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三角/南南協力の罠1~BRICSが自らを「南」に位置づけ行動の自由を確保するメリットの指摘から学ぶ

さて、私の英語論文に対する世界からの反響(http://afriqclass.exblog.jp/17265600)の中に、「三角協力」「南南協力」に関するものが少なからずあったのでこれについて私の考えを述べておきます。また、JICA関係者自身が、「三角協力・南南協力」と呼ぶ問題について鋭く指摘しているので、それも紹介しておきます。
 詳細は、先程紹介した英語論文に根拠も含め示しているので是非全文を読んで頂きたいのですがhttp://farmlandgrab.org/post/view/21574、関連する部分だけ日本語論文(4月出版予定)の該当部分を抜粋しておきます。

 プロサバンナ事業は、現在の正式名称に「日本・ブラジル・モザンビーク」が入っており、現在は「三角協力」として宣伝されていますが、初発の狙いは「日伯連携」にあった点は既に述べた通りです。なので、今日はその論点ではなく、「三角協力」「南南協力」に焦点を当てます。なお、この案件は次のように宣伝されています。

<=「2011年末に韓国の釜山で開催された国際会議「第4 回援助効果向上のためのハイレベル・フォーラム(HLF4)」で米国クリントン国務長官に「有効な南南協力の事例」と言及(JICA,2012b:19)。」

 「三角協力」を理解する上では、「南南協力」と呼ばれる論理を理解する必要があります。何故なら、「日本がヨーロッパやアメリカ(北北)と協力してアフリカの国(南)を支援する」と言う場合は、「援助協調」と呼ばれてきたためです。なので、日本政府が「三角協力」という際は、「南南協力を日本が第三者的に促進する」ということが想定されてきました。

 南南協力促進の背景としては、色々なことが挙げられるのですが、論文であえて書いていない点だけ述べておくと、それは、日本の援助産業関係者(JICA内部、開発コンサルタント)等で、長年にわたりアジア・南米で活躍してきた人たちの「再活躍の場の確保」という点です。今回のプロサバンナ事業に如実に出ている点ですし、それ以前にも出てき始めていた点ですが、もはや援助を「卒業」してしまった国々での経験が豊富な人たちをどうするのか?という問題は、産業としての援助「業界」にとっては切実なものがあります。MDGsや緒方理事長の就任、TICADIV以降増えた対アフリカ援助の担い手が不足する中、アジア・南米との南南協力は、単にこれらの「援助卒業国」の活躍を後押しするというだけでなく、日本援助のアジア・南米関係者の活躍の場を確保し続けるという点でも重要性を持っていたのです。
 
 しかし、アフリカはあまりに多様で、アジアや南米との違いも大きいです。アフリカ畑を歩んできた専門家らには、やはり違和感も大きい点も多い。なので、いきなり「アフリカを知らない人たちがアフリカ専門家」になる道を目指すというよりは、「アジア・南米の成功をアフリカへ!」というスローガンのもとに専門家として関わる方がスムーズとなります。援助もまたこのように内的なメカニズムや論理で左右される部分が非常に大きいのが日本の特徴です。この点は、関係者へのインタビューで明確になった点ですが、誰にインタビューしたか書けないために論文には入れませんでした。

 さて、「南南協力」ですが、興味深いことに、JICA関係者自身が次のように書いています。凄く重要な指摘が沢山されているので丁寧に紹介します。(普通に考えて、ここまで指摘するなら最後の結論は??ですが)

■「農業分野における南南協力の可能性」窪田博之『国際農林業協力』 Vol.33 № 3 2010

【窪田2010】「4.伝統的ドナーの手を離れつつある南南協力の側面 一方で近年、南南協力の用語は徐々に広く利用されるようになっている。BRICS を筆頭として、少なからぬ「開発途上国」が経済力をつけ、技術面のギャップを縮め、興隆を契機に他の開発途上国への貢献、そして経済的利益追求の動きが政治的意図と合致して顕在化したことが背景にある。自らを「南」に位置づけることで行動の自由度を確保するメリットが存在するからである。」

<=BRICSは、ブラジル・インド・中国・南アフリカのことです。ブラジルが自らを『南』に位置づけることで行動の自由度を確保するメリットが存在することを、看破されています。

【窪田2010】「未だ自国内に貧しい農村地域を抱える少なからぬ先進「南」諸国が外交手段としての対外援助を国内で正当化するため、また、開発途上国グループのチャンピオンとしての位置づけを強調するために、南南協力というフレーズは利用価値がある。また、この数年顕在化してきた「南」とされている国によるアフリカ、南米などにおける土地と水を確保するアグレッシブな動きについては、伝統的ドナーの間で開発へのネガティブな影響を懸念する警戒感が広がっているが、援助と投資の合わさった資金の流れの一環として生まれる農業投資は、少なからぬケースでは南南協力の看板も掲げている。 」

<=すごい!!「南とされている国によるアフリカなどにおける土地と水を確保するアグレッシブな動きは、援助と投資のあわさってなされる農業投資は、少なくないケースで南南協力の看板を掲げている」と書かれています。これ2010年の出版で、プロサバンナが始まったばかりの時期に、セラードとプロサバンナの宣伝が載っている投稿と同じ巻号に掲載されているところが興味をそそられます。
<=そして、まさにブラジルの政治家やアグリビジネスが、プロサバンナ事業で現地訪問して、アグレッシブな動きを想起するような言動をしていることは、既に外紙などで報道されている通りです。これがつまり、2010年の時点で、JICA関係者に予見されていたのですが、内部で議論なかったのでしょうか?

【窪田2010】「恐らく、もはや伝統的ドナーが南南協力かくあるべし、と枠を設けようとしても、提供しようとする「南」側のロジックと勢いがそれを容易に上回る実態が既に生まれている。単なる調達行為の結果でも、後押しする側の開発支援のツールの一つでもなく、参入側自身が明確に外交的、経済的意味を持たせた行為として参入する意図が明確になってきているのだ。」

<=さらに凄いのは、「伝統的ドナー」(日本はそれにあたる)が南南協力はこうあるべき・・・としても南(ブラジルに該当)自身が明確に外交的、経済的意味を持たせた行為として参入」と書いています。つまり、日本が南南協力を自分の考えの枠内に収めて利用しようとしても、それを飛び出す野心と戦略をブラジルのような南の国が持っているという指摘です。
<=これは、JICA関係者が私に相談しに来た際に私の方から質問した点でもあります。どうやってブラジルを制御するのか?という点です。

【窪田2010】「こうした動きに対して、アクラ・アジェンダのように、行き場のなくなった開発コミュニティの議論で規範を課そうとすること自体、海流に抗って泳ぐようなものでしかないのであろう。」

<=「規範を課しても無駄」・・・まさにそう。

【窪田2010】「1)独自の方針に沿って動き始めた国々 独自の方針に沿って、自力で開発途上国支援を行う国々の代表格は中国であり、また世界最大級の農業研究開発機関を擁するブラジルであろう。こうした国が行なう南南協力との関係は、むしろ既存のドナーとの連携・協調の議論と類似のものになる。」

<=つまり、「南南協力=水平協力」ではないと窪田氏はいっているのです。「南北協力」と同様の議論が必要という。しかし、ここまで書いておきながら、プロサバンナ事業にはクリティカルではありません。

さて、先日来紹介したように、ブラジルの対モザンビーク協力については、現地研究者や市民社会から「帝国主義的」「従来の援助(南北協力)と変わらない」「南南という言葉に隠された欺瞞」が指摘されています(第三回IESE大会(2012年9月4日~5日)。

そして、その点で最も批判にさらされているのが、鉱山問題でしょう。
この先はまた明日。

やはり、「国際協力」と「国際連帯」の違いを明確に意識する必要がありそうです。

であれば、ますます、何故日本の税金で、ブラジルの外交・経済的野心を支援しなければならないのか、疑問が湧いてきますがこれは私だけ?

続編をいかに書きました。三角協力の没政治性に関する他の論文を紹介しています。
■三角/南南協力の罠2~世界の議論(没政治性問題について)
http://afriqclass.exblog.jp/17274194/
■三角/南南協力の罠3モザンビーク住民に暴動されるブラジル企業進出と日本援助(ナカラ回廊PJ)の関わり
http://afriqclass.exblog.jp/17274648
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by africa_class | 2013-02-05 00:39 | 【考】土地争奪・プロサバンナ問題
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