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モザンビーク第一人者によるプロサバンナに関する記事(続報)、農業省大臣談話の考察を中心に

学生からの卒論ファイルがパタリと止んだので、こちらの紹介を。リファレンスURLを付けようと思っていたのですが、子どもが起きてきたので後日修正します。

前回紹介したモザンビーク報道・研究の第一人者であるジョセフ・ハンロン教授(英国Open Univ.)のプロサバンナ問題に関する記事・第2弾、モザンビーク農業大臣の談話に基づき、前もって私の考察を述べておきます。何れも、必ず原典を各自でご確認ください。

"Pacheco says peasants protected, but Pro-Savana land grab debate continues"

 日本とブラジルによるモザンビーク農業開発援助案件「プロサバンナProSavana」への高まる一方の国内外の懸念に対応することを余儀なくされたモザンビーク農業省パシェコ大臣は、12月22日のテレビ・ラジオ番組で、「プロサバンナで農民らは土地を失ったりしない」と強調したと報道されました。
http://noticias.sapo.mz/aim/artigo/652525122012154125.html
 「ああよかった」と思い、以上の12月25日の国営通信の記事を読み始めて「?????」が募る一方。皆さんもご自分で読んでいただければ分かるのですが、結局何も事態は変わっておらず、大臣が「土地法があるから大丈夫」と従来見解を繰り返しているだけで、残念ながら、このプロジェクトで「ブラジル企業・農家による土地収用はされない」ということではありませんでした。また、下記のハンロン教授の記事でも紹介されているとおり、大臣は次のように述べています。
●「ブラジルのセラードとナカラ回廊地帯の特徴が一致するため、日本とブラジルによる30年の経験に基づくセラード開発の『レプリカ』を創り出す」
 また、大臣談話の特徴的な点として、
●「小農支援が重点」と述べている点は、これまでと異なり新しい点です。

 しかし、この2点の関係こそが、下記のハンロン教授の分析にも有る通り、また現地農民組織や国際組織が懸念を抱いている点なのです。重要な点なので、少し詳しく解説します。

 日本のJICAや外務省が、高まる一方の批判を回避するために、最近とみに強調する「小農支援」が、大臣の談話でも強調されるようになっていますが、「セラード開発」は承知の通り、小農支援ではありませんでした。その真逆で、同地に暮らす先住民や小農を排除し、大規模農地開発と豊かな南部や日系人の入植を進めたのが同開発でした。したがって、「セラード開発のレプリカ」と「小農重視」という場合は、ハンロン教授の指摘通り、論理矛盾があります。
 ただし、パシェコ大臣が、JICAがプロサバンナの必要性について繰り返してきた主張、
(●小農は土地を使いこなせず土地を余らせ、生産性が低く粗放農に依存するというストーリー
→JICA ウェブページhttp://www.jica.go.jp/project/mozambique/001/outline/index.html)
より一歩踏み込んで、「国の農業生産の90%を担う小農の重要性」に言及するようになったのは評価されるべき点だと思います。(日本側の資料分析については近々出版するのでそちらをご覧ください)

 さて、大臣がおっしゃる通り、本当に「土地法があるから大丈夫」なのでしょうか?
 この前の投稿で、ラジオ・インタビューに対して国際NGO/GRAINのDevlinさんが指摘していたように、世界の外資による土地収奪の大半はアフリカで起きており、まさに「土地法」があっても現実には土地の権利は守られない事態が頻発しています。
→http://afriqclass.exblog.jp/17062266(インタビュー全訳)

 結局、LandMatrixの記事によると、世界の土地収奪の6割はアフリカ地域で起こり、世界ナンバー2の土地取引件数・面積が共に、モザンビークとなっている現実にあります。パシェコ大臣の在任期間中にこの事態は起きており、大臣による「土地法があるから農民の権利は守られている」というのは、ここ数年のデータからも否定されています。
→Ward Anseeuw, Mathieu Boche, Thomas Breu, Markus Giger, Jann Lay, Peter Messerli and Kerstin Nolte (2012), Analytical Report based on the Land Matrix Database, Landmatrix (landportal.info/landmatrix)

 残念ながら、最後まで大臣のインタビューを読んでも、このプロジェクト(プロサバンナ)で、「ブラジル企業や農家による土地収用がない」とは書かれていません。むしろ、「(法や小農をリスペクトすれば)どんな投資もウェルカム」と締めくくられています。しかし実態として、ではなぜ、そのような土地法があり、小農を重視している政策下で、現状においてモザンビーク中で土地紛争が勃発しているのでしょうか?
→http://afriqclass.exblog.jp/17017188/

 先日のNGO外務省の協議会(12月15日http://afriqclass.exblog.jp/17000792/)では、外務省側から「モザンビーク政府のガバナンス支援をして問題回避」が言及されていましたが、
(1)モデルとするセラード開発において何が起こったのかのふり返りがないまま、2009年にそれをモデルとして採り入れると宣言し、住民や小農無視のデザインを押し進め、2012年秋に問題になるまでそれを大々的に宣伝してきた、
(2)2008年来、アフリカ中とりわけモザンビークで生じている土地争奪問題に全く理解がないまま、70年代の軍政下のブラジルで行なわれたセラード開発をモデルとした、
 のは日本ではなかったのでしょうか?
→このプロサバンナに見られる日本会計者の言説の推移は、講演会での報告記録を(詳細は近著を)
http://afriqclass.exblog.jp/16942666
http://afriqclass.exblog.jp/16942699/

 また、12月15日の政策協議会で、外務省側は、「貧困と農業停滞に喘ぐモザンビークがブラジルのモデルを良いと思って日本に協力を求めてきた」とプロサバンナの発案の経緯を主張しましたが、JICAのセラード開発担当者が「セラード開発の成功をアフリカで活かすため、プロサバンナは自分が立案した」と誇りを持って明確に語っています。ブラジルの関係者も「プロサバンナは日本のプロジェクト」と呼んでいます。しかし、問題化すると、日本はまるで「第3者」のような説明を事業機関が行う…そういう事態が生じています。

 現地事情を知りも、学ぼうともしないまま、机上の計画で、問題発生可能性をまったく予見せず、問題が実際に発生してから行われる、これまでのストーリーのいつの間にかの修正、応急対応と工作、そして責任転嫁は、国際的な信用を落とすだけでなく、援助を税金で支える納税者や国民の信用をも失うでしょう。このような非を認められないが故に、周りを巻き込んでどんどん問題を拡大させてしまい、被援助国の皆さんの貴重な時間や労力すら奪ってしていってしまう姿勢・・・の改善を、切に求めたいと思います。
 この秋にプロサバンナが問題化してから、現地では尻拭いのために本当にありとあらゆるところに圧力がかけられており、残念ながら、外部援助者の基本であるDoNoHarmの原則は、事業が本格開始以前の、立案・計画のまずさから、既にDoHarm状況にあるという自覚を、関係者が認めないことには、問題が問題を、懸念が懸念を、不信が不信を呼び、日本の国際的な信用はますます地に落ち続けるでしょう。
 
 それにしても、JICAや外務省は、モザンビーク北部の小農を本当に支援したいのであれば、ブラジルやセラード開発やあれやこれや以前に、まず北部地域という場の地域性、そして小農という主体から全てを始めるべきであったことに、いつになったら気づいてくれるのでしょうか。これは、そんなに認めるのが難しい話なのでしょうか?この20年間の開発や国際協力の議論の推移は、「セラードの成功」で無視してもよいという結論に至ったようですが、本当にそれで良かったのでしょうか?

 モザンビーク建国から37年。他ドナーが同国各地で継続的な支援を行い、同国の社会やニーズについて知識においても経験においても蓄積を積み重ねてきたところで、一方の日本はたかだか12年の在留経験。しかも、首都から遠く離れたこれらの対象地域の農村で何一つ社会的な調査も経験も積み重ねないままの、「ブラジルの成功モデルの移転」の打ち上げ花火。この秋確認しましたが、現地の公用語であるポルトガル語を話せる開発コンサルタントはほとんどおらず、現地の大使館にもJICAにもポルトガル語話者はごく僅か。今年秋の時点で、現地の調査機関も私が紹介するまでカウンターパートの農業省のものしか知らず、沢山文献は出ているのに、農民らが何を栽培しているかも自ら調べることなく、私にインタビューしてそれで済まそうとしていたほどでした。
 この間のドタバタをみていると、「身の丈」にあわない大規模プロジェクトを、熟考なく「セラード開発の成功をモザンビークに」との大きな掛け声で、宣伝ばかり先走ってやってきたツケが今押し寄せているように思われます。私たちの社会でこれをやったとしたら大問題だったと思いますが、「貧しいモザンビーク」なら、「政府が同意していれば」、良いという論理が哀しいです。
 また、「計画段階だから」との弁明は、しかし、既に「セラード開発の移植」を掲げ、大量の税金を投入し、大宣伝を繰り返している以上は本末転倒。

 さて、最後に。ハンロン教授の記事の中には、セラード開発を「レプリカ」とすることの問題が2点指摘されています。いずれも非常に重要な論点です。補足しつつ、紹介します。
(1)当初のJICA広報でも、今回の大臣談話でも繰り返された「セラードとナカラ回廊の一致する条件」ですが、実際は、緯度が一緒で雨季と乾季がある・・・という程度のことでした。それに気づいて、いつの間にか、JICAの資料からは「違いも大きい」という文言がこっそり滑り込むようになっていますが、ハンロン教授の指摘は重要です。つまり、セラードは高い酸性で農業条件が悪く、農民の数はそれほど多くなかったが、ナカラ回廊地帯は土地も水も豊かで多くの農民が暮らしているという真逆の条件。
(2)もう1点は、既に上で取り上げた通り、そもそもセラードに暮らしていた先住民は数は少ないものの、排除されたことは事実であり、彼らは「セラード開発によりより貧しくなった」というブラジルの実証研究(博士論文)が1988年に出されている。
→http://www.lagea.ig.ufu.br/biblioteca/teses/docentes/tese_pessoa_v_l_s.pdf

 つまり、「セラード開発をモデル」にするということは、モザンビーク北部小農にとって危惧されるべき点が多いということが指摘されているわけです。その地平に立った時、このプロジェクトを立案する前にやられるべきことは、はっきりしていました。つまり、「地元小農に対するセラード開発の負の遺産」について、日本の関係者が真摯に向き合うこと、そしてそれを繰り返さないための方策をどうするのかをブラジル先住民、モザンビーク北部小農を代表できる組織と真正面から対話していくことでした。そのことを、モザンビークの農民組織、市民社会、研究者、他の援助機関、世界の市民社会、日本の市民社会が問題にしていることを、いつになったら理解される日がくるのでしょうか。あるいは、永遠に不可能なことなのでしょうか。
 本来援助とは何のために使われるべきものなのでしょうか。311後に私たちに問われたのは、単に苦しい財政状況下に減る一方の「援助の量」をどうすべきかという論点だけでなく、「主権在民」の本質に関するものでした。日本国内の「主権在民」の原則の軽視が、遠いアフリカでも繰り返されている実態は、単にJICAや外務省だけのせいではなく、私たち自身の社会の在り様が、援助を経由して、輸出され、反映されているのであり、私たち自身の問題であるという点を今一度強調しておきたいと思います。

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MOZAMBIQUE 210 News reports & clippings
28 December 2012 by Joseph Hanlon
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"Pacheco says peasants protected, but Pro-Savana land grab debate continues"

No farmer will lose their land as part of the Pro-Savana project in Nampula, Agriculture Minister Jose Pacheco told a joint Radio Moçambique/TVM "Direct Line" (“Linha Directa”) programme Saturday 22 December. Indeed, he said the objective was to expand the area of small farmers. He was responding to a 25 October statement by UNAC, the National Peasants Union, that family farmers would be pushed off the land by the joint Brazilian-Japanese project. (AIM 25 Dec 2012; http://noticias.sapo.mz/aim/artigo/652525122012154125.html; News Reports & Clippings 209)

But the rest of his intervention created more confusion. Pacheco explained that Pro-Savana is intended to be a "replica" of the Japanese-Brazilian programme 30 years ago in a region called the cerrado which he said was "identical" to the Nacala corridor. And this is being questioned.

First, some argue that the Nacala corridor is very different, and not identical to the Brazilian cerrado. The cerrado had infertile land with high acidity and aluminium content, and heavy rains that leached the soil and made in less attractive to peasant farmers. By contrast, the Nacala corridor contains some of Mozambique's most fertile land and good rainfall, which means it is relatively densely occupied by peasant farmers.

The second conflict is over the model. The cerrado was turned into highly productive farmland but through very large mechanised farms, particularly growing soya. And much of the publicity on pro-Savana within Brazil is about how the huge Brazilian soya farmers are going to take over vast tracts of land in the Nacala corridor in a "replica" of the cerrado project. And a 1988 doctoral dissertation by Vera Pessoa in Brazil concluded that even though the cerrado was not very densely populated, very few of these small farmers benefited from the programme; most family farmers were evicted or became poorer as part of the cerrado project.
http://www.lagea.ig.ufu.br/biblioteca/teses/docentes/tese_pessoa_v_l_s.pdf

Pacheco said there was no place in Mozambique today from the grand "chartered companies" of the colonial era, and that any new investors must obey the land law (which gives occupants rights to their land). The plan is to have a mix of small, medium and large farms, he said.

But critics say that is not a "replica" of the Brazilian cerrado programme, which was dominated by very large farms.
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by africa_class | 2012-12-31 16:45 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ
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