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セラードの森の中で暮らす人びと:日本企業の大豆プランテーションのすぐ横で営まれるアグロフォレストリー

今日も寒いですが、トロピカルを懐かしがって「セラードの森」について。
今度のセラードの森は、後に日本の企業が購入した大プランテーションのすぐ近くの森について。
元々そのプランテーションがあった場所に暮らしていて立退きを迫られて各地を点々としていたご家族が、ルーラ政権の「土地改革」で土地をもらって、自給の生活を始めて10年近くが経過した暮らしぶりの様子です。

前回の記事に出てくる「川べりのコミュニティ」の若者たちが教会で出会って、この「土地改革で新設したコミュニティ(アセンセアメント)」に行って感動したという話を少ししました。自らの伝統農業の経験とアグロエコロジーを融合させ、発展させたおじいちゃんのお宅にお邪魔しました。

教会のセミナーには、このような背景の人達が沢山きていたのですが、なぜこのおじいちゃんのお宅にいこうとおもったかというと、教会の中庭で落ちていた果物から種をせっせと採っていたからです。

そのうち種の話は別途したいと思います。
で、このコミュニティは、日本企業のものを含め、周りを大豆プランテーションに囲まれています。が、ルーラ政権時に、土地なしになっていた農業労働者らが土地の占拠を行い、闘い続けた成果として、政府から土地が与えられたということで、原生林というよりは、この10年の歳月にせっせと種を植えてここまでの森になった部分が大きいということを念頭においていただければ。

つまり、植生は古来からあるセラードの森というわけではないのですが、セラードにある果樹を中心に植えた結果ではあります。アグロエコロジーの手法の中でも果樹は重視されてはいますが、ブラジルのセラード地域で実践されているそれは、とくにアグロフォレストリーに近いものが採用されています。その理由は前回書いたとおり、フルーツの種類があまりに豊富でかつ栄養価が高く美味しい・・・に尽きます。街で売る事ができることも重要な一要素です。

では、おじいちゃんがせっせと育てた「セラードの森」をどうぞお楽しみ下さい。

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これは、自宅から畑、畑から森、森からフィッシュポンド(魚の池)に向かっているところで、途中に養蜂の箱があります。ハチは蜂蜜や蜜蝋を提供してくれるばかりか、自然受粉においても重要な役割を果たしてくれます。

照りつけるようなブラジル北東部の太陽を浴びてきた身には、なんとも嬉しい木陰に空気の湿っぽさです。


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この木々を抜けると・・・

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出ました。自家製、フィッシュポンド(魚の養殖のための貯水池)。
ここには、アヒルも暮らしており、アヒルのふんが魚の栄養になっています。
掘る時にはショベルカーのヘルプをもらったとのこと。
ブラジルには、土地改革後の住民のための小口融資制度があるのです。

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池から自宅に戻る途中で振り返って写した写真。
遠くに見えるのはパパイヤの木々。パパイヤは採れば採るほど背が高くなるので、最後はこんな幹事にそびえ立つようになりますが、こんな背か高いのを見るのはひさしぶりかも。手前の低灌木の中にはコーヒーの木が。コーヒーの木は日陰が好きなので、少し日陰の部分にあります。

あとは、トウモロコシ、豆類、野菜類などもあちこちで栽培中。大豆は生産していない。種は遺伝子組み換えだし、したところで企業の量と価格に張り合えるわけもなく、かつ地元の人は食べないからです。あとは、ニワトリなども飼われていました。

ちなみに最初は大変だったけれど、ほとんど手入れもしていないとのことで、自然が勝手に育つのに任せているそうです。

自宅も手作り。2LDKのしっかりとした平屋。テレビも冷蔵庫もある。でも、やっぱ極めつけはコレ。家主がよんでも出てこなかったので、勝手に皆であがったら、これがテーブルの上にデーンとおいてあった。

運転手の青年が嬉しそうにゴクゴク飲んでた。つまり・・・

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放牧された牛のミルク。
犬とおじいちゃんで牛たちをコントロールしつつ、牛乳をふんだんに飲み、果物や魚を食べ、余剰を街に売りに行く生活。そうやって街に子どもたちが学校にいく際に使う家もプレゼントこの地域の「伝統的コミュニティ」の多くは、放牧をかつて営んでいた人達です。

ちなみに放牧地を含まないおじいちゃんの敷地面積は2ヘクタールほど。日本から行くとそれでも相当広く感じられますが、一人で手に負える範囲のアグロフォレストリーガーデンが維持されている感じがありました。

で、このコミュニティから少し行くと未だ森が残っており、かつての植生を実感させてくれます。これだけ見ても、JICAのいう「不毛な大地」とはかなり違う印象かと思います。そして、「閉ざされた地帯=cerrado」と呼ばれていた理由も分かるかな、と思います。

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しかし、このような森は道路沿いには、もはやほとんど残っていません。見える範囲だけでも1割以下ではなかったかと思います。それぐらい凄まじい森林伐採が行われたことが実感できます。

その結果、広がった風景とは?
この地域にくるまでの風景はこんな感じの大豆畑が延々と続いていたのでした。まさに裸にされた大地。保護林が申し訳程度にあるものの、この権利証もあちこちの農場に使い回しされており、実際の保護林の面積は極めて小さい。

実態としては、土地収奪の「免罪符」のように使われているので、「保護林を守ればいい!」という主張は先住民族やその他の昔から暮らしてきたコミュニティの人びとにとっては何の意味もないです。

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おじいちゃんのコミュニティのすぐ近くには日本企業が買収した大豆農場が。こちらは裏作のソルガムが植わっているので、みたところ土がむき出しには見えないので「緑」な印象がありますが、実態としては、おじいちゃんの森や昔からある森にみられた多様な生き物の生態系は皆無。

ひたすら土にソルガムだけが植わっている状態。土も直射日光をあびてぱさぱさ。なので、地下水を大量にくみ上げて水をやり続けている状態なのです。この企業も巨大な貯水池を準備していますが、ひたすら二種類の作物に水をまくだけ。そして、なにより、大豆は遺伝子組み換え。そして、農薬と化学肥料をがんがんに与えられている。
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おじいちゃんの畑には化学肥料は一切使われていませんでした。
豊かな森の恵みである葉っぱ、鳥たちのふん、常に湿った空気によって、土がよい状態になっているのでしょう。そして、その土にあった種を自家採取し続けた結果ともいえるし、土地・地域の気候にあったものしか育てていないからともいえます。

たった2種類の作物を輸出するために、あれほど豊かな自然が奪われている状態を、少し身近に感じていただければ。この農場で働いている人は数十人程度(しかも季節労働者)。土地面積はおじいちゃんの敷地の250倍でようやく500ヘクタール。おじいちゃんの家族は6人家族だったので、その家族が食べて暮らせて現金を入手して街に家まで建てられたことを考えると、小農やムラに暮らす地元の人びとを豊かにするという意味では、どちらのモデルが有効なのか、しっかり考えたいですね。

まずは知ること。
何が起きたのか?
かつてはどうだったのか?
オルタナティブはどんなものがあるのか?

今さらという感じは否めませんが、遅すぎることはない。
なぜなら、日本の官民がこの地域により関与を深めているからです。
まずは、そこから始めていきましょう。



by africa_class | 2017-12-05 09:06 | 【考】土地争奪・プロサバンナ問題
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