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プロサバンナ事業形成の背景(国内要因)の加筆(国際開発学会企画セッション発表要旨)

プロサバンナ事業の形成の背景における国内要因の分析が甘かったので、いくつか新たな資料を踏まえて分析し、5月末から6月にかけての各種学会での発表に活用した議論を掲載しておきます。そのうちまたPPTを掲載しますが、今英語論文で手一杯なので、それまではこちらをご覧ください。

過去のPPTはこちら
■PPTofプロサバンナ事業に関する分析・報告一挙掲載
http://afriqclass.exblog.jp/17362546

なお本企画セッションは大変盛況のうちに終了しました。
大会参加者230名のところ、一般も含め220名が参加して資料が足りなくなるほどでした。翌日の継続ディスカッションの方も30名近くの皆さんに駆けつけていただき、活発な議論ができました。心から感謝します。

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企画セッション
原発事故から2年、第5回アフリカ開発会議(TICAD V)年に問い直す開発と発展
「アフリカにおける経済成長と内発的発展~グローバル農業投資と農民主権」

●報告者 (座長:大林稔)
1.「311以後の東北農業~農民を根なし草にしようとする政策と抵抗する農民」(谷口吉光、秋田県立大学生物資源科学部)
2.“Legal and Ethical Implications of Land Grabbing"(アンドレアス・ニーフ、京都大学)
3.「農業投資と農民主権~種から考える」(西川芳昭、龍谷大学)
4.「農業開発援助と農民主権~モザンビークを中心に」(舩田クラーセンさやか、東京外国語大学)
●コメンテイター 熊代輝義(JICA農業農村開発部長)/ 西川潤(前国際開発学会会長)

【主催】TICAD市民社会フォーラム(TCSF)有志・大会実行委員会【共催】宇都宮大学国際学部附属多文化公共圏センター 【協力】JASID「原発震災から開発・発展を考える」研究部会

【要旨】「農業開発援助と農民主権~モザンビークを中心に」
東京外国語大学 舩田クラーセンさやか
キーワード:プロサバンナ事業、セラード開発、責任ある国際農業投資、熱帯サバンナ、土地収用

1. はじめに
「日本・ブラジル・モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発プログラム(プロサバンナ)」を事例に、グローバリゼーション下アフリカにおける農民主権の課題と日本との関係を浮彫りにする。

2. プロサバンナ事業に至るまでの背景
(1)外務省による「食料安定供給」と国際プレゼンス向上の試み
日本政府は、1973年のオイルショックと米国の大豆禁輸を受けた食料供給不安への対応として翌年に合意され、1979年来本格的に実施されたブラジル・セラード農業開発(PRODECER)から30年近く経った2008年、食料価格の高騰と穀物生産国輸出規制に直面し、自民党内に「食料戦略本部」を立ち上げる一方、外務省経済協力局内に担当をおき、「確実な食料確保」の対応策を検討し始めた(NHK 2010)。当初模索されたのが、「海外での土地収用・リースを含む農業開発」であった(外務省2009a)。外務省は農水省と共に、「食料安全保障のための海外投資促進に関する会議(海外農業投資促進会議)」を発足させ、2009年8月には、「国民への食料安定供給のため、国内農業生産増大を基本としつつ、国土条件の制約から必要な輸入はその安定化・多角化を図る」と述べ、「世界全体の農業生産の増大、農業投資の拡大が急務」で、「海外農業投資(生産、集荷、輸送、輸出)」促進に官民が一体となって取り組む必要があると表明する(外務省2009b)。

同会議で先駆事例とされたのがセラード開発であった。ただし当時と異なり、政府や日系入植者ではなく企業が前に出て、政府は後方支援をする手法が重視された。しかし、企業が消極的だっただけではなく、「土地争奪」「新植民地主義」との国際的な批判を避けるため、外務省は、①「良い投資」と「悪い投資」を分ける国際合意を作り、②「良い投資」増大を促進するとともにその手本を先陣切って示し、食料確保だけでなく国際的プレゼンス向上に努めようとした(NHK 2010; 麻生2009)。

以上を踏まえ、2009年7月G8ラクイラサミットに向けた麻生太郎総理寄稿文で、「規制的なアプローチは良い投資を抑制する可能性があり望ましくない」、「持続可能な未来の唯一可能な解決策は投資」と表明した(麻生2009)。さらに外務省は、同サミット首脳声明に、①国際農業投資の原則、②ベスト・プラクティスに関する共同提案の策定を入れ込んだ(NHK 2010; G8首脳宣言2009)。そして同年9月23日、国連総会時期のニューヨークで「責任ある国際農業投資の促進に関する高級実務者会議」を主催し、世銀提案の「責任ある国際農業投資(RAI)七原則」について31か国(主として穀物の大規模生産・輸出国)の承認を取り付けた。中身は麻生(2009)とほぼ同様で、規制を排除し、「受入国政府、現地の人々、投資家の3者の利益を調和し最大化を目指す」とした(外務省2009c)。

(2)「熱帯サバンナ」への注目とブラジル・セラード開発を「先駆事例」とする動き
一方、②の「良い投資の見本」として日本政府が提示したのが先述セラード開発事業であった(麻生2009)。その背景には、「先祖返り」という側面以外に、2つの潮流があった。まず、2005年に本格的に「国連改革」を目指した外務省のブラジルへの接近である。同省はインド・ドイツとも連携していたが、強力なパートナーとしてブラジルに注目し、移民100年を祝う2008年の「日本・ブラジル交流年」に向けて「戦略的パートナーシップ再活性化」を企図していた。2007年には、JICA理事長と伯外務大臣との間で「日伯パートナーシッププログラム」推進が合意され、麻生外務大臣の同国問時には同「再活性化」が確認された。2009年サミットにおける麻生総理とルーラ伯大統領の「アフリカ熱帯サバンナ農業開発」合意は、これを受けたものであった(舩田クラーセン2013)。

もう一つの潮流は、世銀を中心とするものであった。同行はサミット直前(6月)、商業的農業の必然性を説く一方、「ギニア・サバンナ」6億haの内4億haが農適地であるが10%しか耕作されず投資と開発が可能と発表する(WB 2009)。同じくJICAは、「アフリカには熱帯サバンナの5割が集中し広大な未利用農業適地が存在。世界は新たな食料生産・輸出基地を求める(JICA, 2009年6月30日)」との認識を示した。両者の手本とされたのが、「熱帯サバンナ農業開発の成功例・セラード開発」であった(*セラード開発は、ブラジル学術界・市民社会・農民運動によって強く批判されてきた。これも取り上げる)。  

この考え方は、「日伯協働によるアフリカ熱帯サバンナ農業開発事業(JICA 2009年5月25日)」にも示されるが、NYでの「実務者会合」に向けてアフリカ側対象国の確定と合意が急がれた。そして、「良い投資の見本」「日本の協力」「アフリカ熱帯サバンナの農地転用」等の言葉の先にターゲットとされたのが、ブラジルと同じ葡語国モザンビークであった。同会合5日前という日程で、プロサバンナ事業は三政府により調印されるが、この急がれたプロセスの中で繰り返しされたのが、ブラジル・セラードとモザンビーク北部の「農学的な多くの共通点(JICA, 2009年6月30日)」「類似性」であった。

しかし、「熱帯サバンナ」とは、その一般的イメージ「草原サバンナ」ではなく、乾季雨季が明確に分かれた気候帯のことを指し、一定の雨量があるため農業に適しているが、多くの場合セラードと同様「森林サバンナ」地帯であった(Distributed Active Archive Center for Biogeochemical Dynamics)。また、事業対象地のモザンビーク北部地域は、土壌の酸性が強く人口が少ないセラードの特徴と異なり、最も肥沃で水資源に恵まれ、農業生産が盛んで人口が最多(全人口の4割)であった(舩田クラーセン2013)。モザンビークに在外公館・JICA事務所が設置されて10年も満たない2009年、地域社会や農業の十分な知見も経験も蓄積がないまま、合意後半年間準備調査を行っただけで、「モザンビーク北部1400万ヘクタール(日本耕地面積の3倍)を対象に、中小農民40万人に直接、360万人に間接の裨益」と喧伝される巨大事業が、食料価格高騰・G8サミット・国連総会を経て、始動したのである。

3.モザンビーク農民組織、市民社会からの異議申し立て
合意から数年が経過した2012年4月、日伯の官民連携ミッションのモザンビーク北部訪問前後から、現地社会や国際社会で同事業への疑義が表面化し始める。この頃、ブラジルのアフリカへの積極的な進出が顕著になり、鉱物開発企業を筆頭にアグリビジネス界も活発な動きを展開する。このゲートウェイとされたのがモザンビークであった(Schlesinger 2012)。前年に同地を訪問し、安価で環境規制の緩いモザンビーク北部の肥沃な土地に熱狂したブラジル綿花業界関係者だけでなく(Reuters 15 Aug. 2111)、前述ミッションのブラジル側団長ニシモリ議員の「プロサバンナ事業は土地不足の伯国の若者が近代農を大規模展開するための事業」との説明が(議会TV 27June2012)、モザンビークの農民組織や市民社会、国際NGO等に危機感を抱かせるようになる。これらの組織は、3か国の関係者に聞きとり調査を行い、JICAなどに説明を求めたが懸念を一層深め、2012年10月には、同国最大の農民組織UNACが、「不透明で、農民組織を排除するトップダウン事業」「農民の土地収用イニシアティブ」と、プロサバンナ事業を批判する声明を国内外に表明した(UNAC 11Oct.2012)。

UNACは、同国に経済自由化の波が押し寄せた1987年に、農民が自らの権利を代表・擁護し闘うため結成され、現在全国8.6万の農民と2200農民組織が加盟する。同連盟は、農民の土地占有権(DUATs)と慣習法的権利の両方を重視する1997年土地法の制定に多大な役割を果たした(Negrão 2003)。UNACはJICA報告書でも主要農民組織として紹介されるが(JICA 2000)、JICA担当者らは同連盟への理解がないばかりか、「一団体/一部に過ぎない」と繰り返してきた(NGO・外務省意見交換会)。

本年4月には、モザンビーク4団体を含む世界23団体・1国際ネットワークが、マスタープラン中間報告を入手し分析した結果、次を警告した。①真の目的は大規模土地収用に道を開くこと、②地元移動農法「撲滅」が喫緊課題と断定、③「定着農・近代農」に転じた農民にDUATs付与、④どこで誰が何を作るか指定するゾーニング案を有す(JA et al.29Apr.2013)。投資のため、地元農民の主権と営みを著しく侵害する計画と指摘されている。確かに同報告は、権利侵害の抑制効果がないRAIを重視し、企業の土地収用を確実にする抜け道を多数用意している(ProSAVANA Report 2)。前節で示した「農業投資が唯一の処方箋」「投資家は現地の人々と対等」「規制排除」が顕著に表れた計画といえる。

4. おわりに
2008年以降の日本政府の認識や動きが、どのような国際潮流や外交、援助事業に結びつき、ODAとして展開する中で、農民主権を阻害する可能性を広げていったかを明らかにした。討論では、これが日本社会・市民の「食」「農」「農的営み」に対する無関心さに基因している点についても論じたい。

【参考文献】●麻生太郎(2009)「食料安全保障の永続的な解決」、●NHK取材班(2010)『ランドラッシュ』新潮社、●外務省(2009a)「海外投資促進に関する指針」、●外務省(2009b)「官民連携モデルのイメージ」、●外務省(2009c)「責任ある国際農業投資の促進に関する高級実務者会合」、●JICA (2008)『南部アフリカ地域援助研究会報告書』、●G8首脳宣言(2009)、●舩田クラーセン「 変動する世界における経済成長至上主義の席巻と内発的発展」近刊、Negrão, José (2003) “A Propósito das Relações entre as ONGs do Norte e a Sociedade Civil Moçambicana”、●Schlesinger, Sérgio (2012) “Cooperação e investmentos internacionais do Brasil”. ●WB (2009) “Notes: Africa’s Sleeping giant: prospects for commercial Agriculture in the guinea Savannah Zone and Beyond”.(詳細配布)
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by africa_class | 2013-06-21 23:53 | 【考】土地争奪・プロサバンナ問題
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