを、今研究者がどう表現しているか。日本のブラジル研究の第一人者でもある堀坂浩太郎氏の表現を紹介する。「地平線まで一直線に拓かれた国道、戦車のようなブルトーザーで根こそぎ灌木をなぎ倒すセラードの農地造成。」

この描写の通りのことが、アフリカ中ですでに起きつつある。外資の参入によるもの、そして換金作物の契約栽培による小農自身の「儲かる農業」によるもの。

アフリカではモザンビークは遅い方。エチオピアやスーダンなど、英語圏では既に土地の奪取、「儲かる農業」の推進は更に進んでいる。分かっているだけで、2000年以降、世界の土地奪取の25%がアフリカで起こっている(全アフリカ大陸の5%に当たる)。それに抗議してアフリカ各地で暴動も発生している。マダガスカル、ウガンダ、タンザニア、そして…モザンビークでも暴動が起こっている。

ナカラで何が起こったか。
ナカラ回廊はJICAも支援するが、ブラジルが国際空港を作っているが、その際の土地接取に対して、住民が抗議のため立ち上がっている。これが可能なのは、ナカラが反政府勢力が非常に強い地域だから。今の政府はどんどん政治学でいうところのElectoral Authoritarianism(選挙権威主義)化している。政府に批判的な人は、国家公務員になれない、就職できない、留学に行けないという問題が起こっている。

なお、先のやり取りで、UNACの抗議声明に対して坂口さんは、「モザンビーク政府にアプローチしてもらう」と述べたが、権威主義化が進むモザンビークでそんなことを依頼するなどするのは問題外。弾圧につながってしまうので、止めて欲しい。

なんでこんなこと(現地の実態と大きく乖離した援助と言説)が起こるのか。
モザンビークと日本は関係が薄い。JICA事務所も在外公館も、モザンビークに設置されたのは2000年のことだった。モザンビーク研究者は私を含め2名しかいない。他方、市民同士の関係は深いものがある。ProSAVANAも日本とブラジルとの強い関係をベースにしている。

日本とモザンビーク市民社会を結びつけたのは、2000年の大洪水で日本供与の放置された農薬がモザンビークの各地で見つかり、水に浸かり、現地で問題化したことに協力して対応したことによる。モザンビーク紛争時・後を通じて日本が最も熱心にやった援助、それが農薬援助(食料増産援助2KR)だった。洪水に際して、放置農薬問題が発覚し、モザンビーク環境団体・住民らの運動、日本でのアドボカシー活動を経て、農薬援助はストップ。
結局、日本政府は問題を認め、その適切な処理にお金を出し、このプロジェクトは現在でも続いている。この負の経験により、農薬問題以降は、日本政府は気をつけるようになっていたはずだった。なのに何故?

モザンビークの市民社会から見た日本とその援助の特徴
2002年以来、現地の市民社会と現地にいる他ドナー、国際機関などに聞き取ってきたことをまとめると、日本の援助は次のように考えられている。
・モノに偏っている
・歴史が浅い
・現場(モザンビーク、地域社会)を知らない
・ポルトガル語が話せない
・現場(コミュニティ)に来ない、来ても短時間
・継続性がない
・アカウンタビリティの欠落、透明性が低い
・市民社会を無視している
現地の声の無視。今回、またこれほどの問題を起こしている。日本の援助機関は、「失敗」の継承は出来ないのか?

さきほど、坂口さんの報告で、抗議声明を出したUNACとの関係について、「情報伝達不足」「地域に1377組と多数存在する。しっかり連携している農民団体がある。一部地域では実施されてきた」と説明された。

そもそもここで挙げられているIKURUは農民を支援、クレジットなど提供しているが、農民を代表する組織ではない。一方、UNACはモザンビーク最大の農民全国組織で、14万人が加盟し、ProSAVANA対象地を含む全州に支部を持つ。そのUNACが何故このような声明を出すのか?

また、坂口さんの説明にあるとおり、まさに「既に1000以上の農民団体がある」。では、なぜ新たに作るのか。老舗の農民団体とも意志疎通ができないのであれば、どうやって組織化を支援できるのか。

現地の農民組織、市民社会のProSAVANAが問題という論点
2012年9月の2農民連合団体、2環境団体、1市民社会ネットワークへのインタビューから。
1.主権在民の原則無視・非民主主義的プロセス、アカウンタビリティの欠落
2.土地の収奪、農民に保障された土地の権利の問題
3.農民の生産努力の無視・無知
4.森林伐採、化学肥料・農薬の多用やモノカルチャー奨励等による環境問題
5.輸出のための農業投資により、モザンビーク全体、リージョン、ローカルの人びとの食料生産を犠牲にし、食料安全保障にダメージを及ぼす問題

JICAの説明にない問題
今日も説明がなかったが、現地の人びとが一番心配している点は次のような点である。
•ブラジル側の熱意(なぜ?)と関与
•ブラジル企業・農家の入植はあるのか?ないのか?
•土地の貸与は、いつ、どのような形で起こるのか?

坂口さん、ブラジルの企業や農家は入植するのですか。しないのですか?(答えられない、との返事)では、土地の貸与はあるのですか。(答えられない、との返事)いつだったら答えられるのでしょうか。ブラジルのアグリビジネスによる土地奪取をどう抑えるのですか。抑えられるのでしょうか。(返事なし)

モザンビーク農民が一番心配するこれらに答えられないことが透明性の問題に直結し、かつそのことを言及しないままに「小農支援」と繰り返すのは、「ブラジル隠し」と言われても仕方ない状態。では、ブラジルは実際どのように動いているのか?これも、ブラジル人へのインタビュー報道に基づき紹介する。

ブラジル・日本の官民合同ミッションが本年5月にモザンビーク北部に行った。その時のインタビューでブラジルのアグリビジネス関係者らは、繰り返し「入植」について語っている。その際、北部の土地がいかに豊かかに感嘆している。不毛ではないのです。そして、麻生元外務大臣とも関係の深い日系ブラジル人の西森連邦下院議員のこの発言に注目してほしい。「我々は農業者の入植をしっかりバックアップしていきたい」。

なぜ(ブラジル・アグリビジネスはモザンビークに進出したいの)か?
これもブラジル人自身の言葉を見てみよう。ブラジルのコットン(綿花)協会の会長は、モザンビークの土地が「肥沃」なのに、土地価格はブラジルでは考えられない破格の価格。実に、1666分の1。さらに、ブラジルでは環境規制が強くて土地を入手するのが難しくなっている。モザンビークの環境規制の緩さが投資条件として魅力的な点が示されている。

つまり、ブラジル企業にとって、ProSAVANAは、「容易な大規模農地取得を有利にする事業」として認識されている。それを支えるのが、日本の税金。なぜなら、歴史的経緯を再度ふり返れば、この事業は、日本とブラジルの戦略的パートナーシップをアフリカに輸出する取り組みとして誕生した。

しかし、プロジェクトの進行については日本側のドライブ(推進力)の方が強い。ブラジルの関連機関の人はインタビューでこう答えている。「日本の側が強く押してくるんだ。それに我々は慣れていない」「たくさんの、本当に沢山のお金が関わっている。それに三つの政府の最高レベルの人たちが、このプロジェクトを政治的にサポートしている。」

つまり、ProSAVANAとは、「アフリカ小農支援案件」ではなく、そもそもが「政治案件」ということがブラジル人関係者からも指摘されている。 (続きと写真、資料一覧はhttp://afriqclass.exblog.jp/16942699/)
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by africa_class | 2012-12-08 22:12 | 土地争奪・プロサバンナ問題
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