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やっぱり畑に出て作業をしていたら、ブラジルから緊急連絡…。時差があるので、なるほどな、というところなのですが。
日本が深く関わるブラジル・セラードの皆さんから緊急情報が寄せられています。今週の土曜日に何が起こるか分からない…ということで、日本も関係している可能性があるので拡散してとのことです。
でも現地の情報をただ貼付けても、おそらく基本情報が日本語でよめる形になっていないので、よく分からない…と思うので、まずはこの地域で、日本との関係で今起きていることについて、背景を歴史と日本の関与に焦点を絞って紹介しておきます。
なお、緊急連絡があった事件については、直接関係があるか不明なので、別個の記事にしておきます。
【歴史的背景:大豆を求める日本との関わり PRODECER→ProSAVANA/MATOPIBA】
JICA(日本国際協力機構)の前身の国際協力事業団が、ブラジル・セラードを「不毛の無人の大地だ」と主張して農業開発協力(PRODECER)を行ったこと、その結果については、すでに詳しく紹介してきました。PRODECERには第一期、第二期、第三期まであり、大豆のプランテーション栽培の対象地は、どんんどん北上し、アマゾン周辺地域までいったことについても紹介したかと思います。
その後、「PRODECERの成功をアフリカに」と称し、「緯度が同じで農学的環境が類似する」との想定でモザンビーク北部にProSAVANA事業が持ち込まれたことについても、このブログで紹介しました。しかし、モザンビークでの粘り強い反対運動に直面する中で、元々計画されていた「大豆フロンティア」をブラジルのアマゾン周辺地域に伸ばしていく政策が、より強固に推し進められるようになったことについては、未だ紹介していなかったかもしれません。この計画を、関係者らはMATOPIBA(マトピバ)とよんでいます。
ジルマ政権の末期に、農場主協会のトップでもあったカーチャ・アブレウが農務大臣になり、MATOPIBAを国家政策として正式に採用し、日本の農水省大臣との間で、これを推し進める二国間合意文に署名しています。2016年2月のことでした。この前段に、安倍首相のブラジル訪問時(2014年7-8月)の声明があります。
その際に、PRODECER、ProSAVANAを賞賛し、このMATOPIBA実現のためのインフラ整備を約束しています。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/la_c/sa/br/page3_000872.html
MATOPIBAは、セラード地域の中でも、PRODECERが「十分」には包含できなかったマラニャオン、トカチンス、ピアウイー、バイーア州をターゲットにした計画で、この地域はより深い森林に覆われ、アマゾンへの移行地帯であるとともに、数多くの先住民族やアフリカ解放奴隷の逃亡コミュニティ、伝統的なコミュニティが自然に頼って暮らす地域です。
MATOPIBAは、ナカラ回廊におけるProSAVANA事業と同様に、内陸から港迄の一次産品輸出網を確保するというインフラ整備と農業開発が連動した計画で、アマゾンを横切る河川を使った運搬ルートなども念頭におかれています。この北部穀物輸送ルートの調査研究を行ったのがJICAです。
【セラードを守るための住民の運動】
MATOPIBAについては、ブラジル内でかなり大きな反対運動が起こっています。ブラジルの主要な社会運動組織や当事者団体(先住民族、解放奴隷コミュニティ、女性運動、小農運動、土地なし農業労働者運動、教会)や市民社会組織(環境団体、人権団体)、そして大学・研究者・研究所が加わる形で、活発に活動を繰り広げています。
<セラードを守る全国キャンペーン・サイト>
http://semcerrado.org.br/
この中に、MATOPIBAに関するリーフレットが2つ掲載されています。
http://semcerrado.org.br/wp-content/uploads/2017/01/Folder-Matopiba-Cr%C3%A9dito-CIMI.pdf
http://semcerrado.org.br/wp-content/uploads/2017/01/Infogr%C3%A1fico-sobre-MATOPIBA-Cr%C3%A9dito-CPT.pdf
*必ずしも正確ではない点が部分的にあるのですが、現地からの視点ということで。末尾に表紙の写真を貼付けますが、見るだけで哀しくなります。
【MATOPIBAのその後】
日本政府・JICAは、輸出型・官民連携の大豆生産・輸出を目指したProSAVANA初期計画の失敗を受けて、農業開発そのものには政府としては関わってはいません。といっても、分かっている範囲ですが。また日本の企業も当初は農場買収などでこれに参画しようとしていたものの、事業失敗の中で巨額の債務を抱え、現在はvalue chainのコントロールに焦点を移しつつあります。
そして、ジルマ政権の崩壊と、アブレウ農務大臣の失脚を受けて、前政権の計画であるMATOPIBAは政治・外交の舞台から消えているように見えますが、実際のところはこの地域での土地収奪は、より内陸奥深くに伸張しつつある鉄道・道路などの交通網の整備に伴って、激しさを増しています。ここにきて、大豆などのだけでなく、ユーカリ植林も増えてきています。
なにより、ジルマ前大統領の弾劾後に政権を奪取したテメル大統領は、農務大臣にブラジルの「大豆王」でありアグリビジネスの帝王と呼ばれるブライロ・マッジ氏を選ぶ一方、小農の農業を支援するためにルーラ政権時に創設された農業開発省を潰し、アグリビジネス優先の農業政策を強く打ち出しています。
これらの結果、2014年頃から、ブラジル各地で、土地や水をめぐる紛争が激化しています。中でも、MATOPIBA地域を含むセラードやアマゾン周辺地域は、最も激しい紛争が起こっており、土地と森を守ろうとする先住民族のリーダーや市民社会組織のリーダーらが、次々に暗殺されています。ブラジルは、土地と森を守るために殺された人が世界で最も多い国となっています。
国際NGO・グローバルウィットネスの報告書
https://www.globalwitness.org/en/campaigns/environmental-activists/how-many-more/
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