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モザンビークでのジャーナリスト暗殺と国会前抗議の地続きの今、考えてほしいこと。

金曜日(2015年8月28日)、モザンビークで、最も尊敬されるジャーナリストの一人であったパウロ・マシャヴァ(Paulo Machava)独立新聞(Diario de Noticias)編集長が暗殺された。カステルブランコ先生(国立大学経済学部教授、IESE[経済社会研究所]創設者)と独立系新聞(MediaFax)編集長の裁判(8月31日)直前の、「これでもか」という脅し。マシャヴァ編集長は、この二人の訴追に対して反対キャンペーンの先頭に立っていた。26日に、モザンビーク・ジャーナリスト連合の抗議声明を取り纏めた矢先。朝6時にジョギング中に走り去る車の中から撃たれて死亡した。

ついに心配していたことが起きてしまった…と、あまりにもショックでまたしても寝込んでしまった。

「アフリカだから…」等としたり顔でいうなかれ。
そんなことを言う人は、いかにアフリカの多様性、モザンビークの固有性を知らないか、理解・知識のなさを露呈するだけだから。

ゲブーザ政権の二期目(2004年以降)迄、モザンビークは表現の自由においてはかなり進んだ国であり、ジャーナリストの暗殺はカルロス・カルドーゾ(2000年)以来、40年の歴史で2人目にすぎないのだ。そして、偶然の一致ではほとんどないと思うが、マシャヴァはカルドーゾ暗殺事件をずっと追い続けてきた。

外務省にもJICAにも日本企業にも何度も言って来た。
モザンビークは坂道を転げ落ちるように人権状況を悪化させている、と。特にこの2,3年は酷い状態で、その2,3年に日本の官民がモザンビーク政府・エリートに対して行っている支援や投資はその遠因の一つであることも指摘してきた。いわゆる「資源の呪い」だ。

しかし、これらの機関の人々は耳を貸さないばかりか、「人権状況は悪化していない」等と繰り返していた。すでにこの点は紹介したのでそちらを参照下さい。現実を受け止めず、現実に沿った対策がたてられず、「耳障りのよい情報」に依拠して戦略をたてる癖は、戦時中と同じだ。そして、その根拠として引っ張ってくるデータの問題はSTAP細胞問題と変わらない。

■プロサバンナの衝撃的な出来のマスタープランを材料として、大学1年生の基礎ゼミをする。

http://afriqclass.exblog.jp/21527387/

でも、実のところ、私は「オオカミおばさん」であればいいと思っていた。私の論文執筆の際の「将来展望を楽観的に持ちつつ、悲観的に分析する」という姿勢の結果であり、これ以上は悪くならなければよい、と。でも、モザンビークに関わる皆さんには伝えておかねば、と。

残念ながら、事態は予測した通りに悪化してしまった。
途中で期待がなかったわけではない。

今年1月にニュッシ政権が誕生し、同じFRELIMO党の支配が40年間続いているとはいえ、前政権が強めていた独裁に近い権威主義的傾向・暴力の方向性は転換するかもしれない…と多くが期待した。実際、同政権の閣僚は、FRELIMO党内の幅広い層の人を集めており、「対話」の重要性を繰り返し強調するニュッシ大統領への市民社会やFRELIMO党員の期待は大きかった。

しかし、現実には、2015年に入って次のようなことが発生していたのである。
(NGOのサイトからの抜粋。詳細は以下のURLを)
http://mozambiquekaihatsu.blog.fc2.com/blog-entry-173.html

【2015年1月のニュッシ政権誕生以降起きていること】
① 2月:国立公園でのサイ密猟を取材中の国際ジャーナリスト2名の拘束と訴追
② 3月:野党案を支持したシスタック教授(憲法学)の暗殺
③ 6月:与党FRELIMO事務局長の汚職を報じた独立新聞に賠償命令
④ 6月:前大統領の退陣をフェースブックで要求したカステルブランコ教授(経済学)と2独立新聞編集長の訴追決定 *8月31日裁判 
<=内1新聞の編集長(Canal de Mozambique)は病気で国外のため訴追を免れる。
⑤ 8月26日:モザンビーク・ジャーナリスト連合は④上記訴追の中止を要求
⑥ 8月28日:最も尊敬されるジャーナリスト&新聞のマシャヴァ独立新聞編集長の暗殺
(⑤の実現に尽力)

多くの人は、「シスタック教授の暗殺」で初めてモザンビークの人権問題や「言論/表現の自由」の問題に注目したかもしれない。しかし、実際は徐々にじわじわと色々な兆候が出ていたのだ。今日は詳しくは書かない。以上のリストを見れば、言論抑圧がクレッシェンド(徐々に強化)されていった様子が明らかだろう。

これは、AP通信の取材に対する全国ジャーナリスト連合の会長Eduardo Constantinoの以下の一言に明確に表れている。

AP通信(2015年8月29日)
http://bigstory.ap.org/urn:publicid:ap.org:e01c374d143140659135a0e206957d89
「我々の国のジャーナリストらを黙らせようというさらなる試みだ(once more a way of trying to silence journalists in our country)」
南部アフリカ・メディア研究所は、次のように語る。
「マシャヴァの殺害は、『報道の自由を妥協させる恐怖の空気』を作り出した。」

このようなモザンビークの状態について、FRELIMO党の創設者の一人であり、1964年から独立まで英語ニュースの編集者であり、独立後内務大臣を努め、ザンベジア渓谷開発事業の総裁を務め、日本にも来たことのあるセルジオ・ヴィエイラのメッセージは、一読に値するものである。なお、ヴィエイラ元大臣は、汚職に手を染めるゲブーザ大統領の批判を繰り返したために、党の中で孤立を余儀なくされ、数々の脅しにあっている。

ヴィエイラ元大臣のメッセージについて、私が知ったのは、次のCanal de Mozの記事であった。ともに訴追の可能性がありながら、病気で編集長が裁判を免れたCanal de Mozであるが、二人を応援するために最前線で言論の自由の危機に立ち向かっている。

Canal de Mocambique 2015年8月27日版

A reflexão de Sérgio Viera e a deCastel-Branco têm dois denomina-dores comuns: a saturação peran-te a destruição do projecto de umpaís, em nome de um nacionalis-mo cínico acumulador, excluden-te, oleado pela ganância desmedi-da e por um desrespeito profundopelas noções de República, Esta-

do, suas instituições e cidadãos.


今日は訳する元気がないが、カステルブランコとて、17才の時にFRELIMOに入り植民地解放闘争に身を投じ、ゲブーザ前大統領と共に武器を取り、独立後は経済学者として教鞭をとりながら、歴代政権、ゲブーザ大統領のアドバイザーであった。モザンビーク政府のど真ん中で働いてきた人たちが、今の政府の状態をこのように述べているのは凄く重要である。逆にいうと、彼らはFRELIMOのど真ん中の人間だったからこそ、比較的「安全に」批判ができたのである。

「ある国の破壊のプロジェクト」


そう。独立の半分以上の期間、この国を見つめてきた私の感じているのも、その点なのだ。人権侵害、汚職、バッドガバナンス、民主主義の後退、権威主義化、軍国化・・・色々な言葉を使わざるを得ないが、どの言葉も今モザンビークで複合的に起こっている現象を捉まえることはできない。

「どんな苦境も希望を胸に立ち上がってきた「人びと」の国」

国は乗っ取られたのだ。
Greed(貪欲さ)に満ち満ちた為政者とそれに群がる輩によって。

そしてそれを支える中国・インド・日本。
勿論、アメリカや世銀や欧州の一部の国も批判は免れない。
しかし、少なくとも彼らはモザンビーク政府の耳の痛いことを公然と指摘できる。一報、中国・インド・日本は、自分の国が人権問題を抱え、権威主義やバッドガバナンスの体制故に、政官財の汚職まみれ故に、ガバナンスや人権問題、平和の危機について何一つ問題提起することがない状態でいる。このことは、モザンビークの為政者らに「人権、人権とうるさい国以外にも支援してくれる国がいる」という開き直りの姿勢を可能とさせる。

問題は、「ガバナンス」という無味乾燥な言葉で想像するものを超えている。

モザンビークでは、このような「国の破壊」をなんとかしようと、憲法が保障する言論の自由と結社の自由を使って、なけなしのカネと勇気で立ち向かう大学教授やジャーナリストたちが存在する。農民運動や社会運動、人権活動家、教会の人びと。「モザンビークの良心」ともいえる一群の人たち。かつては、FRELIMO党の中にも、政府の中にも、政府メディアの中にも沢山いた…。彼らの捨て身の努力があって、モザンビーク社会の正義はギリギリの、ごく僅かな最後のスペースにではあるが、保たれている。

なのに、これらの人びとを「外国の操り人形」「反乱者」「野党支持者」とよんで、弾圧するのを黙認する投資家・外国政府…そして、日本政府とJICA。

そのことが「モザンビーク社会の最善・最良の部分の人たち」を、いかに危険に追いやり、裸で政府に対峙させるか、そのことが結果として「国の破壊」に至り、汚職まみれの金満不正国家を生み出すか、繰り返し書き、述べてきた。この人たちとこそ、日本政府やJICA、企業や市民社会は、連携・連帯すべきところなのに、目先の「資源ほしさ」「メンツ」、あるいは「政府とだけやってればいい」の浅はかさ、あるいは理解のなさ故に、組むべき相手ではない相手たちと今日も悪行を重ねる。

詳しくは以下。

■敗戦直前に燃やされた陸軍資料、そしてマフィゴ代表の死とプロサバンナ。12団体「緊急声明」から考える

http://afriqclass.exblog.jp/21539066/

絶望してはいけない。
最前線で身体をはって闘う人びとがいる以上。

カステルブランコ教授は、昨日の裁判で、当然ながら無罪を主張するとともに、ゲブーザ大統領に退陣を迫った理由として、彼とその家族の汚職の数々を一覧として裁判所に提出するという行動に出た。暗殺長後の、あまりに勇気のある…正直なところ涙が出た。

BREAKING: Castelo Branco lists Guebuza's businesses, tells court how he wrote his speeches in 1977, Mozambique

http://www.clubofmozambique.com/solutions1/sectionnews.php?secao=mozambique&id=2147491324&tipo=one

大統領を辞めても巨大な利権を獲得したゲブーザ前大統領とその家族の影響力は健在である。それなのに、あえて彼らの汚職の数々をモザンビーク司法、社会、世界に問題提起したのだ。。。

彼は、裁判所でこう述べた。
「1980年代はゲブーザも理想を共有できる相手だった。しかし、今の彼は解放闘争の理念を侵害する人に成り果ててしまった。しかし、私は今でもこの理念を胸に生きている。 」

日本では知られていないのかもしれないが、ゲブーザ大統領家族はアフリカで最も裕福な一家の一つにのし上がった。それもこれもすべては「民営化」という言葉を使いつつ、国の権益を切り売りしてのことだった。ここら辺の話は、NGO主催の勉強会で使った資料を参照されたい。

【報告・資料】緊急勉強会「安倍総理が訪問するモザンビークで今起きていること~和平合意破棄後の援助、投資」
http://mozambiquekaihatsu.blog.fc2.com/blog-entry-62.html

多くが、人びとの犠牲の上に築かれたビジネスである。その象徴が、プロサバンナの初期構想そのままの事業といわれるザンベジア州グルエ郡ルアセ地区で行われているAgroMoz社による大豆生産がある。ブラジルの大豆生産企業と組んで、ゲブーザ大統領の投資会社が多なっている大規模大豆生産は、地域の人びとの土地を奪い、人びとは恐怖に各地に拡散して、避難者生活を送っている。そして、この会社が空からまく農薬のせいで、子どもたちにすでに健康被害が出ているという。

■プロサバンナの問題を一括掲載している報告書は以下
https://www.dlmarket.jp/products/detail.php?product_id=263029
■日本の4NGOによる報告書は以下
http://www.ngo-jvc.net/jp/projects/advocacy-statement/data/proposal%20final.pdf

なお、モザンビークの市民社会によって、この会社を含むナカラ回廊沿いの土地収奪の数々について、農民の声を紹介する動画が作製され、公開されているということなので、以下参照されたい。
https://www.youtube.com/watch?v=ptH1j_ye-oA&feature=youtu.be
http://mozambiquekaihatsu.blog.fc2.com/blog-entry-174.html

本当は英国の研究所にいたカステルブランコ教授は帰国して裁判を受けなくとも、亡命することもできた。ポルトガルの国籍だって簡単に取れる。しかし、彼は7月のインタビューで、そんなことをしたらもう一人を危険に曝すし、何よりモザンビークを愛している市民として、危機に陥る言論の自由をなんとしてでも守らねばならない、との決意で裁判のために帰国したのだった。

そして、彼らを守ろうと、立ち上がったのも独立時の理念を共有し、モザンビークを良い国にしようと闘い続けてきた人びとであった。Abdul Carimo Issaは、裁判官であり、検察官であり、FRELIMO国会議員であり、法制度改革技術チームのトッップであるが、「ゲブーザ前大統領の尊厳を傷つけようという意図どころか、この公開書簡はこの国が現在直面する危機へのクリティカルな貢献である。 書簡を読むと、これが我々はもっと改善できるのに、できていないことへの絶望が読み取れる」。彼も身の危険を顧みず、証言したのだ。

モザンビークには、未だこのような人たちが残っている。
彼らが大統領や政府にこびを売って同じように儲けるのはとても簡単だ。別に独立系新聞などで危険に曝されなくともいい。政府が起訴した人を守ろうとなどがんばらなくていい。大多数の「官製」ジャーナリストは、なかなかキャンペーンに賛同しなかったという。大学の教授たちも、今となっては政府の言う通り、企業の言う通り、プランを作ればいい。黙ってればいいのだ。そうすれば、コンサルタントやアドバイザーとして重宝してもらい、カネはがっぽり入る。子どもたちも、親戚も、留学させてもらえるし(奨学金応募に値するかどうかすら政府が決定)、そもそも睨まれることなどない。暗殺の脅迫も受ることもないし。

しかし、個人の利益のために、あるいは自分だけを守ることを是としない人びとが、まだこの国には残っているのだ。もう最後の一握りであるにもかかわらず、彼らは最前列で声を上げている。UNAC(モザンビーク全国農民連合)だってそうだ。なのに、プロサバンナによって、そのUNACを排除・分断させようとしてきた3年間だった。詳細は、NGOのサイトの以下の資料。

■ProSAVANA事業で長引き、悪化してきた諸問題に関するNGOの見解と資料一覧
〜なぜ援助を拒否したことのなかったモザンビーク農民や市民社会は、日本政府とJICAにNoといい、怒っているのか?〜
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/activities/201508prosavana.pdf

今、日本の国会前で起きていることも、そうだ。
皆、怒っている。
怒るべくして怒っている。
モザンビークの農民と同様、主権を踏みにじられたからだ。
沢山の血を流して得た平和の時代に制定された憲法で、主権在民が書き込まれているというのに、それが目の前で踏みにじられているからだ。

日本では今、自分の不利益を引き受けてまで若い人たちが身体をはっている。それに先生達、大人達が心を揺さぶられ、ようやく動き始めたのだ。無私の心は人を動かす。それに比べて、日本もモザンビークも、世界も、あまりに私利私欲の追求者によって牛耳られている。その犠牲になっている人びとは、それでも騙されたままである。現状は、これらの為政者がいなくなると悪くなる、、、と信じ込まされて。自らが立ち上がることを度外視するあまりに。

■大学生のスピーチに思う。「名を伏せた者たち」が進める全体主義の今(その1)。
http://afriqclass.exblog.jp/21484478/
http://afriqclass.exblog.jp/21487530/

そういう私でも「イケイケドンドン」でもいいかな、という時期もなかったわけではない。チヤホヤされて嬉しくない人はいないだろう。しかし、その時に、モザンビークの農民たちのところで毎年修行させてもらい、また権威主義の国日本内で市民活動をしていたからこそ、狭いサークルで利己的に生きる限界に気づくことができた。

■長い夜にブレない生き方について考える〜ガンジーの「ノー」の価値論と「五日市憲法草案」、そして沖縄
http://afriqclass.exblog.jp/21326990

今、私たちは本当に岐路に立っている。
目の前は崖だ。
人類が世界のあちこちで闘い勝ち取ってきた、大切なたいせつな価値を、自らの手で、一時の狭い欲望にかられてこれを破壊しつくすのか、否か。

モザンビークで起きていることも、日本で起きていることも、地続きで起きている。
世界は常に連動していたのだ。
そして今はまさにもっと同時進行である。

あなたの理解、あなたの立ち位置、あなたの一歩、あなたの一言、、、すべて世界という大海に投げられた小石のように、輪を広げ、広がって行くことを想像してみてほしい。

国会前のあなたの姿は、日本の多くだけでなく、世界の多くの人を勇気づけたということを、今一度日本の皆が認識してくれたとしたら、モザンビークの危機もいつの日か共に乗り越えられるかもしれない。

決して自分のためでなく、人びとの権利と幸福ために、最期の最期まで闘い続けた、モザンビークの
・「憲法の父」故ジル・シスタック教授に、
・「農民の父」故アウグスト・マフィゴUNAC代表に、
・「ジャーナリズムの父」故パウロ・マシャヴァ編集長に、
とその家族に、心からの哀悼の意を表したい。

A Luta Continua.
(闘いは続く)


*なお、マフィゴ代表のご家族やUNACへの連帯メッセージと香典は以下のサイトで受付中(9月10日まで延期中)です。
https://docs.google.com/forms/d/1c--v5-ruK4VuQBCiFVq_WMKhbNISilVQro_ALLzpxlY/viewform?usp=send_form


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by africa_class | 2015-09-02 02:55 | 【考】21世紀の国際協力