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ブラジル市民社会の #プロサバンナ 批判~「我々の歴史的紛争の輸出事業」

モザンビークを調査のため訪問していたブラジル市民社会組織FASE(Federação de Órgãos para Assistência Social e Educacional )の記事が届きました。

FASEはブラジル関係者なら知らない人はいない、民衆の権利を守るために闘ってきた代表的な市民社会組織で、50年以上の歴史を誇る団体です。ブラジル6か所にリージョナルオフィス、リオに本部を置く組織です。

60年代に市民の組織化を促すために誕生したものの、1964年の軍事独裁政権の成立後、弾圧を受けながらもこれとの闘いを続けて、1985年の軍政終焉と民主化に重要な役割を果たしました。

この軍事独裁政権と日本が強力に推進したのがブラジル内陸部のセラード地域の農業開発(PRODECER)でした。そのプロセスで、そこに長年にわたって暮らしていた農民が土地を奪われ、生活を破壊されていったプロセスについては既に多くの研究が出ている通りです。(このブログでも紹介しているのでご覧ください)

歴史の皮肉は、このような沢山の市民組織、農民組織、労働組合といった社会運動を背景に誕生したルーラ大統領が、貧富の格差是正のためにBolsa Familia等の現金給付政策を導入する一方で、遺伝子組み換えの流入や森林破壊を許す新自由主義的な経済活動を許したこと、そしてブラジル・アグリビジネスの利権を拡大するためにアフリカに触手を伸ばすProSAVANA事業のようなものの推進者と転じたことでしょう。

これを受けて、FASEは、現在ブラジルの海外政策にも目を向けて調査・アドボカシー活動をしています。中でも、ProSAVANAに早くから注目し、調査を続けています。
●レポートはバイオディーゼルについてですが最後の方にプロサバンナについても言及があります。
http://issuu.com/ongfase/docs/internacionalizacao-etanol-biodiesel

さて、そのFASEのモザンビーク訪問については以下の記事をご覧ください。
http://www.fase.org.br/v2/pagina.php?id=3835

そこに掲載されている記事を訳しておきました。
とても重要な点が多々書かれているので、是非ご一読を。
何より重要なのは、ブラジルで歴史的に問題になり続けている、アグリビジネスによる小農の権利の剥奪の問題が、日本・モザンビークによって行われるプロサバンナ事業が再生産することにある点への警鐘でしょう。

彼らは、3月下旬にマプトで行われたステークホルダー会合に出席し、そのことを明確に悟ったといいます。同>ステークホルダー会議では、表面上は、「小農支援」「持続可能な農業」などが繰り返し説明されたものの、実際は当初の事業デザイン時と変わらず、「『アグリビジネス』と『小農』の『共存』」というレトリックが使われており、この「共存」という仮説は、ブラジルでは存在してこなかった点について、1960年からブラジル小農や土地なし農民の側に立ち、このプロセスを間近で見て、闘ってきた市民社会団体としての立場を明確に述べています。

そして、モザンビーク北部小農の願いが、「援助で救ってあげるよ」という美味しい話の一方で、アグリビジネスの流入を「保証」していく事業が進められていく実態を、鮮やかに示した良い記事だと思います。時間がなくてしっかりとした訳ではないのが申し訳ないですが、どうぞご一読ください。

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ブラジル、日本、モザンビークの政府は、モザンビーク北部のナカラ回廊と呼ばれる地域で、巨大なプログラムを始動させようとしている。同地はブラジルのセラードに類似する地形的・環境的特徴を有する。

対象地のコミュニティへの情報の欠如、あるいは、歪められ矛盾する情報が与えられるなかで、プロサバンナ事業とは、30年先を見据えた事業であり、ナンプーラ、ニアサ、ザンベジア州という、5百万人近くの小農が暮らし、この地域(ローカル及びリージョナル)の人びとの食料を生産する州の約14.5百万ヘクタールの地域を包含した事業であるという。

小農コミュニティは、まさにプロサバンナ事業による投資が来るとされる地域に、集中的に存在している。

ブラジル国際協力庁(ABC)は、現在この事業への批判はコミュニケーションの失敗によるものだと強調するが、モザンビークの市民団体や社会運動との対話から明らかになったのは、問題はもっと根深いところにあるということである。

ブラジルは、モザンビークのサバンナに、我々自身が経験してきた歴史的紛争を輸出しようとしている。この紛争とは、輸出のためのアグリビジネスによる大規模なモノカルチャーのモデルと、小農民や家族経営農民による食料生産システムの間に起こったものである。

マプートで発表されたプロサバンナ事業に関する最新の情報では、このプログラムの責任者らは、ナカラ回廊に「高価値作物」栽培に向けた民間投資を奨励するため、地域を「農業クラスター」に分けた地図を示している。

「企業的」農業による穀物生産(大豆も含まれる)。「家族経営農民」による食料の家族生存のための生産。「中・大規模商業的農業」による穀物・綿花生産。「中規模農民・家族経営農民」によるカシューやお茶生産。すべてのカテゴリーによる「食料と穀物の統合された生産」という分類である。

つまり、大規模アグリビジネスと家族経営/小規模農民といった二つのシステム間の共存とハーモニーが可能という古い仮説に基づいているのである。しかし、ブラジルではこれ(大規模アグリビジネスと小農が共存するという前提)こそが、深刻な紛争の源泉となっている。

政府は、このプログラム(プロサバンナ事業)がモザンビーク小農生産のための事業であることを保証するという。

しかし、ブラジル国際協力庁は、2011年、(*ブラジル)セラード地域にあるマトグロッソ州の40人の企業家が、ナカラ回廊にどのようなビジネスチャンスがあるのかを特定するためのミッションを支援した。

マトグロッソ綿花生産者協会(AMPA)の会長は、「モザンビークは、アフリカの中のマトグロッソである。タダ同然の土地、環境規制があまりなく、中国よりも安い労働力の最前線である」と述べている。

モザンビークでPRODECER(*日伯セラード農業開発事業)が再生産されるとの報道は沢山ある。PRODECERとは、ブラジルのセラードで日本の協力によって実施された社会的、環境的災厄であり、そこに昔から暮らしてきた人びと(伝統的住民)を追い出し、輸出のためのモノカルチャー生産の大海原を拓き、農薬の洪水で地域を浸した。

プロサバンナには3つの軸があるという。①組織と調査の強化、②マスタープラン(この研究のために選ばれた機関はGV Agroである)の策定のための基礎研究の開始、③小規模栽培者の支援のためのモデルと普及である。

UNACやORAM、ROSA、ナンプーラ市民社会組織プラットフォーム、MUGED、土地フォーラム、ニアサ州小農連盟、JAやその他の多くのネットワーク組織は、現在策定中のマスタープランや情報へのアクセス、そして小農コミュニティとの協議を要求してきたが、ブラジル当局は、マスタープランが最終化されれば、適切な手法で公開されるだろうと述べるに留まっている。

つまり、その地域に暮らす何百万という小農を代表する組織らとの実質的な協議なきままに、(*ブラジルの民間組織である)GV Agroが策定しているのが同マスタープランなのである。

マスタープランの準備が終わって初めて、これらの人びとは情報を受け取ることになるだろう。もちろん、いくつかの情報を伝達するため、マスタープランの一部に関して発表イベントは開催されている。しかし、それらのイベントは、市民組織や社会運動による要望や提案に耳を傾け、それを反映させるためのものでも、質の高い対話のためのものではない。

ナカラ回廊沿いの小農と話をすると明らかになることは、日本人とブラジル人がこれらのコミュニティを訪れ、プロサバンナが来ることを伝え歩いていることである。

これによって、彼(*日本・ブラジル人)らは、市民社会との「協議」と呼ばれることをしたと言い張るであろう。しかし、これは協議ではない。

現在までに顕著になったことは、手続き上の深刻な問題である。それは、このプログラム(*プロサバンナ事業)をめぐる決定が、政府や利害を有する企業等から、上から下へと降ろされていることにある。

モザンビークの市民組織や社会運動が述べる通り、ナカラ回廊沿いを行き来すると明確になるのは、この地域が小農コミュニティによって居住されているという事実である。これらの小農は、メイズ(国民の主食)、キャッサバ、豆、ピーナッツ等を、土地を休めながら生産するシステムを有している。そして、小農たちは、そこで生産に従事するだけでなく、祭りを行い、家族やコミュニティ関係を形成している。

この地域に5百万人の小農が暮らしている。この人びとを代表する組織や運動は、この国の大きな問題が食料の安全保障上の問題にあることを確認しており、家族経営農業や小規模農業のシステムが強化されることによって、食料生産が実現されることを望んでいる。彼らの提案は、彼らの生産を強化するための融資、適正価格による生産物の購入と市場化への支援、コミュニティによってつくられた組織や小さな組合活動への支援である。全員が、自身の小農生産システムを支援する事業があれば、参加したいと考えている。

我々は、この回廊沿いの農民らの声に耳を傾け、対話し、彼らの期待を垣間見た。これに、本来プロサバンナは応えられるはずである。

しかし、ナカラに到着した時のショックは叫びたくなるほどであった。巨大な倉庫、港湾設備、そしてOdebercht社(*ブラジル企業)によって建設中の空港等の巨大インフラ。これはこの地域の生産物を輸出するためのものである。

多くの問題は、直視されなければならない。中でも、小農らの土地への権利は最重要である。モザンビークの土地法は、小農に公有地である土地の使用権を与えている。

企業に付与されるのは使用権なのか?小農の状況はどうなるのか?

回廊の真ん中に位置するナンプーラの市民社会プラットフォームのメンバーの一人がいうように、「10ヘクタールを超える自由な土地はない」のである。

複数の組織によると、ニアサ州のプロサバンナが来るといわれている地域の大半が州内で人口がより多いところであるという。政府は住民移転がなされるだろうといっている。

農民組織は、土地法において小農の利益に反するような変化、そして遺伝子組み換え種の導入に道を拓く変化のリスクを招くタネの立法を許さないよう、注意を払っている。

彼らはまた、PRODECERの対象地であるマトグロッソ州を訪問し、農薬の集中的使用や大規模なモノカルチャー栽培モデルを知り、懸念を強めている。

このような懸念の一方で、UNACやMPA/Via Campesinaは、オルダーナティブな手法を強化し、生産的な数々の運動を試行してきた。例えば、伝統的な種に関する交流事業などである。

ルラ大統領の先導により、ブラジルの輸出政策について市民組織や社会運動と対話が実現するようになって10年になる。その結果、世界におけるブラジルのプレゼンスの方向性に関する必然的な論争が強まった。しかし、それは、我々の社会における実存する権力関係の写し鏡でもある。

プロサバンナの事例は、食料主権と食料安全保障を目指してきたブラジル農村の社会運動の成果の試金石となろう。

ブラジルの経験を踏まえ、家族経営農民・小規模農民の生産や市場化の支援といった施策が、ナカラ回廊におけるブラジルのプレゼンスに反映されるかどうかが肝要である。

結局、ブラジルでもモザンビークでも、小農らは、民衆の食料安全保障や主権、土地の権利を保証するためには、アグリビジネスのモデルによる権利の侵害や社会・環境的な不正義との闘いを強化しなければならないのである。

モザンビークにおけるブラジルの存在が小農の権利を強める一方、世界の正義と格差を縮小することを目的としてブラジルがグローバルなアクターとして成長する能力を示すかどうかが問われている。
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by africa_class | 2013-03-30 11:14 | 【考】土地争奪・プロサバンナ問題
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