ブログトップ

Lifestyle&平和&アフリカ&教育&Others

afriqclass.exblog.jp

タグ:ProSAVANA ( 60 ) タグの人気記事

【プロサバンナ】朝日新聞朝刊「私の視点」読んで興味を持った方のために

今朝の朝刊で読んでくださって関心を持ってくださった方へ。
明日も一日長いので、一先ず以下を紹介しておきます。

■朝日新聞私の視点  舩田クラーセンさやか
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201302010544.html
<=会員しか読めないようなので末尾に貼り付けておきます。が、これは最終的に掲載されたものではなく、文字数等の関係で削られる前の原稿なので、著作権上の問題からも、同じものではない点前もってお伝えしておきます。

■プロサバンナ事業に関してはこの引き出しに入れておきました。
http://afriqclass.exblog.jp/i38/

■モザンビークから農民組織や環境団体が来日します。後18万円足りません!是非ご協力を~
http://mozambiquekaihatsu.blog.fc2.com/
2月28日(木)18時~20時@東京大学(駒場)でセミナーが開催されます。来日する市民社会代表だけでなく、研究者、政府関係者も参加することになりました。詳細は下記。
http://mozambiquekaihatsu.blog.fc2.com/blog-entry-3.html

======
【ご参考】2013年2月2日付の朝日新聞「私の視点」に掲載された記事の原文(掲載されたものとは同じではありません。編集された部分、最後部分など書き直した点もありますが、広く読んでいただきたいのでとりあえずそのまま流します)。

また、それぞれのポイントについての根拠を示すスペースがなかったこと、新聞の形式的に断定調ですが、それぞれの根拠等については以上紹介のブログ→http://afriqclass.exblog.jp/i38/ 、そして英語論文→http://farmlandgrab.org/post/view/21574 に入れています。そちらをご覧ください。

舩田クラーセンさやか(東京外国語大学大学院教員)

 日本の国際協力機構(JICA)は現在、アフリカ農業を支援しようとモザンビークで「プロサバンナ計画」を進めている。南米ブラジルの広大な森林帯を切り拓いた「セラード開発」をモデルとし、ブラジル政府とも手を組んだ大規模事業だ。来年、横浜で開催される第5回アフリカ開発会議(TICAD)の目玉として繰り返し宣伝されている。
 しかし昨年10月、モザンビーク最大の農民組織・全国農民連盟(UNAC)がこの事業に抗議の声をあげた。声明では、「ブラジル企業による土地収用の可能性」「全プロセスにおける農民の主権無視」の2点を強く懸念している。JICA側は「情報伝達不足による誤解」としているが、そもそも情報伝達の問題だろうか。外務省にも確認したが、ブラジル企業による土地収用の可能性は現時点では否定されていない。
 プロサバンナが「お手本」とするセラード開発は、日本の融資とJICAの技術協力によって行われた。JICAによると、「不毛の無人の地」を高い生産性を誇る世界最大規模の農地に変え、ブラジル農業の躍進に寄与したという。しかし、軍政下のブラジルで行われたこの開発は、地元の先住民からは異なった評価がなされてきた。森林が破壊され、先住民らは抵抗空しく土地を奪われ、生活手段を失った。一方で、豊かな南部から中規模以上のヨーロッパや日系農家が入植。先住民らは安価な農場労働力としての転出を余儀なくされた。そこで先住民はNGOを結成しJICAに面談を申し入れたが、門前払いにされたという。モザンビークの農民は、同じ事が繰り返されることを恐れているのである。
 実際、モザンビーク北部を訪れたブラジル企業家は肥沃で安価な土地の価格に熱狂(ロイター2011年8月15日)。去年4月の官民合同訪問に同行した日系ブラジル人の連邦議員は「ブラジル人の入植を応援する」と表明した(ニッケイ新聞2012年5月1日)。これに、地元農民のみならずモザンビーク市民社会も不安を増幅させている。
 アフリカでは、世界的に食料価格が高騰した07年以来、外資による激しい土地争奪戦が繰り広げられている。とりわけ土地と水が豊富なモザンビークは主要ターゲット国になっており、取引される土地の面積 ・件数とも世界二位とされる(LandMatrix2012 *取引面積は報告ベースのため実際はもう少し少ないと推測されている)。その只中で始動したのがプロサバンナ計画なのだ。
 このような事態を受け、日本がなすべきことは何だろう。今ならまだ間に合う。まずは、これまでのやり方を猛省し、そこに暮らす住民や農民組織の声に真摯に耳を傾け、彼らに意思決定プロセスに参加してもらう。そして、彼らが最も不安に感じている土地収用がこの事業で行われないと約束し、そこに長年暮らし農業を営んできた彼らこそを事業の中心に据えるべきと考える。
 住民の権利を無視して推し進めてきた開発の行き詰まりは開発援助だけでない。国内公共事業の多くがそうだった。311後の今こそ立ち止まり、変える勇気と決断を求めたい。
[PR]
by africa_class | 2013-02-02 23:52 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ

プロサバンナ分析in英語論文が掲載。日本の一次資料に基づく実証的分析。卒論の参考になると思います。

長い一日。なぜかアルジェリア問題での某英字紙の日本語版の取材が入り(まあ一応専門はアフリカ紛争・・・だかららしい)、ゼミの部屋を出たのが8時近く。。。お昼が休めなかった分疲労が激しい。

1.プロサバンナに関する英語論考を発表しました
そして、今朝、私の英語の論文がFood Crisis and the Global Land Grabに掲載されたとのご一報を頂きました。是非ご一読下さい。
Dr.Sayaka FUNADA CLASSEN, "Analysis of the discourse and background of the ProSAVANA programme in Mozambique – focusing on Japan’s role" (2013 Jan.)
→http://farmlandgrab.org/post/view/21574

2.土地問題の専門組織であるNo to Land Grab Japanに興味深い論考
そして、さっきお伝えした通り興味深い論考が別サイトに投稿されていました。
開発と権利のための行動センター・青西靖夫氏の記事「モザンビークにおける国際協力事業が引き起こす土地争奪~」
→http://landgrab-japan.blogspot.jp/2013/01/blog-post_29.html
(財団法人地球・人間環境フォーラム 『グローバルネット』265号2012年12月)

非常に的を得たご指摘だと思います。
冒頭の地図の説明が興味深いですね。
「神は細部に宿る」・・・・いつも肝に銘じているのですが、同じ感じを受けました。

そして最後の補足部分の資料が凄い。
JICAから2001年に刊行された南部アフリカ援助研究会の報告書です。
http://jica-ri.jica.go.jp/IFIC_and_JBICI-Studies/jica-ri/publication/archives/jica/country/2002_01.html

座長は小田先生、副座長は小倉充夫先生なのです!そして、アフリカ研究の諸先輩方の数々。モザンビーク担当者も懐かしい面々。

青西さん引用部分の全文は以上論考をみてもらうとして、「モザンビーク 本編P40- [9 ] 」にこういうことが書いてありますよという程度に抜粋。

「2-2 農地政策
土地に限ってはいまだに国有のままである。しかし土地の保有権は認められており、農村では伝統的首長が慣習的秩序に従って土地を配分することが一般的である。…従って、農地保有権(land title)の確保・安定化が当面の課題となる。1987 年に小農民保護を目的とする新しい条項が土地法に追加され、伝統的に耕作していた土地に対する小農民の権利を自動的に認めることになって、小農民は土地保有権証書を取得する権利が与えられた。しかし、その実績は上がっていない…土地の保有権申請の登録システムがきわめて貧弱であることを認めている
 この場合の論点は3 つあるだろう。①共有地の配分という慣行への親しみ、②申請書類の事務処理能力、③非識字者や社会的弱者に対する権利侵害である。第1 の共有地の配分についてはすでに述べたが、この慣行は個人分割を前提とする土地保有権になじまない。また技術的にも、境界の確定や個人への割付が利害と関連して大変難しい。あるいは、農地、放牧地、薪炭林用地などの区分も問題となりうる… 
 最大の課題は3 番目の問題である。いくら、土地法が小農民の土地アクセスに対する伝統的権利を認定すると言っても、彼ら/彼女らが必ずしもその存在を知っているとは限らないし、知っていても申請手続きを進める術を持つとは限らない。また、土地法が伝統的権威の介入を認めているので、女性などの社会的弱者が不利に扱われる危険性もないわけではない。さらに、民間資本などによる土地購入が、従前の耕作者である小農民を追い出しているケースも散見される。そこで、少なくとも農地保有権確保のための識字教育やその仕組みの広報キャンペーンが、早急に実践されるべきである。

<=当然、事業立案前にこの報告書を読んで、委員の先生方に色々ヒアリングして事業決定に至っていると思いますが、あるいは違うのでしょうか?是非そこら辺は重要なので知りたいところです。

<=以上、青西さんのものを読んだ上で、私の英語論文読む方が分かりやすいかもしれません。ニュアンスは異なっていますが、問題の根っこは大体同じかと思われます。プロサバンナ万歳の皆さんも、是非両方をご一読の上ご感想をお寄せください!

3.私の論考の手法についての補足&目次(日本語)
ちなみに、私はこの論文を研究者として書きました。私が自分にいつも課している手法は、「実証」です。これは学生にも要求していることですし、だから自分にも要求しています。

つまり、「結論先にありきではなく、あくまでも資料に語らせる」という歴史研究の手法を取りました。批判のために根拠をひっぱってきたのではありません。

第一節では、見て分かる通り、あくまでも一次資料分析、つまりJICAや日本政府、その関係者らが出している一つずつの文書や発表、報道を詳しく、丹念に読み込み、紹介しています。文字数の関係から、多くのものは短縮していますが、原典に当たることができるように明確に示しています。

まずは、このような資料分析から浮かび上がってきた特徴を、言説分析ということで整理して、言説の推移を表にまとめています。なぜなら、関係者の言動が、現場を知ってしまったこと、あるいは批判が生じたため、大幅に変わってきたというのが、このプロサバンナ事業の大きな特徴だからです。

以上の丹念な一次資料の紹介、整理の上で、第二節で行ったことが、①市民社会、②北部地域の生態・人びと、③先行事例(ブラジル、アフリカ)との比較の視点を入れての分析です。

詳細は英語の論文をご覧ください。日本語論文は出版したらまた紹介します。章立てだけ紹介しておきますね。しかし他の論文の2倍の分量…ちゃんと載せてもらえると良いのですが。しかし、ただ削れず長いのではありません!以上の通り、事業主へのリスペクトから彼らの言葉の一つ一つをなるべく正当に示し、丁寧に議論を掬い取るために、そしてその結果として浮かび上がってきたことを根拠をもって示すために、必要不可欠な手順でした。

1. はじめに~世界、アフリカ、日本の構造変化と開発・援助1
2.プロサバンナ事業にみられる言説と課題3
(1)プロサバンナの概要と背景3
(2)プロサバンナをめぐる言説の推移と時代区分5
(3)プロサバンナをめぐる各言説の特徴と背景7
 (a)「日本の対ブラジル協力(セラード開発)の成功」言説と背景7
 (b)「日伯連携による南南/三角協力」言説と背景8
 (c)「セラードの成功をアフリカへ(プロサバンナ)」言説と背景9
 (d)「世界食料安全保障をアフリカ(熱帯サバンナ)で解消」言説と背景9
 (e)「モザンビーク農業停滞」言説と背景10
 (f)「モザンビーク北部未開墾」言説と背景10
 (g)「軌道修正 開発モデル策定重視」言説と背景12
 (h)「市場原理下小農・大農共存(儲かる農業)」言説と背景12
 (i)「国際規範」言説とその背景13
 (j)「三者win-win・投資」言説と背景13
 (k)「日本・ブラジル企業商機」言説・背景14
 (l)「土地争奪・対中国競争」言説と背景15
 (m)「JICAプロジェクト型援助回帰と投資両立路線」言説と背景16
2.内発的発展論に基づく考察17
(1)モザンビーク市民社会の声からの考察17
(2)北部地域の実態、人びとの営みからの考察19
(3)ブラジル並びにアフリカの他の先行地域からの考察23
 (a)ブラジルの事例23
 (b)アフリカでの先行事例24
4.おわりに27
[PR]
by africa_class | 2013-01-29 23:58 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ

援助とKAIZEN:プロサバンナで何故セラード開発が問題にされるかの一考察を通して

続き。これで終わりです。ちょっと前にTWにちらりと書いたカイゼンKAIZENの話をするのにとても良い案件なので事例として取り上げます。

また同日に書いた以下の順にお読みの上、この投稿を読まれる方が分かりやすいと思います。
■「モザンビーク市民社会2組織がプロサバンナ批判声明と外務省・JICAの現地社会理解のギャップに関する考察」
http://afriqclass.exblog.jp/17210917/
■「プロサバンナについての外務省との第一回意見交換会・議案書(全文)」
http://afriqclass.exblog.jp/17211715/
■これらのプロサバンナについての投稿はすべて以下の引き出しに。
http://afriqclass.exblog.jp/i38


1. 何故プロサバンナを批判するときに市民社会はブラジル・セラードの話をするのか?
2. KAIZENカイゼンとは何か?~「あるのは成功だけ」を考察する


1. 何故プロサバンナを批判するときに市民社会はブラジル・セラードの話をするのか?
なぜ、繰り返しモザンビークで行われるプロサバンナを語る時にブラジル・セラードの話になるのか?それは簡単。

JICAも日本政府もモザンビーク政府も、「セラードの成功」がプロサバンナのベースだといっているからです。ずっとそうやって宣伝してきました。そして今日の外務省のプレゼンも半分がセラード開発の成功に関するものでした。なのに、「違いも大きい」と指摘する苦しい展開でしたねえ・・・。段々現地のことが分かれば分かるほど違いに気づかれたのでしょう。なんか順序が限りなく逆だと思うのですが・・・。

アフリカはアフリカです。
 ブラジルではありません。
モザンビーク北部はモザンビーク北部です。
 セラードではりません。
ナンプーラ州はナンプーラ州です。
 ミナス・ジェライス州ではありません。
モナポはモナポであり、同じ州にあってもマレマと違います。
 パラカトゥやアルトパラナイバではありません。
マレマでも道路沿いと道路沿いでない所は違います。
各郡内でも集落によって違います。
なんといっても、この地域は反政府勢力が強いところです。
村長と呼ばれる人も2名いることが多々です。

つまり、「セラード」を大上段に構えることそのものが、オカシナことなのです。
まず誤解と混乱を生み出します。

なぜモザンビーク北部を語るのに、何故ブラジル・セラードが語られなければならないのか?
それは驕りがあるからです。
そして、モザンビーク北部を知らないからです。
モザンビーク北部に生きる人びとのことも、日々の努力も知らないからです。
知らないで、巨大プロジェクトを立ち上げた。
机上のデザインだけで。
BIGな人たちのBIGな野心、功名心。
でも現場を知らない。
今あわてて知るために沢山の税金が投入されています。
本末転倒な帳尻合わせのために。

アフリカでJICAは30年以上の農村開発事業を行ってきました。
「農業」開発ではなく「農村」開発です。
そこに単位当たり収量の話ばかりする農業生産性一本主義とは異なるミソがあるのです。これは昨日も前回も津山さんが指摘した点です。「小農の食料」を考えるのであれば、「単位当たり収量」「農業」だけみてもダメ、ダメなだけでなく彼らの日々の努力を台無しにすることにあるでしょう。

このことを、JICAでもコンサルでも研究者でも、「アフリカの農『村』開発」に関わってきた人々なら知っているはずです。だから、「セラードをモデルに」と打ち上げられる事業に、よく彼らが同意しているな・・・と不思議に思うのです。今皆さんが、アフリカ農民のために立ち上がらないとしたら、現場でやる小さな努力の一つ一つは、今後10年以内に無駄になっていくでしょう。それぐらい市場経済の圧力は凄まじいことは、現場で感じられませんか?アフリカ農民と共に歩んできた皆さん、農民の権利を守る術は外堀がうまっていっています。それは単にグローバル化、企業行為、当該国政府だけでなく、世銀の行動指針や、それを主導した日本政府、我々の政府、そして今回のプロサバンナみたいな事業によって、推進されていくのです。それでいいのでしょうか?

今回、相手にしているのはアフリカのモザンビークの最も小農の活動が盛んな北部です。なぜ、その人びとの貧困・食料・農業・未来の話を、ブラジルをメインにやってきた人たちがするのか?なぜアグリビジネスが農民より先にパートナーになっているのか?なぜブラジルのアグリビジネスの先兵対として、日本の援助が使われなければならないのか?JICAは誰の権利と利益を守りたいのか?JICAにモザンビーク北部に知見がないとしても、例えばタンザニアやザンビアの小農と非常に似通った生活がいとなまれています。両国の農村開発については、JICAや日本の専門家にそれなりの蓄積があるはずです。

なぜ彼らの経験から立ち上げられず(それでも問題が残るとしても)、ブラジル・セラードなのか?ブラジルしか知らない人たちが常に前に出てくるのか?これは、アフリカ農村開発に関わってきた日本の市民社会の側からの疑問でもあります。

さて、もう少し深い分析をしましょう。
さっきの吉田昌夫先生の議定書の最後の部分からヒントを得たいと思います。原文は先の投稿を。
http://afriqclass.exblog.jp/17211715/
「現地の農民組織をはじめとする市民社会の危惧の背景には、同事業がまさに「手本」とするブラジルのセラード開発の「負の遺産」があります。日本ではセラードの成功面ばかりが宣伝されますが、「アグリビジネスとしての成功」の陰で、依然ブラジル国民の三分の一(5400万人)が栄養不良状態にあります(IBGE2010)。また「不毛で無人の大地を農地に変貌した」とされますが、先住民が土地を失い、得た仕事も「半奴隷的労働」と呼ばれる非正規のものが多く、食料不足に陥り、激しい土地闘争 が繰り広げられたことについて、また遺伝子組み換え種(GMO)が圧倒したことについて、モザンビークではよく知られています 。これらの点について、JICAが言及することはありませんが、このような現象について認識はあるでしょうか。どのように理解され、同じ事が繰り返されないための方策をどう考えているのでしょうか。 」

まさにその点にこそ、ブラジル、モザンビーク、世界の市民社会の不安があるのですが、どうやらこの点に関して、話がかみ合わないので、今日の議論を題材に正面から取り上げてみましょう。

なお、依拠するのはブラジル人研究者たちの研究蓄積で、その一覧は次の通り(Pessoa(1988); Mendonça(2009);Inocêncio (2010);Clementes & Fernandes (2012)。詳細は前の投稿を探してください~。

(なお、必ず最後の地図をご覧ください。80年代JICAがセラード事業を開始して数年後に対象州であるミナス・ジェライス州で起きた土地紛争の地図です。当時の現地の新聞に掲載されたものです。)

今日、JICA「セラード実施者&プロサバンナ立案者」の本郷さんは、「セラードは成功した。その証拠は自分の本にすべて書いた。本を読んでどこが問題か指摘すべき」とされましたが、その言葉・表現そのものに問題がすべて埋め込まれているなあ・・・人の無意識とは恐ろしいなあ~と変に納得してしまいました。前回、明治学院大学での公開講演会の際も、同じことをおっしゃっていました。

でも、今日私が最後のまとめで申し上げた通り、そしてご著書購入・読ませていただいていますが、この間問題にされていることは、「JICAや本郷さんたちの本や主張に書かれていないこと」についてなのです。

●森林破壊の負の影響について。
●軍事独裁政権の只中で合意され、調印され、実施されたこと。
●だからこそ、セラード地域に元々暮らしていた住民、しかも先住民や奴隷由来の元々脆弱性を抱え、権力によって周縁化されやすい人びとから土地を奪い、彼らが食べていけなくなり、「半奴隷労働」を余儀なくし、流出したこと。
●これに立ち向かうために、1981年2000を超える農家が立ち上がって、その後土地紛争が頻発したこと。その数、軍事独裁の抑圧下にもかかわらず83年に56件、85年に63件もの数に。
●世界最大の農業生産輸出国となったブラジルで、今日でも依然国民の3分の1が栄養不良なこと。その数5,400万人。

これらを、ブラジルやモザンビークの市民社会、世界、学術関係者も問題視しているのですが、そのことについてどうお考えなのかな~と思うほどに、「成功したんです。私の本に書いています」と繰り返される。なのでますます迷宮入りに。。。

では、なぜこれらの人びとは、マクロ的な「躍進」に比して、以上を問題にするか?これをやっぱり、丁寧に書いておいた方がよさそうですね。

それは、これらの人びとが、数字・アグリビジネスを相手にしているのではないからです。

彼らが心を砕いているのは、「セラード開発の対象となった地域の住民、とりわけ脆弱性を抱え周縁化されやすい人々<貧農・小農/先住民・奴隷由来の人々>」になのです。

圧倒的な権力関係の中で(軍事政権下)、抑圧され数少ない権利を剥奪された人びとにこそ、自分のポジションを置こうという研究者の意気込みと気概を、私はこれらの人たちの著作から感じます。特に、1988年という軍事政権から民政への移行期で、マダマダ政府に批判的な事を述べることが難しかった時代に、現地調査とインタビュー(入植者も先住民も含む)を積み重ねて、超大作博士論文にまとめ、政府と日本自慢の政策(セラード開発)に真正面から挑戦したVera Lucia Pessoaの凄さに、私は心から深い感動を覚えたのでした。その3年後に、同地をのほほーんと留学していた私・・・。恥ずかしい。

Pessoa, Vera Lúcia Salazar (1988), Acção do Estado e as Transformação Agrárias no Cerrado das Zonas de Paracatu e Alto Paranaíba; MG, dissertaion submitted to the Universidade Estadual Paulista.
http://www.lagea.ig.ufu.br/biblioteca/teses/docentes/tese_pessoa_v_l_s.pdf
<=ポルトガル語ですが一読の価値あり。

本来、研究者はこうでなくてはなりません。「御用学者」であってはいけないのです。「弱い側の声に耳を澄ませる」・・・これを社会で誰かがやらないとしたら、それを身分がある程度守られている大学人や研究者がしないとしたら、メディアがしないとしたら、誰がやるのでしょうか?権力構造がどんどん強められる方向で、弱いモノは「自己責任」「怠惰」というレッテル貼りで権利を奪われ続ける社会と世界・・・・にこれ以上加担していいのでしょうか?福島原発事故が発生して、そのことが露呈し、問われてきました。そこから日本の我々が今学ばないとしたら、いつ学ぶのでしょうか?

権力と既得権益は人びとを犠牲にします。その現実を直視せず、「長きに巻かれる」「事なかれ主義で生き延びる」「批判は怖い・みっともない」・・・という論理が社会全体以前に研究者やNGOやメディアに蔓延したら、「いつか来た道」になるでしょう。

でも、そもそも、以上のように「弱きものに寄り添う」ことは、本来開発援助の「当たり前」ではなかったの????という疑問もわきます。私の母を含め、多くの納税者は「可哀想な人を助ける」ために援助は使われていると思いこんでいます。そしてそう思い込ませるような広報をよく見かけます

残念ながら、冷戦期はそうではありませんでした。先日の立教大学でのセミナーでもはっきりした通り。90年代に反省があり、「人間中心の開発」「人間の安全保障」などと言われた時代もありましたが、昨今の「経済成長至上主義」の言説の中で、どこかに葬り去られたご様子で・・・。

一応、「新JICA」のミッションにかろうじて「弱い立場」という言葉は残ってはいますが、「新JICAは、社会的に弱い立場にある人々をさまざまな脅威から保護するために、社会・組織の能力強化と、人々自身の脅威に対処する力の向上を支援します。」
http://www.jica.go.jp/about/vision/index.html

何せビジョンが「すべての人々が恩恵を受ける、ダイナミックな開発を進めます」・・・・つまり、「ごく一部の裕福層だって『すべての人びと』だから支援対象になる」という論理なのでしょうか?「小農とアグリビジネスの共存」もこの一環のような気がしてならないのは、私だけ?JBICとくっついたからなんでしょうかねえ・・・。

この地図をしっかり見て下さい。目に焼き付けましょう。
ブラジル・セラードでJICAのセラード開発が実施された数年後から起こり始めた、先住民らの土地闘争の件数を示したものです。Folha de São Paulo(朝日新聞みたいなもの)の記事の一部です。点で表されているのが、土地を奪われた人びとの土地闘争を示しています。軍事独裁政権のまっただ中での、これらの命がけの抗議運動(50-60件)・・・・その数2000農家を超えたネットワーク・・・点と地図の向こうに、また「大成功援助」のスローガンの向こう側に、このような人びとの存在や想いや命や生活があったことを、私たちは忘れるべきではないと思います。海の向こうで起こったこのような出来事を、皆さんが知らないとしたら、それはJICAや日本政府だけでなく、メディアや私たち研究者の怠慢です。この場を借りて自分の力不足を、私がお世話になったミナスジェライス州の皆さんにお詫びしたいと思います。
a0133563_817256.jpg


なお、既にモザンビーク北部では、ブラジルの鉱山企業の進出に対して激しい住民抗議が起きています。この鉱山会社にも、日本のナカラ回廊プロジェクトは関与しています。その原型は、「セラード開発の両輪の輪といわれた大カラジャス計画」にあります。「軍事独裁政権下のブラジル中部内陸メガ農業開発+大鉱山開発=モザンビーク北部内陸」の奇妙な符号を、見逃してはいけないのです。(これについてはまた今度)

2. KAIZENカイゼンとは何か?~「あるのは成功だけ」を考察する
しかし、冒頭の本郷さんのご主張「成功しかない。その根拠は自著にある」には論理的にいって3点の問題があると考えられます。(学生の皆さんはこれ以上は読まず、ちょと立ち止まって考えてみましょう。リテラシーチェック)

(1)10歩譲って「ある側面で成功した」からといって、「問題がない」とはいえない。故に、「問題は何か」について実施者として認識し、必要に応じて「過去の痛い教訓」として学習する必要があるが、「問題は一つもない」という理解を押し通すことは「過去からの教訓→現在・未来へのより良い行動」の機会ゼロにしてしまう。
(2)「JICAミッションの「社会的に弱い立場にある人びとの様々な脅威からの保護」という観点からみると、援助が引き起こした「脅威」を再検証する必要があると思われる。しかし、「成功一辺倒」のまま。
(3)事業実施者が、実施した案件について、「成功」と評価するものを、「根拠」とするのは・・・・・・・まあこれ以上書くまでもないでしょう。

私は、家業からも(カイゼン経営コンサルティング)、日本の製造業の「強み」はカイゼンマインドだと思ってきました。とはいえ、専門家らによるとカイゼンやってるといえるのは全日本の5%ぐらいの会社だけで、しかもこれらの会社の中でも、製造現場ではカイゼンがされていても、経営陣がカイゼンマインドを持てず、自分の昇進や組織の論理によって、失敗を隠す傾向が多いと聞いてきました。製造現場でのカイゼンに極めて優れていたトヨタの北米での大失態は、まさにこれを象徴していると言われてきました。またカイゼン・コンサルタントは家の中ではカイゼンにほど遠い存在だそうです。本当に~。

もはや英語KAIZENになったこのカイゼン。一体なんでしょうか?
DNAともマインドとも文化とか精神とも呼ばれます。
「学習する組織 Learning Organisation」にも通じるものです。

私の理解では、その要はたった一つ。
「失敗から学ぶ」
それ以上でなく、それ以下でもない。
「人は過ちを犯す・・・その前提で仕組化する」

これを製造現場でどう実践するのか?
トヨタのラインでは、何か問題が起こるとブザーが鳴ります。
その時、必ずラインは止まります。どんな忙しくても、納期間近でも止めます。
ブザーが鳴ったところに、「問題分析チーム」的な人たちが駆けつけます。

そして問題を起こした人を外し、問題を讃えます!
問題を起こした人はそれを責められません。
と同時に、問題分析チームには入れないし、影響を及ぼせません。
なぜなら、問題を起こした当事者は、それを認めることが難しいからです。

その「感情」こそが、真に問題を分析し、二度と同じ問題が発生しないように予防するという、カイゼンの肝にとって邪魔なものであり、阻害要因です。だから、「問題を起こした人を責めない」「その代り問題原因発見に最大限に協力せねばならず、かつチームは徹底的に多角度から問題を追及します」。

なぜ問題を讃えるのか?
問題がない社会も仕組も人もおらず、特に人間は過ちを犯す生き物だからです。となれば、問題が今ここでこういう形で起こったために、将来のもっと大きな問題を回避できた、ありがとう!となるのです。

この根底には、二つの一見相反する精神があると思います。
(1)問題は起こるモノだ。
(2)だが問題をゼロにする究極の探究を続けるんだ。

つまり、
■「問題をゼロにする」というビジョンを皆が目指すこと
■そのために問題から学ぶことを仕組化すること
■ゼロポイントがあり得ないとしても、それを続けていくこと意味(「継続は力なり」)

それが、カイゼンなのです。


あ、無料で教えてしまった・・・。(これ高いんです)
今、日本のあらゆる組織に必要なのは以上のことです。
せっかく日本で始まり、世界に誇れるものとして普及したカイゼン。

そのインパクトが対象地域や国の人びとに大きな援助だからこそ、採り入れてほしい。
というのは夢物語かな?
でも、結局繰り返し・・・なんですよね。
「継続は力なり」
諦めるのは簡単なので、皆さんの中のカイゼンDNAが目覚める、あるいは創造されることを祈りつつ・・・。
[PR]
by africa_class | 2013-01-25 21:04 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ

プロサバンナについての外務省との第一回意見交換会・議案書(全文)

先に以下をお読みください。
■「モザンビーク市民社会2組織がプロサバンナ批判声明と外務省・JICAの現地社会理解のギャップに関する考察」
http://afriqclass.exblog.jp/17210917/
■プロサバンナ問題については
→http://afriqclass.exblog.jp/i38

今日の外務省でのNGO・外務省定期協議会「第一回プロサバンナに関する外務省との意見交換会」で配布され、冒頭に読み上げられた吉田昌夫先生の議案書です。何故このブログに????という気がしてなりませんが、残念ながら他にサイトがないのでアップしておきます。誰かポータル作ってくれるといいんですが・・・何せ沢山のNGO・市民社会の人たちが関わっている案件なもんで。

議論がまだまだ必要な部分が多いですねえ~。でも、外務省・JICAの一部の人の中には理解の光のようなものがみえてきた気がします!なので、メゲズにこのブログでも取り上げつづけます。

なお、すっごく重要な点を書いたのですが、重すぎて貼れず別の投稿にします。
■「援助とKAIZEN:プロサバンナで何故セラード開発が問題にされるかの一考察を通して」
http://afriqclass.exblog.jp/17211838/
そして、NGOや外務省の皆さんが苦労されて続けてこられた「NGO外務省定期協議会」の役割の大きさ、重さを本当に感じます。関係者の皆さん、本当にお疲れ様です。

=============================
NGO外務省定期協議会(1月25日)
第一回ProSAVANA事業に関する外務省との意見交換会 
議題説明
=============================

                          
アフリカ日本協議会
吉田昌夫

本会議は、日本とブラジルが共同してアフリカのモザンビーク北部における巨大開発計画として推進しようとしている「日伯モ・三角協力によるモザンビーク熱帯サバンナ農業開発(通称プロサバンナ事業)」について、問題点の指摘と現地農民組織の抗議とを取り上げ、NGOが外務省と対話をするため設定されています。

本事業には様々な問題が見受けられますが、主たる課題は次の3点です。これらは現地の具体的状況から、多くの派生する問題も内包する、プロサバンナ問題の核心となる議題です。
1.農民主権(住民主権)の問題
2.土地問題(土地収奪)
3.食料安全保障の問題
いずれも相互に関連づけられる問題なので、関連づけて問題提起を行います。なお、これらの問いは、事前に提出した質問を踏まえてのものです。

問題提起
現地の農民組織の「モザンビーク全国農民連盟(UNAC)」は、2012年10月11日の声明で、「我々農民は、透明性が低く、プロセスのすべてにおいて市民社会組織、とくに農民組織を排除することに特徴づけられるモザンビークでのプロサバンナの立案と実施の手法を非難する」と述べています。モザンビークの食料主権や土地問題に取り組む35団体で構成される「食料主権ネットワーク(ROSA)」も、「UNACの声明を全面的に支持する」と述べております。

さて、周知の通り、土地問題に関する世界の専門家ネットワークであるLAND MATRIXによると、土地取引件数の面で、モザンビークは世界第二位の位置を占めています 。この傾向は2007年の食料価格高騰以来のものですが、当事業立案者らは、過去3年~5年内のモザンビーク並びにサハラ以南アフリカにおける外資による土地収用の及ぼす影響と課題に関して如何に理解し、本事業を立案したのでしょうか?お教え下さい。

また、モザンビークでは、現地市民社会は早くから土地問題に関心を寄せ、農民主権の保障と実現のために、時に危険を抱えながら活動してきています。日本政府が1996年に打ち上げた「民主的発展のためのパートナーシップ(PDD) 」とも関係しますが、このような市民社会における議論やキャンペーンは、立案時に把握されていたのでしょうか。今、把握していることは何でしょうか。どのような団体が何を主張しているのでしょうか

UNACやその他の団体の声明や賛同からは、プロサバンナ事業が、以上に明らかなグローバル、リージョナル、ナショナルな状況を無視した事業立案だったと考えられていることが分かりますが、そのことについてどう考え、それをどう乗り越える予定かお聞かせ下さい

また、声明が出された後UNACとは、その後どのような対話を行ってきたのかについてもお教え下さい 。市民社会の多くが求める意思決定プロセスへの参加についての考えと、その可能性についても宜しくお願いします。 

この地域の住民である小農らは、伝統的に自己の農地、林地、住宅など生活に必要な資源を保有する権利を持ち、現在使用していなくても、今後の利用に必要な土地、林地、水源地などを、保有し、利用するアクセス権を有しています。これらがなければ小農が生活していくことは不可能であることは、ご承知の通りです 。そのため、アフリカの多くの国で、そこに暮らす農民の土地に関する権利を認めているわけですが、「モザンビーク土地法」に基づく農民の権利に関する理解はどのようなものでしょうか

この点について質問するのは、日本のNGO・「No to land grab Japan」の公開質問状へのJICAの返答には、「国有地」「政府が定めた土地利用制度」としか書かれず、農民の権利について一言も言及がありませんが、その理由は何でしょうか

これまでの議論では、当事業は「計画段階だ」と繰り返されることが多いのですが、他方で、2011年、2012年の合同ミッションに、入植や土地収用を希望するブラジル・アグリビジネス関係者が参加している理由は何ですか。またこれら企業の選定基準、選定プロセスはどのようなもので、選定者は誰ですか

当事業の関連で「住民移転」が予定されているようですが、その可能性はあるのでしょうか?また、その際「環境影響評価を実施する」ようですが、その時期と実施概要はどのようなものになるのでしょうか。また、森林伐採の可能性はどのようなものでしょうか。当然ながら、「環境影響評価」はマスタープラン作成前の実施と理解していますが、その理解で宜しいでしょうか。

次に農民の生活へのインパクトに参ります。
以上に示される現状において、過去3年~5年内のモザンビークにおける農業投資が現地農民に及ぼしている影響についての分析と理解についてお聞きしたいと思います。つまり、モザンビークだけでなく、アフリカ中で、外資による農業投資の現地農民に及ぼす負の影響が報告されていますが、このような現状と課題について何をどう把握した上で、事業立案に至ったのでしょうか

2012年11月15日のJICA担当者による報告の際、「特定農民組織と連携しているから農民組織と連携している」とのことでしたが、現地農民組織に関する具体的な情報、パートナーとして選定する(選定しない)プロセス、選定の理由を明らかにして下さい

過去においても現在も、モザンビーク北部小農は、国内の農業・食料生産の大きな部分を占める生産をあげており、中心的な役割を占めています。それは豊かな気候だけでなく、土壌、水、労働力によるところが多いわけですが、そのように有限な資源を、アグリビジネスと「共存」させるというのは矛盾があると考えます。

すでに報道などでは、ブラジルのアグリビジネスが土地収用を行い、輸出用作物生産のため、農業労働力として地域の小農を転向させる意向が述べられています。「異なる規模の農業の共存」との謳い文句が繰り返されますが、むしろ小農による食料生産手段、そのための資源へのアクセスが喪失させられるのではないでしょうか。

当事業ではモザンビーク内に並び世界の食料安全保障が目的に掲げられていますが、現在全人口の30%を超す人口が生存に必要な食料カロリーを摂取できない状態の国で、モザンビーク人の食料安全保障の問題をどのように位置づけているのでしょうか。

またアグリビジネスに開発を担わせるのは、GM(遺伝子組み換え品種)とバリューチェーンを巨大資本による導入にまかせることを促進することにならないでしょうか。外国企業が、農民の権利や食料安全保障に長年にわたり携わってきた現地農民組織より先に、この計画の初段階から調査に参加しているのはなぜでしょうか

最後に。以上の危惧は、日本の我々市民社会のものであるだけでなく、現地の市民社会が幅広く有しているものです。

そして補足になりますが、現地の農民組織をはじめとする市民社会の危惧の背景には、同事業がまさに「手本」とするブラジルのセラード開発の「負の遺産」があります。

日本ではセラードの成功面ばかりが宣伝されますが、「アグリビジネスとしての成功」の陰で、依然ブラジル国民の三分の一(5400万人)が栄養不良状態にあります(IBGE2010)。また「不毛で無人の大地を農地に変貌した」とされますが、先住民が土地を失い、得た仕事も「半奴隷的労働」と呼ばれる非正規のものが多く、食料不足に陥り、激しい土地闘争 が繰り広げられたことについて、また遺伝子組み換え種(GMO)が圧倒したことについて、モザンビークではよく知られています 。これらの点について、JICAが言及することはありませんが、このような現象について認識はあるでしょうか。どのように理解され、同じ事が繰り返されないための方策をどう考えているのでしょうか

注1. 土地取引面積の大きさにおいても第二位(*ただし報告されたものに限る) http://landportal.info/landmatrix/media/img/analytical-report.pdf
注2.外務省サイト(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/pdd/index.html)
注3. 2012年4月、11月に開催されたステークホルダー会合に参加した点については既に前回の定期協議会(2012年12月14日於外務省開催)で説明があったので、それ以外の点についてお教え下さい。
注4. FAOガイドライン「土地、漁業、森林の保有の権利に関する任意自発的指針」(2012年5月策定)
(NGO質問)「5. 本計画においてモザンビーク以外の国からの公的あるいは民間資本による農地取得(利用あるいは占有)は予定されていますか?(1) 権利取得が有り得る場合、対象となる土地の現在の権利状況、利用状況はどのようになっているでしょうか。」(JICA回答)「現時点では予定されておりません。同地域は国有地であり、モザンビーク政府が定めた土地利用制度に基づき、将来モザンビーク以外の国からの民間資本による農地利用の可能性があるものと考えます。」
(No to land grab Japanサイト http://landgrab-japan.blogspot.jp/2012/01/jica.html)
注5. セラード農業開発(PRODECER)導入後に生じた土地争議の分布図は右ページ。1981年に2,685農家が参加する土地闘争、83年に53、84年に65の土地争議が発生(Pessoa, 1988:181-182)
注6. Pessoa(1988); Mendonça(2009);Inocêncio (2010);Clementes & Fernandes (2012)

次の投稿へ
■援助とKAIZEN:プロサバンナで何故セラード開発が問題にされるかの一考察を通して
http://afriqclass.exblog.jp/17211838/
[PR]
by africa_class | 2013-01-25 20:35 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ

民主化とプロサバンナ問題:モザンビークCSOが批判声明と外務省・JICAの現地社会理解ギャップ考察

またこのネタですみません。初めてでプロサバンナ問題が何かわからん人は以下をどうぞ。→http://afriqclass.exblog.jp/i38 でもアルジェリア人質事件にも通じる、「アフリカの民主化と外部者の役割」の問題が、プロサバンナ問題にもみられると私は考えており、その点は本投稿の2.3.で示しています。とっても長いですが、最後までお読みいただけると腑に落ちると思います。(たぶん!)

本日、NGO外務省定期協議会から開始した第一回プロサバンナに関する外務省との意見交換会(2013年1月25日、於外務省)が終了。しかし、「モザンビーク北部の小農を支援したいのだ!」という想いはよくわかりましたが、「だからブラジル・セラードをアフリカに!」がますますオカシイ話だということがはっきりしましたねえ。ますます、あえて「セラード!」と打ち上げるから問題が大きく、そして複雑化するんですよね。そこらへんの話は「援助とKAIZEN:プロサバンナで何故セラード開発が問題にされるかの一考察を通して」に書きましたのでご笑覧を→http://afriqclass.exblog.jp/17211838/

 ここでは、来月下旬の来日をモザンビーク市民社会組織が予定しているので、モザンビーク市民社会に関する理解を深めてもらうために、 

1.プロサバンナ事業に批判声明を出している3団体の紹介
2.モザンビーク憲法と、日本政府・JICAの考える民主化についてのイニシアティブや報告書
3.モザンビーク市民社会組織2団体の声明の和訳最終版
(仮訳の間違いなどの修正をしたもの。そして本日の訳語についての議論の面白い点)
を紹介します。

何故1.をしなければならなのか。うーむ。モザンビークに在外公館やJICAがある以上、その説明は本来不要なはず。しかし、今日の意見交換会でも、JICAや外務省が、繰り返し「1団体」「一部の団体」と現地市民社会の公的な声明を矮小化する発言が繰り返されたため、どうも現地市民社会についてまったくご理解がないようなので紹介しなければならないようです。
 そもそもUNACを「1団体」「代表性」がない・・・というには相当な無理があるのですが(2200の協会や団体の連合組織!)。UNACも含め、これらの団体は、現地だけでなく国際的にも高く評価されている団体であり、かつ、土地や農民・住民主権の問題に長らく関わってきた団体です。つまり、今問題になっているプロサバンナ事業の課題を深く学び、課題を乗り越えるためには丁寧にその意見を聞き、相談しながら物事を進めていかねばならないはずですが??
 モザンビーク政治の現状を知れば、モザンビーク人の主権、社会の未来の話をしているときに、このような命がけで市民社会組織の存在や活動を軽視するような発言を公的にされることについて、私などはとても違和感を感じます。そのことそのものが、同国の市民社会の強化、ひいては政治の自由や民主化を危うくするのだということについて、今一度ご自覚いただきたいなあと思います。この点については、2.で書きます。それにしても、もしその場にモザンビーク市民社会の誰かがいれば、それがどんな団体であろうと不快だったことと思います。

1.プロサバンナ批判声明を出したモザンビーク市民社会組織
■UNAC(全国農民連盟)は、
1987年に設立された小農による運動体であり、モザンビーク政府によってパートナーとして認識され、農民にとっては全国レベルで自らの利害を代表する団体として認識されている。86,000名以上の個人会員、2,200の協会および共同組合、83つの郡レベルの連盟、州レベルでは7つの連盟と4つの支部を擁している。

<=つまり凄く誤解というか矮小化があるのですが、UNAC=1団体と呼ぶとあまりにオカシイことなのですが、もしかしてJICAの皆さんたちですら、未だにそういう認識なのでしょうか?全国2200協会を束ねている全国組織です。UNAC以上に正統性/正当性を有した農民組織の連合体があるのであれば是非逆に私の勉強不足だと思うので教えてほしいなあと思います。

■Justiça Ambiental(JA)は、
モザンビーク人自身による主体的な環境保護団体として、同国内の様々な環境問題に取り組み、世界的に高く評価されている団体です。土地問題にも早くから取り組んでおり、成果の一つとして以下の報告書をUNACと発表しています。
Justiça Ambiental & UNAC. (2011). Lords of the land - preliminary analysis of the phenomenon of landgrabbing in Mozambique. Maputo, Mozambique.
→http://www.open.ac.uk/technology/mozambique/pics/d131619.pdf

特に、「ダム問題」「違法伐採問題」では、身の危険を顧みず重要な役割を果たしてきました。Joseph Hanlonに並び、国際的なモザンビーク研究の第一人者であるAllen Isaacmanとも連携し、近々モザンビークの開発言説に関する本が出版される予定です。

違法伐採問題については、日本のTBSのNEWS23での特集番組(筑紫哲也さの最後の番組)の取材に協力しています。
「変貌のモザンビーク~昇龍開発」
→http://www.tbs.co.jp/houtama/last/071118.html

JAには、JICAとの連携実績もあります。TICAD IVに向けたアフリカ・日本市民社会の政策作りにおいても、環境担当NGOとして重要な役割を果たしました(http://www.ticad-csf.net/blog/AAngo/2007/09/ngo.html)。この政策ワークショップは、JICAの受託事業「アフリカ・アジアNGOネットワーキング事業」として行われ、JICAでも広く広報されています→http://www.jica.go.jp/press/archives/jica/2007/071015.html

■FoEモザンビークは、
日本にも組織のある(FoEジャパンhttp://www.foejapan.org)、世界環境組織です。特に、長らく土地奪取、住民移転、森林破壊といった権利はく奪の問題に取り組み、2007-8年の食料価格高騰以来の世界的なLand Rush/Grabについてとても詳しい報告書などを沢山出しております。特に、昨年発表されたウガンダにおけるパームオイル会社の農業投資とそれによる土地収奪についての報告書は高く評価され、The Guardian(英紙)などに引用されています。
→FOEI (2012) Land, life and justice: How land grabbing in Uganda is affecting the environment, livelihoods and food sovereignty of communities, FOEI.
http://www.foei.org/en/resources/publications/pdfs/2012/land-life-justice/view

2.モザンビーク憲法と、日本政府・JICAの考える民主化についてのイニシアティブや報告書
下記のJA&FOEモザンビークの声明でも指摘されている、モザンビーク国憲法第11条「基本的目的」。残念ながら、出席された外務省やJICAの皆さんの誰もご存知ではありませんでした。前回NGO外務省定期協議会でも、「モザンビーク政府とやっているから」「要請主義だから」「政府が何故市民社会とやらねばならないのか」等の発言がありましたが、まだ冷戦的な思考が根強いのですね・・・。しかし、外務省もJICAも1996年のリオンサミット以来、民主化支援、市民社会強化の重要性について高らかにミッションとして打ち出しています。

●外務省は1996年に「民主的発展のためのパートナーシップPDD」を発表。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/pdd/index.html
そこに「市民社会の強化」が謳われています。
これは、同年にリオンサミットで「開発の停滞と貧困の根底には、民主主義やガバナンスの欠如がある」という日本を含めたG8諸国の理解を受けてのものでした。プロサバンナ事業の説明からは、「飢え・貧困は低投入低生産によるものだ、農業投資がないからだ」・・・・が繰り返されていますが、1996年と事情が変わったのでしょうか?日本政府自身がエンドース(承認)した声明だったんですが。

●また、JICAは、2002年の報告書「民主的な国づくりへの支援に向けて」で関連する部分の指摘としては以下の点があげられます。(なお、この報告書も「開発か」「民主化か」ということではダメだと書いてあります。今回のプロサバンナ事業を「農業開発」としてだけ括っている現状の関係者の議論の問題が逆に浮き彫りになりますね。おそらく、このインターナショナル、リージョナル、ナショナル、ローカル、権力関係の無視/軽視/無知こそが、問題の根幹なのだと思います。この論点は昨日投稿の小倉充夫先生の論考をご一読下さいhttp://afriqclass.exblog.jp/17202555/)

http://jica-ri.jica.go.jp/IFIC_and_JBICI-Studies/jica-ri/publication/archives/jica/field/2002_03.html
(JICA報告書 ポイント1)
①政治自由などの基本的人権の尊重
②政治参加が必要。
政治的権利は、受動的静態的な要件でしかなく不十分であり、能動的・動態的な政治参加が必要。
(JICA報告書 ポイント2)基本的要件の一つが、政治体制や政府の政策を批判しても迫害されないこと。
(JICA報告書 ポイント3)そして90年代までの課題と教訓として非常に良いことが書かれています。
「援助は、政府機構への支援のみでは不十分であり、国家と市民社会との関わり方を見極めた上で・・・・内発的な民主化推進母体となる民主化志向の市民組織が重要。援助の結果が・・・・対立を生まないように・・・」

現在、JICAは「現地の1農民組織と連携しているから問題なし」「プロジェクトに賛成している団体もある」といって、モザンビーク市民社会の分断を促進するような表現を繰り返し使っています。プロジェクトの正当化のためになされるこのような既成事実の積み上げは、現地社会、そしてモザンビークの民主主義、ガバナンスにどのようなインパクトを及ぼすのか、考えたことはあるのかなあ・・・ととても危惧しています

それでなくとも、今モザンビークでは現職大統領が憲法で禁じられる3選を目指して動いており、与党内部でも分裂傾向、最大野党党首で反政府武装組織として16年間激しい戦争を繰り広げたRENAMOが本拠地の中部に結集しています。そんな中、援助や外交がすべきことは、社会の分断ではないはず・・・だと思うですが。モザンビーク憲法に書かれる「国民統合」は未だ未だ大きな課題。そのつもりがなくても、「援助をエサ」とする住民分断はやめてほしいなあ、と切に願います。

これ、参加型開発の形骸化の中で繰り返し批判されている点なのですが・・・「参加型開発は、相当な注意がなければ、参加型という名の下に既存権力構造を強化する」

なお、繰り返しになりますが、プロサバンナがお手本とするセラード事業は、軍事独裁下のブラジルで合意、調印され、行われました。そして先住民たちは土地を奪われ、83年以降激しい土地紛争が各地で生じました。今回、プロサバンナ事業は、どのようなモザンビークの政治体制下で行われ、実施に移されているのでしょうか?2008年の選挙以来、国際的に問題視され始めたこの国の政治体制や政府の在り方、民主主義の停滞について、どの程度の理解があるのでしょうか?

そして、「資源の呪い」の兆候を見せ始めたこの国・社会とどうつきあっていくつもりなのでしょうか?何か中長期的な展望は御持ちなのでしょうか?アルジェリア人質事件から学ぶべき点はないのでしょうか?

そのような中で、「政府のプロジェクトに賛成する1組織」「小農の権利のために危惧を唱える組織」という形で現地の人びとを分断する行いをする、促進をする、表現をすることは、巨大な援助資金を供与する権力関係にあるドナーとしては問題だと考えるのは、私だけでしょうか?是非、熟考をお願いしたいと思います。

3.JAとFOEモザンビークによる声明
本日外務省に配られた仮訳との違いを挙げておきます。確認できればよかったのですが、昨夜遅くだったようなので今チェックしました。
(1)冒頭パラ
仮訳「日系ブラジル人による農業開発計画」
原文「日本ブラジル農業開発計画(um programa de desenvolvimento agrário Nipo-Brasileiro no Cerrado Brasil 」


この誤訳について今日面白いやり取りがありました。
時間がなかったのであえて指摘しませんでしたが、この「日系ブラジル人による農業開発計画」をJICA本郷さん(セラード事業担当・プロサバンナ立案者)が「これは間違った認識で、こんな間違ったことしか書けないNGOの声明は信用ならん」とおっしゃっていたのですが、ゴメンナサイ。これ私のチェック漏れの誤訳でした。しかし、本郷さんは知る人ぞ知るポルトガル語ご堪能者。配布資料には、以上の原文があったのですがお気づきではなかったようで?

 でも、これ単なる誤訳の問題ではないのです。そもそも、PROCEDER(日本ブラジル・セラード農業開発計画)のポルトガル語の正式名称はこれです→Programa de Cooperação Nipo-Brasileira para o Desenvolvimento dos Cerrados
 英語では、The Japan-Brazil Agricultural Development Cooperation Programなんですね。

 つまり、Japan-BrazilがNipo-Brasileiraとなっている。これはブラジルの文脈では確かに「日本・ブラジル」ですが、それ以外のポルトガル語圏諸国でそう読むのは厳しいですね。「日系ブラジル」と読まれておかしくない。ただし、ブラジルでも、Nipo-Brasileiroは、名詞としては「日系ブラジル人」を指しますが、形容詞で使ってもしばしば「日系ブラジル」と理解されることが多いです。
 当初、「日系ブラジル人移民とブラジルの土地」に関する戦前・戦後の苦悩については、また別の機会に書きます。不思議な奇遇(因縁?)ですが、ブラジルのスラム研究をしようと留学した私。セラード開発が行われたミナス・ジェライス州に留学したこと、そして米国研究者との共同研究の話があったことから、日系ブラジル人の戦前戦後の状態について現代史的な手法で文献・インタビュー調査し、卒業論文をまとめ、それが2004年に共著としてイリノイ大学出版から出ているのですが、20年近く前の自分の調査研究がアフリカに逃げたはずの私を追いかけてくるとは・・・。
 で本題。本日、本郷さん自身が述べたとおり、セラード事業は、ブラジル議会で、「PRODECER=日本・日系人の土地収奪、植民地主義支配」と糾弾されました。ご存知でしたか?関係悪化を懸念した日本政府は、日系人のアスペクトを小さくする努力をしていきました。その誤解の一つとして、「Nipo-Brasileira」という表現もあったわけです。なかなか面白い逸話ですね。

●仮訳・原文「外国人に対する土地の分配と」
→趣旨確認したところ、「外国人」は「外国からの移民とその子孫の入植者」の意味だそうです。
*実際、JICA2009年6月30日(http://www.jica.go.jp/story/interview/interview_75.html)には次のように書かれています「(本郷)開発モデルとして「組合主導入植方式によるフロンティア地帯での拠点開発事業」を導入したこと、ブラジル南部から日系やヨーロッパ系移民の優良農家が入植したこと(…)等が成功要因として挙げられると思います。 (インタビュー)そうしたセラードの開発経験が、ブラジルと日本によるアフリカ支援を支えるわけですね。」とおっしゃっているのです。

これも面白い論点で、今回も議論の中で指摘されましたが、何故かJICAが「地元農家の農業開発が成功した・・・・だからアフリカの地元農家もセラードをお手本とするプロサバンナが役立つ」的な発言な繰り返されるのですが、曲者は「農家」という表現。ブラジル地理学術界では、PRODECERによってセラードで大土地所有者となった人たちを「農家」とは呼びません

「家族経営農業」と言う場合は、セラードで昔から暮らし自給的暮らしをしていた先住民やキロンボ(奴隷出自の人びと)のことを指します。つまり、「貧農」「小農」「土地なし農」と呼ばれる人たちです。これらの人びとの土地が奪われ、JICAのいう「農家」、現地でいうところの「colonos=入植者」が入ってきたわけです。これらの人びとは、以上の通り、日系やヨーロッパ系でした。

ですから、今日も申し上げた通り、JICAがセラードの経験をモザンビーク北部で本気で生かしたいのであれば、そして彼らが今日も主張するようにモザンビーク北部農村の小農を応援したいのであれば、PRODECERでこれらの貧農・小農・土地なし農がどのような運命を辿ったのか・・・であって、彼らを周辺化してしまった「日系・ヨーロッパ系の南部からの入植者の成功」ではないいはずなのです。そして、彼らを「農家」と呼ぶのは止めましょう。プロサバンナの説明でも、繰り返し「小規模農家と中大規模農家の共存」と書かれていますが、セラードの事例ではあり得ない、権力関係と収奪を無視したオカシな話なのです。

<=そのことを繰り返し、繰り返し、モザンビークの市民社会、他ドナー、国際的な団体などは問題視しているのです。そろそろ理解いただけると良いなああ・・・。あるいは、確信犯的に「ブラジル入植者=農家/モザンビーク北部小農=農家」と言っているのだとしたら、かなりの・・・あくどさですねえ。そうでないと願いたいです。だから、今後は「セラード農家」「中大規模農家」という言葉をセラード/プロサバンナの文脈で使うのは止めましょうね。

それにしても、言葉とは、歴史の深みで考えると面白いですね。

●食糧→食料(穀物以外も入れているため)

==========================
プロサバナ計画に関する Justiça AmbientalおよびFOE モザンビークの立場
==========================
プロサバナは、プロデセール(PRODECER)、すなわち1970年代以降にブラジルのセラードにおいて行われた日本ブラジル農業開発計画に着想を得たものである。ブラジル、日本、モザンビークの各国政府によって成功例として引き合いに出されるプロデセールは、外国人(訳者注:ヨーロッパ系や日系移民とその子孫)に対する土地の分配と所有を促進し、その結果、ブラジルは海外において不当な手段で土地を奪う行為の熱心な促進者となった。

6500万人のブラジル人が食料危機に直面し、数百万人の人々が生存手段を保証する食料生産のために土地へのアクセスを求めるブラジルにおいて失敗した農業開発モデルを、ブラジルはプロサバナを通じてモザンビークに輸出しようとしている。この経験は、農民の生活森林、そして同国の生態系に及ぼしたインパクトと比較するとき、ブラジルのモデルにおける利益が無意味であることを示している。

プロサバナ計画は、「緑」という洗練された言葉によって巧みに装飾され、モザンビーク人および国際社会に「持続可能な農業開発」計画として提示されたが、同時にもたらされるであろう社会的かつ環境的インパクトの可能性は完全に除外された。しかしながら、この規模の開発計画は、共同体の再移転が必要となることが予測されるが、当事者である共同体がその事態について僅かにあるいは何も知らないことが懸念される。本件は、農民や現地の共同体を包摂することなく極めて高い次元で立案・決定されたものである。

日本は、プロサバナを通じて国外における安価な農産品の新たな供給源を確保しようとしている。その最終目的は日本や中国といったアジア市場への輸出である。
ブラジルは、プロサバナを関連生産者および起業の拡大、技術協力、そして格好の投資対象と見なしている。

そしてモザンビークにとっての利益は何であろうか。
本件の推進者たちにとって根本的な問題は、ナカラ回廊のほぼすべての土地が農民によって占有されているということである。同地域は国内でも最も人口が密集する地域である。つまりは肥沃な土地と十分な降雨が数百万人の農民が働き、豊富な食料を生産することを可能にしているのである。ナカラ回廊は同地域の穀倉地帯として知られ、北部諸州の住民らに食料を供給し、数百万世帯の生存を可能にしている。

プロサバナの正当化と意図は、土地の接収を促進し、その土地に依存する数百万の現地の農民を搾取することにある。プロサバナは、市民社会組織、なかでも全国農民連合(União Nacional de Camponeses: UNAC)によって既に議論され、否認された。UNACは1987年に設立された小農部門の農民による運動であり、モザンビーク政府によってパートナーとして認識され、農民にとっては全国レベルで自らの利害を代表する団体として認識されている。この25年間、UNACは土地と自然資源に対する農民の権利や、農業分野における公共政策をめぐる議論において農民組織の強化に必要不可欠な役割を果たしてきた。86,000名以上の個人会員、2,200の協会および共同組合、83つの郡レベルの連盟、州レベルでは7つの連盟と4つの支部を擁している。Justiça Ambientalはプロサバナ計画に対するUNACの反対声明を支持する。

Justiça AmbientalおよびFOEモザンビークは以下の点において、プロサバナ立案と実施の全ての過程を性急に非難する。
1.上意下達(トップダウン)式の政策の移入に基づき、公開されている情報は現在に至るまで不完全であり、不明瞭である。
2.本件は、「持続可能な農業開発」として暗示的に小農や農民組織を主な対象としているように思われるが、共同体の移住と土地の収奪が予測される。
3.ブラジル人農場経営者らの参入は、モザンビーク人農民を安価な労働力になり下がることを余儀なくする。
4.休耕地という土地利用の在り方に基づき、実際には利用可能な状態にない数百万ヘクタールもの土地を必要としている。
5.本件の立案と実施によって農民が受けられる恩恵は不明瞭である。
6.本件は、概して農民と地域社会の土地の接収を加速させる形で構想されている。
7.土地所有を危険に晒す状況を引き起こし、「土地利用に関する権利(Direito de Uso e Aproveitamento de Terra, DUAT)」に示された農民の諸権利を脅かすものである。
8.大規模な利害が絡み、汚職と利害対立を悪化を加速させる。
9.その生活を全面的に農業生産に委ねている多くの現地の共同体の不安定な生活条件を悪化させるものである。これらの共同体は、耕作すべき土地なくしては、生存のための代替手段もなく、その結果、本件は大規模な農村人口の流出を引き起こす可能性がある。
10.本件は、高度な機械化と、化学肥料や殺虫剤といった化学製品の過剰な使用が見込まれ、土壌と水質の汚染が予測される。
11.EmbrapaがMonsantoとの関係が予測されるにもかかわらず、遺伝子組み換え作物の使用の如何については決定的に透明性を欠いている。

我々は、モザンビーク国家が、モザンビーク共和国憲法第11条に明記された合意に基づき、その主権を全うし、国民の利益の擁護のために主導的役割を果たすことを要求する。

さらに、我々は、モザンビーク政府が、モザンビーク国民とりわけプロサバナに最も影響を受け、かつモザンビーク国民の大半を占める農民の希望、憂慮、そして必要性を考慮し、プロサバナの評価を見直すことを求める。既に提案された文脈において、プロサバナは、食料に対する主権、土地や水資源へのアクセス、そして数百万世帯のモザンビーク人の社会構造を危機に曝し、国民の未来を破壊するものである。

2013年1月 マプトにおいて

以上

次の投稿は以下へ。
■「プロサバンナについての外務省との第一回意見交換会・議案書(全文)」
http://afriqclass.exblog.jp/17211715/
[PR]
by africa_class | 2013-01-25 17:37 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ

グローバル土地収奪に関する国際会議@コーネル大学(2012・10)で #プロサバンナ 問題が議論

原稿を書きながら、リサーチで使った情報源はここにも掲載しておいた方が、皆さんの役に立つと思い、貼り付けておきます。ぜひ、アフリカの農業投資、土地問題、土地収奪に関する研究をしてくれる若い人の出現を願いつつ!(アフリカ文献を探すゼミ生たちには、「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」のに、矛盾していますね・・・!日本では誰も研究していないからなのです。だからこういう援助が出てくるのかも。学術界の層の薄さを救えるのは皆さんです。)

しかし、知らぬ間に、ついにグローバル問題として世界で語られてしまっている日本の援助(プロサバンナ事業、「アフリカ熱帯サバンナ地域の農業開発」)。哀しい。。。

同事業のJICAの説明
http://www.jica.go.jp/project/mozambique/001/activities/index.html
この事業に関する私の過去の投稿→http://afriqclass.exblog.jp/i38/

そして今見たら、英国のOPEN大学に土地収奪・プロサバンナ問題のポータルが出来ていました・・・。
http://www.open.ac.uk/technology/mozambique/

■■「グローバル土地収奪」第二回会議@コーネル大学(2012年10月17日~19日)
the International Conference on Global Land Grabbing II October 17‐19, 2012 Organized by the Land Deals Politics Initiative (LDPI) and hosted by the Department of Development Sociology at Cornell University, Ithaca, NY.
■同会議に関するレビュー
http://www.ids.ac.uk/news/land-grab-politics-debating-the-issues?em=NE
■FAOの行動原則 Voluntary Guidelines the Responsible Governance of Tenure of Land, Fisheries and Forests in the Context of National Food Security' (pdf).
http://www.fao.org/fileadmin/user_upload/nr/land_tenure/pdf/VG_en_Final_March_2012.pdf

<=これに関する国際NGO・GRAINの分析
http://www.grain.org/article/entries/4564-responsible-farmland-investing-current-efforts-to-regulate-land-grabs-will-make-things-worse

■同会議で発表された120本のペーパー(ダウンロード可能な分)
http://www.cornell-landproject.org/papers/

そして、このブログでも紹介している日本がブラジルでやった「農業開発の成功例!セラード開発をアフリカ、モザンビークの熱帯サバンナへ!」というJICA・ブラジルのプロサバンナ事業ProSAVANA の問題が、非常に的確にまとめられている論文が掲載されています。

「ブラジル、モザンビークにおける土地収奪、アグリビジネス、小農」
(エリザベス・アリス・クレメンツ&ベルナルド・マンカノ・フェルナンデス)
"Land Grabbing,Agribusiness and the Peasantry in Brazil and Mozambique"
By: Elizabeth Alice Clements and Bernardo Mancano Fernandes
http://www.cornell-landproject.org/download/landgrab2012papers/Clements_Fernandes.pdf

実は、彼女のことを知ったのは12月のこと。先方も私の事を知っていて、ペーパーを交換してビックリ。同じ時期に、同じ問題(プロサバンナ事業)を学術的に分析していて、彼女はブラジルの資料を使い、私は日本の資料を使って、同じ結論に至ったのでした。

日本では「成功一辺倒」のセラード開発(日本政府・JICAがブラジルの「不毛の無人の大地」と称したセラードでの農業開発)ですが、私が現地にいた頃(1991年~2年)には色々な批判を聞いていましたので不思議地に思っていました。思っていながらも、アフリカの研究に没頭し、ブラジルは遠景に退いていたところ、このプロサバンナ問題で、またブラジル、しかも留学先だった地域に引き寄せられる今日この頃。不思議なもので。

で、最近セラード開発に関する学術論文を読み始めて、ますます「成功一辺倒」で良いのだろうかと疑問を持ったところで、クレメンテスさんたちの論文を読み、とっても腑に落ちました。結論部分の冒頭を訳し、末尾に貼り付けておきます。

同論文には、セラード開発を批判的に検証しているいくつかの文献が紹介されていますので、是非読んでみてください。(ポルトガル語ばかりですが・・・・)

もう一点。ブラジルの市民社会組織FASE(Federação de Órgãos para Assistência Social e Educacional)も、これに先立って、プロサバンナ事業への懸念を、セラード開発の負の遺産の再生産という形で批判する結論を書いています。

報告書『ブラジルの国際協力と投資』
FASE/SErgio Schlesinger,2012. "Brazilian International Cooperation and Investment: The Internationalization of Ethanol and Biodiesel", FASE.
http://www.fase.org.br/v2/pagina.php?id=3758
「プロサバンナ事業は、セラード開発がブラジル国内で創り出した地元農家と大規模モノカルチャー農業の間の社会・環境上の矛盾と対立を国外で再生産し輸出しようとしている(FASE, 2012:33-34)」


ーーー
Clementes&Fernandes, 2012:22
<結論>
ブラジルの素晴らしい経済成長、農業生産、バイオディーゼル生産能力、GDPの成長といったメディアのヘッドラインの裏には、植民地期の搾取、農村における抑圧・強奪・権利はく奪、土地所有権の不平等で集積的なシステムの伸張によって深く刻み込まれた長い歴史がある。

土地収奪の実践に関して、ブラジル政府が示しているのは、「重複」である。国内の文脈で「主権」「食料安全保障」を守ると称して、外国人による農地取得を縮小しながら、同時にブラジル政府はモザンビークにおいて、「料安全保障と故に国民主権のためと称して、アグリビジネスを代理にたて土地収奪を促進している。

プロサバンナを通じて、ブラジルはモザンビークにアグロインダストリー開発のモデルを輸出しようとしているが、このモデルは、ブラジルにおいて食料安全保障の面でも持続可能な開発の面でも深く失敗したモデルである。

現在ブラジルでは、6千5百万人を超える人が、食料不安の中で暮らしているが、これは大体国民の三分の一に上る(IBGE 2010b)。この国では、何百万人もの土地なしの人びとがおり、国全体で起こっている、食料を生産し生活していくための土地へのアクセスのための闘いに参加している (Wittman 2005)。

ブラジルで消費される食料の3分の2は、貧農と小農によるものであり、皮肉にもこれは、輸出のためのモノカルチャー作物栽培のためのアグリビジネスの拡大と展開によって移転を余儀なくされた人たちなのだ。

以上の経験が示すことは、ブラジルの農業資本主義のモデルが、貧農や小農にあまり利益をもたらさなかったこと、そして国の豊かな生物多様性や森林が破壊されたことである。
[PR]
by africa_class | 2013-01-19 20:35 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ

プロサバンナに関するNGO・外務省第一回協議会(1月25日金10時~12時@外務省)

下記、ODA改革ネットワークさんより案内をもらいました。
JICAの担当者らも来るそうです。
平日の午前・・・ではありますが、皆さんふるってご参加ください。
(公開、要事前申し込み)

====================================
                            NGO外務省定期協議会
                          ODA政策協議会NGO側事務局
                             ODA改革ネットワーク

第1回ProSAVANA事業に関する外務省との意見交換会
NGO側当日参加者募集

 平素ODA政策協議会へのご理解とご協力を賜り、誠に有難うございます。

 さて、1月25日(金)にProSAVANA事業(日伯モ・三角協力によるモザンビーク熱帯サバンナ農業開発)
(注1)に関する外務省との第1回目の意見交換会を開催いたしますので、当日参加者を募集いたし
ます。
これは、2012年度第2回ODA政策協議会(12月14日開催)で、同事業について関心を寄せるNGOが多 かったこと、論点が多岐にわたる大きな事業にも関わらず議論する時間が限られていたこと、公開されている情報が不足していたため議論を十分に深めることができなかったことなどを受けて、引き続き継続的に外務省と議論することになったものです。

引き続き皆様の積極的なご参加をお待ちしております。
ご参加ご希望の方は、下記参加希望フォーマットに従いお申し込み下さい。

以下当日の案内です。
 ●第1回ProSAVANA事業に関する意見交換会●
 日時:1月25日(金) 10:00〜11:30
 集合時間:9時45分 外務省東口玄関待合室(時間厳守)
 会場:外務本省内会議室
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/address/index.html

当日はProSAVANA事業に関連して以下の事項を中心に意見交換を行ないます。
1.ProSAVANA事業の概要及び進捗状況について
2.事業に関わる主な論点
(1)農民主権
(2)食糧安全保障
(3)土地収奪
*注1:http://www.jica.go.jp/project/mozambique/001/activities/index.html

・メールタイトル「ProSAVANA事業に関する意見交換会の申込」
・申込締切り:【1月23日(水)午前12時まで】≪厳守≫ 
・申込先:NGO側事務局  oda.advocacy<@>gmail.com
 *円滑な事前準備にご協力お願いします。
  締切後は参加者リストにお名前・団体名を掲載できません。

--------------------------------応募フォーム--------------
ProSAVANA事業に関する意見交換会に当日参加を希望します。
1.氏名 :
2.所属団体(公式名称):
3.ご担当(役職):
4.E-mail :
返信締め切り 1月23日(水)午前12時まで≪厳守≫ 
返信先:(oda.advocacy<@>gmail.com)
-------------------------------------------------------

※外務省には、外務省担当者の誘導がないと入れないため、集合時間に遅れますと、単独での入庁となり、会議に遅れる可能性があります。ご注意下さい。
==============================
[PR]
by africa_class | 2013-01-18 17:52 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ

モザンビーク第一人者によるプロサバンナに関する記事(続報)、農業省大臣談話の考察を中心に

学生からの卒論ファイルがパタリと止んだので、こちらの紹介を。リファレンスURLを付けようと思っていたのですが、子どもが起きてきたので後日修正します。

前回紹介したモザンビーク報道・研究の第一人者であるジョセフ・ハンロン教授(英国Open Univ.)のプロサバンナ問題に関する記事・第2弾、モザンビーク農業大臣の談話に基づき、前もって私の考察を述べておきます。何れも、必ず原典を各自でご確認ください。

"Pacheco says peasants protected, but Pro-Savana land grab debate continues"

 日本とブラジルによるモザンビーク農業開発援助案件「プロサバンナProSavana」への高まる一方の国内外の懸念に対応することを余儀なくされたモザンビーク農業省パシェコ大臣は、12月22日のテレビ・ラジオ番組で、「プロサバンナで農民らは土地を失ったりしない」と強調したと報道されました。
http://noticias.sapo.mz/aim/artigo/652525122012154125.html
 「ああよかった」と思い、以上の12月25日の国営通信の記事を読み始めて「?????」が募る一方。皆さんもご自分で読んでいただければ分かるのですが、結局何も事態は変わっておらず、大臣が「土地法があるから大丈夫」と従来見解を繰り返しているだけで、残念ながら、このプロジェクトで「ブラジル企業・農家による土地収用はされない」ということではありませんでした。また、下記のハンロン教授の記事でも紹介されているとおり、大臣は次のように述べています。
●「ブラジルのセラードとナカラ回廊地帯の特徴が一致するため、日本とブラジルによる30年の経験に基づくセラード開発の『レプリカ』を創り出す」
 また、大臣談話の特徴的な点として、
●「小農支援が重点」と述べている点は、これまでと異なり新しい点です。

 しかし、この2点の関係こそが、下記のハンロン教授の分析にも有る通り、また現地農民組織や国際組織が懸念を抱いている点なのです。重要な点なので、少し詳しく解説します。

 日本のJICAや外務省が、高まる一方の批判を回避するために、最近とみに強調する「小農支援」が、大臣の談話でも強調されるようになっていますが、「セラード開発」は承知の通り、小農支援ではありませんでした。その真逆で、同地に暮らす先住民や小農を排除し、大規模農地開発と豊かな南部や日系人の入植を進めたのが同開発でした。したがって、「セラード開発のレプリカ」と「小農重視」という場合は、ハンロン教授の指摘通り、論理矛盾があります。
 ただし、パシェコ大臣が、JICAがプロサバンナの必要性について繰り返してきた主張、
(●小農は土地を使いこなせず土地を余らせ、生産性が低く粗放農に依存するというストーリー
→JICA ウェブページhttp://www.jica.go.jp/project/mozambique/001/outline/index.html)
より一歩踏み込んで、「国の農業生産の90%を担う小農の重要性」に言及するようになったのは評価されるべき点だと思います。(日本側の資料分析については近々出版するのでそちらをご覧ください)

 さて、大臣がおっしゃる通り、本当に「土地法があるから大丈夫」なのでしょうか?
 この前の投稿で、ラジオ・インタビューに対して国際NGO/GRAINのDevlinさんが指摘していたように、世界の外資による土地収奪の大半はアフリカで起きており、まさに「土地法」があっても現実には土地の権利は守られない事態が頻発しています。
→http://afriqclass.exblog.jp/17062266(インタビュー全訳)

 結局、LandMatrixの記事によると、世界の土地収奪の6割はアフリカ地域で起こり、世界ナンバー2の土地取引件数・面積が共に、モザンビークとなっている現実にあります。パシェコ大臣の在任期間中にこの事態は起きており、大臣による「土地法があるから農民の権利は守られている」というのは、ここ数年のデータからも否定されています。
→Ward Anseeuw, Mathieu Boche, Thomas Breu, Markus Giger, Jann Lay, Peter Messerli and Kerstin Nolte (2012), Analytical Report based on the Land Matrix Database, Landmatrix (landportal.info/landmatrix)

 残念ながら、最後まで大臣のインタビューを読んでも、このプロジェクト(プロサバンナ)で、「ブラジル企業や農家による土地収用がない」とは書かれていません。むしろ、「(法や小農をリスペクトすれば)どんな投資もウェルカム」と締めくくられています。しかし実態として、ではなぜ、そのような土地法があり、小農を重視している政策下で、現状においてモザンビーク中で土地紛争が勃発しているのでしょうか?
→http://afriqclass.exblog.jp/17017188/

 先日のNGO外務省の協議会(12月15日http://afriqclass.exblog.jp/17000792/)では、外務省側から「モザンビーク政府のガバナンス支援をして問題回避」が言及されていましたが、
(1)モデルとするセラード開発において何が起こったのかのふり返りがないまま、2009年にそれをモデルとして採り入れると宣言し、住民や小農無視のデザインを押し進め、2012年秋に問題になるまでそれを大々的に宣伝してきた、
(2)2008年来、アフリカ中とりわけモザンビークで生じている土地争奪問題に全く理解がないまま、70年代の軍政下のブラジルで行なわれたセラード開発をモデルとした、
 のは日本ではなかったのでしょうか?
→このプロサバンナに見られる日本会計者の言説の推移は、講演会での報告記録を(詳細は近著を)
http://afriqclass.exblog.jp/16942666
http://afriqclass.exblog.jp/16942699/

 また、12月15日の政策協議会で、外務省側は、「貧困と農業停滞に喘ぐモザンビークがブラジルのモデルを良いと思って日本に協力を求めてきた」とプロサバンナの発案の経緯を主張しましたが、JICAのセラード開発担当者が「セラード開発の成功をアフリカで活かすため、プロサバンナは自分が立案した」と誇りを持って明確に語っています。ブラジルの関係者も「プロサバンナは日本のプロジェクト」と呼んでいます。しかし、問題化すると、日本はまるで「第3者」のような説明を事業機関が行う…そういう事態が生じています。

 現地事情を知りも、学ぼうともしないまま、机上の計画で、問題発生可能性をまったく予見せず、問題が実際に発生してから行われる、これまでのストーリーのいつの間にかの修正、応急対応と工作、そして責任転嫁は、国際的な信用を落とすだけでなく、援助を税金で支える納税者や国民の信用をも失うでしょう。このような非を認められないが故に、周りを巻き込んでどんどん問題を拡大させてしまい、被援助国の皆さんの貴重な時間や労力すら奪ってしていってしまう姿勢・・・の改善を、切に求めたいと思います。
 この秋にプロサバンナが問題化してから、現地では尻拭いのために本当にありとあらゆるところに圧力がかけられており、残念ながら、外部援助者の基本であるDoNoHarmの原則は、事業が本格開始以前の、立案・計画のまずさから、既にDoHarm状況にあるという自覚を、関係者が認めないことには、問題が問題を、懸念が懸念を、不信が不信を呼び、日本の国際的な信用はますます地に落ち続けるでしょう。
 
 それにしても、JICAや外務省は、モザンビーク北部の小農を本当に支援したいのであれば、ブラジルやセラード開発やあれやこれや以前に、まず北部地域という場の地域性、そして小農という主体から全てを始めるべきであったことに、いつになったら気づいてくれるのでしょうか。これは、そんなに認めるのが難しい話なのでしょうか?この20年間の開発や国際協力の議論の推移は、「セラードの成功」で無視してもよいという結論に至ったようですが、本当にそれで良かったのでしょうか?

 モザンビーク建国から37年。他ドナーが同国各地で継続的な支援を行い、同国の社会やニーズについて知識においても経験においても蓄積を積み重ねてきたところで、一方の日本はたかだか12年の在留経験。しかも、首都から遠く離れたこれらの対象地域の農村で何一つ社会的な調査も経験も積み重ねないままの、「ブラジルの成功モデルの移転」の打ち上げ花火。この秋確認しましたが、現地の公用語であるポルトガル語を話せる開発コンサルタントはほとんどおらず、現地の大使館にもJICAにもポルトガル語話者はごく僅か。今年秋の時点で、現地の調査機関も私が紹介するまでカウンターパートの農業省のものしか知らず、沢山文献は出ているのに、農民らが何を栽培しているかも自ら調べることなく、私にインタビューしてそれで済まそうとしていたほどでした。
 この間のドタバタをみていると、「身の丈」にあわない大規模プロジェクトを、熟考なく「セラード開発の成功をモザンビークに」との大きな掛け声で、宣伝ばかり先走ってやってきたツケが今押し寄せているように思われます。私たちの社会でこれをやったとしたら大問題だったと思いますが、「貧しいモザンビーク」なら、「政府が同意していれば」、良いという論理が哀しいです。
 また、「計画段階だから」との弁明は、しかし、既に「セラード開発の移植」を掲げ、大量の税金を投入し、大宣伝を繰り返している以上は本末転倒。

 さて、最後に。ハンロン教授の記事の中には、セラード開発を「レプリカ」とすることの問題が2点指摘されています。いずれも非常に重要な論点です。補足しつつ、紹介します。
(1)当初のJICA広報でも、今回の大臣談話でも繰り返された「セラードとナカラ回廊の一致する条件」ですが、実際は、緯度が一緒で雨季と乾季がある・・・という程度のことでした。それに気づいて、いつの間にか、JICAの資料からは「違いも大きい」という文言がこっそり滑り込むようになっていますが、ハンロン教授の指摘は重要です。つまり、セラードは高い酸性で農業条件が悪く、農民の数はそれほど多くなかったが、ナカラ回廊地帯は土地も水も豊かで多くの農民が暮らしているという真逆の条件。
(2)もう1点は、既に上で取り上げた通り、そもそもセラードに暮らしていた先住民は数は少ないものの、排除されたことは事実であり、彼らは「セラード開発によりより貧しくなった」というブラジルの実証研究(博士論文)が1988年に出されている。
→http://www.lagea.ig.ufu.br/biblioteca/teses/docentes/tese_pessoa_v_l_s.pdf

 つまり、「セラード開発をモデル」にするということは、モザンビーク北部小農にとって危惧されるべき点が多いということが指摘されているわけです。その地平に立った時、このプロジェクトを立案する前にやられるべきことは、はっきりしていました。つまり、「地元小農に対するセラード開発の負の遺産」について、日本の関係者が真摯に向き合うこと、そしてそれを繰り返さないための方策をどうするのかをブラジル先住民、モザンビーク北部小農を代表できる組織と真正面から対話していくことでした。そのことを、モザンビークの農民組織、市民社会、研究者、他の援助機関、世界の市民社会、日本の市民社会が問題にしていることを、いつになったら理解される日がくるのでしょうか。あるいは、永遠に不可能なことなのでしょうか。
 本来援助とは何のために使われるべきものなのでしょうか。311後に私たちに問われたのは、単に苦しい財政状況下に減る一方の「援助の量」をどうすべきかという論点だけでなく、「主権在民」の本質に関するものでした。日本国内の「主権在民」の原則の軽視が、遠いアフリカでも繰り返されている実態は、単にJICAや外務省だけのせいではなく、私たち自身の社会の在り様が、援助を経由して、輸出され、反映されているのであり、私たち自身の問題であるという点を今一度強調しておきたいと思います。

=================
MOZAMBIQUE 210 News reports & clippings
28 December 2012 by Joseph Hanlon
=================
"Pacheco says peasants protected, but Pro-Savana land grab debate continues"

No farmer will lose their land as part of the Pro-Savana project in Nampula, Agriculture Minister Jose Pacheco told a joint Radio Moçambique/TVM "Direct Line" (“Linha Directa”) programme Saturday 22 December. Indeed, he said the objective was to expand the area of small farmers. He was responding to a 25 October statement by UNAC, the National Peasants Union, that family farmers would be pushed off the land by the joint Brazilian-Japanese project. (AIM 25 Dec 2012; http://noticias.sapo.mz/aim/artigo/652525122012154125.html; News Reports & Clippings 209)

But the rest of his intervention created more confusion. Pacheco explained that Pro-Savana is intended to be a "replica" of the Japanese-Brazilian programme 30 years ago in a region called the cerrado which he said was "identical" to the Nacala corridor. And this is being questioned.

First, some argue that the Nacala corridor is very different, and not identical to the Brazilian cerrado. The cerrado had infertile land with high acidity and aluminium content, and heavy rains that leached the soil and made in less attractive to peasant farmers. By contrast, the Nacala corridor contains some of Mozambique's most fertile land and good rainfall, which means it is relatively densely occupied by peasant farmers.

The second conflict is over the model. The cerrado was turned into highly productive farmland but through very large mechanised farms, particularly growing soya. And much of the publicity on pro-Savana within Brazil is about how the huge Brazilian soya farmers are going to take over vast tracts of land in the Nacala corridor in a "replica" of the cerrado project. And a 1988 doctoral dissertation by Vera Pessoa in Brazil concluded that even though the cerrado was not very densely populated, very few of these small farmers benefited from the programme; most family farmers were evicted or became poorer as part of the cerrado project.
http://www.lagea.ig.ufu.br/biblioteca/teses/docentes/tese_pessoa_v_l_s.pdf

Pacheco said there was no place in Mozambique today from the grand "chartered companies" of the colonial era, and that any new investors must obey the land law (which gives occupants rights to their land). The plan is to have a mix of small, medium and large farms, he said.

But critics say that is not a "replica" of the Brazilian cerrado programme, which was dominated by very large farms.
[PR]
by africa_class | 2012-12-31 16:45 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ

プロサバンナ問題に関するラジオ・インタビュー全訳(国際NGO・GRAIN)

皆さんはクリスマスをどうお過ごしでしたか?
 こちらは静かなクリスマスが終わり、義父の葬儀が昨日終わり、家族一同心の切り替えがだいぶできました。 さて、そんな静かな師走ではありますが、先日このブログで紹介したGRAINのプロサバンナ問題担当者であるDevlin Kuyek氏の英語でのラジオ・インタビューの全文の翻訳が名古屋大学大学院の院生さんから届いたので、紹介します。同大学院の西川芳昭先生が授業の題材として活用してくれたとのことです。この場を借りてお礼申し上げます。
 なお、GRAINがRight Livelihood賞(http://www.rightlivelihood.org/)を取っていたとは不覚にも知らなかったです。下記インタビューにある通り、プロサバンナに関しては、とにかく「宣伝」以外の情報、特に英語やポルトガル語の情報が少なく(これが現地市民社会の不満と不信にも繋がっているのですが)、世界的にも注目を集めているのに苦労が窺い知れます。
 そこで、公的な宣伝情報、断片的に報道される情報と、関係者へのインタビューは重要な手段であり、GRAINの他、モザンビークNGOもかなりインタビューを積み重ねて報告書を作成しています(同報告書は未だドラフトだそうなので、確定したら紹介します)。インタビューでも紹介されていますが、GRAINは今年春から精力的にインタビュー調査を開始し、モザンビーク、ブラジル関係者だけでなく、JICA関係者にもインタビューをしたということでした。*冒頭若干誤訳と修正履歴が残っていたので校正しました。

■プロサバンナ問題については、ここにまとめて入れてあります
→http://afriqclass.exblog.jp/i38/

“Interview with GRAIN on the ProSavana project”, 14 December 2012
http://www.grain.org/article/entries/4633-interview-with-grain-on-the-prosavana-project

参考文献
● “Brazilian megaproject in Mozambique set to displace millions of peasants”
http://climate-connections.org/2012/12/01/brazilian-megaproject-in-mozambique-set-to-displace-millions-of-peasants/
●『モザンビーク国 日伯モザンビー三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム準備調査最終報告書』http://libopac.jica.go.jp/search/detail.do?rowIndex=1&method=detail&bibId=0000252732

“Interview with GRAIN on the ProSavana project”, 14 December 2012
Source: GRAIN 

参考文献
● “Brazilian megaproject in Mozambique set to displace millions of peasants”
●『モザンビーク国 日伯モザンビー三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム準備調査最終報告書』

「国際NGO・Grainのプロサバンナ問題に関するラジオ・インタビュー和訳」

■Firoze Manji:ブラジル政府と民間セクターが、モザンビーク北部で日本と協力して大規模なアグリビジネスプロジェクトを進めようとしています。プロジェクトはプロサバンナと呼ばれ、大豆やメイズなど日本の多国籍企業によって輸出される商品作物の生産に向け、1400万ヘクタールの地域を対象としてブラジルのアグリビジネス企業に土地利用を可能とするものです。モザンビークのナカラ回廊として知られるこの地域は、何百万もの農家の生活の場ですが開発過程で彼らは土地を失う危険にさらされています。私はFiroze Manjiです。今日はGARINのDevlin Kuyek氏とお話します。GARINは、小規模農家や生物多様性を基本とした食料システム、コミュニティ管理に対する社会運動を支援する小さな国際NGOです。皆さんご存知のように、GRAINは2011年にノーベル賞に代わるとされるRight Livelihood賞を受賞しました。ようこそ、Devlinさん。
■Firoze Manji: 最近、「プロサバンナ」と呼ばれるプロジェクトについて多く書かれており、人々の関心を集めています。なぜなら、それは南南協力の一環の事業として示されているからです。この事業は、ブラジル、モザンビーク、日本が関わる大規模な開発事業です。こういった事業は促進されるべきではないのですか?
■Devlin Kuyek: そうですね。彼らはそう主張していますね。「プロサバンナ」と呼ばれる理由は、ブラジルのセラードで行われた類似のプロジェクトにちなんでいます。セラード地帯はブラジルの広大なサバンナ地域を農産物の一大生産拠点にしようとしたもので、70年代に日本が多大な投資を行い積極的に支援しました。数年のうちに、その広大なサバンナ地域の60%が、大豆、メイズ、綿、サトウキビなどの生産地に取ってかわりました。ブラジルのその地域は人口密度が低かったのですが、そこに暮らしていた先住民にとってこれは破壊的なことであり、結局これらの人びとはセラード東部の保護区域に追いやられ、周縁化され、土地問題などに対する抗議は現在も続いています。
 そういったことは少し別の話になりますが、2007年、2008年に起こった食糧危機以来、今起こっていることは、日本のような食料輸入に大きく依存する国が、2008年の食品価格の上昇や、先進国に拠点がある少数の企業による世界の食料支配を受け、グローバル市場に依存することは問題であると気づいたことから始まっています。ですから、これらの国々は自国の企業が海外に出向き、食料生産の管理を外部委託できるよう促進しようとしているのです。このようにしてターゲットにされている地域のひとつがアフリカです。
 こういったことは単なる食料の安全保障(フード・セキュリティ)の問題に留まりません。アフリカ農業開発に関心を抱いている企業はたくさんいます。なぜなら彼らはアフリカをブラジル、セラードのサバンナ地域で起こったのと同様の状況にすることによって、新たに利益を生み出す巨大なポテンシャルがあるとみているからです。彼らは、モザンビーク北部のこの地帯は、地図上でブラジルのセラードと緯度に関して完全に一致する、あるいは条件が非常によく似ていると言っています。
 しかし一番大きな違いは、モザンビークのこの地域は数百万もの人々が住む最も人口密度の高い地域だということです。この地域は、先住民の人々が狩猟採取をして暮らすような単なる開けたサバンナ地域ではありません。
 そこは、人々がすでに農業に従事している場所であり、もし貴方がたが、その地域に足を踏み入れたなら、そこに多くの小規模農家がおり、非常に肥沃な土地で気象条件の良い場所であることがわかるでしょう。プロジェクトの目標は、すでに農業生産下にある土地を農業開発するということではなく、農業のモデルを変化させ、生産のグローバルな変化に統合することにあるのです。
 プロサバンナ・プロジェクトの基層は、モザンビークとブラジルと日本による三角協定にあり、モザンビーク政府がこのプロジェクトのために土地を利用可能とする点にあり、彼らは1400万ヘクタールもの土地の話をしています。それは我々が聞いたところによると、1ヘクタールあたり、1ドルだったそうです。
 ですから、モザンビークが土地を提供し、ブラジルが農業を担う主なパートナーになります。ブラジルには、この種の経験を持つアグリビジネス企業や大規模農家があります。セラード地帯における最も大きな農場経営者であるAgricolaなどがそうです。
 その農場は23万ヘクタールもあり、それはカナダのどの農場より巨大です。
 これらがモザンビークで起こりうるっていることで、農業プロジェクトによって、大豆、メイズ、綿、輸出用の穀物であるサトウキビやゴマなどを生産しようとしています。
 三井、伊藤忠、丸紅などの日本の商社は、生産物を、主としてアジア、おそらく日本にのみ輸出するため(中国、中東、ヨーロッパ市場に向けも可能ですが)、生産物を輸出する港などインフラ施設に投資しようとしています。
 つまり、モザンビークは土地を供給し、ブラジルは農業を担い、日本は食料品を扱うという全体像です。ここ数年間で、フィナンシャルタイムズや地元新聞の記事などからようやく様々な詳細がわかってきています。
 ブラジルの農業経営者らの派遣団がモザンビークにやってきて、なぜ彼らがここに来たか、何が提供されるかなどを話し、彼らは帰国してこのプロジェクトを他の人々に売り込もうとしています。そういったことを通して、どのような計画がなされているか少しずつ情報を得ることができます。
 モザンビークのナカラ回廊周辺には、ベイラ港とナカラ港の二つの港があります。ベイラ港は深海港ではありませんが、モザンビークの主な炭鉱や、世界で二番目に石炭の埋蔵量を持つ開発中の炭鉱に最も近く、ブラジルの企業は石炭の採掘や初期生産に関わっていますから、それらをベイラ港を通して輸送しようとしているのです。しかし、ベイラ港は深海港ではないので、代りにナカラ港を石炭の輸出用に開発したいのです。ですから彼らは今、テテ州からモザンビークの内陸部を通ってナカラを繋ぐ、モザンビークの内陸部に繋がる第二の鉄道を建設しています。
■Firoze Manji: それは同じくマラウイに繋がる経路ですね?
■Devlin Kuyek: いずれはそうですね。全ての経路は、マラウイやザンビアに繋がり、回廊は他の国々まで延びています。そしてそれがこのプロサバンナ・プロジェクトの中核をなしています。石炭の輸送用に鉄道基盤を整備するということは、それに伴って穀類や油糧穀物用の農場が新たに設置され、そういった穀物の輸送用にも使われるということです。
■Firoze Manji: それは「カーテル」のようなものですね。
■Devlin Kuyek: その通りです。まさにアフリカの内陸部に繋がっていて、そこは肥沃な土壌です。そしてあまり状態は良くありませんが別の鉄道もあり、その鉄道の両脇は最も人々が密集している場所のひとつであり、彼らの多くは農業を営んでいます。
 もし貴方がこのプロジェクトの支持者らと話したとすれば、彼らは全く異なる見解を示すでしょう。我々が2012年春、5-6月頃、このプロジェクトを調査し始めた時に、私はブラジル側でこのプロジェクトを推進し、とりわけ資金調達や民間セクターの参入に関わる半公的機関であるGVアグロの担当者と話しました。
 彼らが率直に語ったところでは、土地は豊富にあり、このプロジェクトの事業地は誰も農業をしていない土地でやるし、モザンビークにはたくさんの土地があるのだから、このような農業地域の規模では全く社会的な負のインパクトなどないだろうということでした。
 モザンビーク政府でさえ、この国には3500万ヘクタールの開発可能な土地があると言っているのです。世界銀行などの開発金融機関はこの国は使われていない農業用の土地があり余るほどあると言っています。
 我々がこのプロジェクトを調査し始めた時に最初にしたことのひとつは、推進者はこう言っている、投資側はこう言っているといったような彼らの見解を聞き、では実際の状況はどうなのだろうかと調査を進めることでした。私が初めに出会った人物の一人に、土地問題を取り扱う国立の研究機関の研究者がいます。彼はその頃この国の土地利用に関する衛星画像や最新技術を使った大規模な調査を行っていました。そうやって調査した地図をみれば、この国には3500万ヘクタールもの農業生産用に開発可能な土地などなく、全体でおそらく600万ヘクタール程度しかないことがわかるでしょう。
 そしてプロサバンナがターゲットにするナカラ回廊周辺ではそのような開発可能な土地はほとんどないのです。ここにある地図には小さな緑の点があちこちに見えますが、それらは現在、農業用に使われている土地を示しています。
 現在、この地域の小農らによる主たる生産様式は、移動農耕です。土地のある部分は残して生産地を移動させるのです。土地は個人の所有ではなくコミュニティレベルで運用されていて、誰が耕作するかはその年によって変えることも可能です。
 ナカラ回廊周辺にでは、すでに多くの投資家がいて、プロサバンナ・プロジェクトだけでなく、土地を一刻も早く得ようとあらゆる種類の企業が入ってきています。
 なぜなら、彼らは、外部アクター、多国籍企業、日本であれ、中国であれ、英国であれ、民間投資機関であれの関心が高いことを知っているため、土地(ある種のプレミアになりつつあるもの)の支配権を得ようとしています。だから、すでに土地を得ようと動いている企業がいるのです。
 私が7月にナカラ回廊周辺にいた時、あるコミュニティと出会いました。そこはナカラ港と同様にプロジェクトの事業地のひとつであるナンプーラ州の州都ナンプーラの近郊でした。
 我々が出会った時、このコミュニティの人々はプロサバンナ・プロジェクトについて全く知らず、聞いたこともなく、我々と話して初めて知ったということでした。
 彼らが言うには、この周辺に開発用に可能な土地などなく、全て使用されているということでした。彼らはまた彼らが作った穀物を買ってもらうことにも熱心でした。彼らの最初の反応は、もし誰かが大豆、メイズをもっと欲しいというのならば、なぜ我々から買わないのか、簡単に育てることができるのに、といったようなものでした。事業の対象地となっているこの周辺地域では、プロジェクトの情報は全く入ってきていませんでした。そして会合の途中で、誰かがどうやったらこのプロジェクトと闘うことができるのかと問いかけました。
 すでにこのコミュニティでは、2週間前に別の企業が来て会合を開き、ユーカリの植林のため12万6000ヘクタールの土地が収用されると告げたということでした。プロサバンナ・プロジェクトの対象となっている1400万ヘクタールの土地に加え、この地域にはノルウェーの企業がすでにコミュニティに入り、協議もせずに土地の収用を行っているのです。
■Firoze Manji: しかし、モザンビーク政府も関わっていますよね。その土地は誰が所有しているのですか?コミュニティが所有しているのですか?土地に関する権利はあるのでしょうか。
■Devlin Kuyek: 大半のアフリカ諸国では(土地の)所有権に問題があります。コミュニティが土地を管理している、土地利用に対して権限もあると理解されています。しかし、一般的に政府によって与えられる法的効力のある書類に関して言えば、政府、通常国、実質的には及び大統領が実際には土地を所有していることになります。
 ですから法的な観点からすれば、国に土地所有の権利があり、外国の投資家に土地を売ることができるのです。
 もちろん、多くの国には土地登録の法律があり、コミュニティが土地管理できるといわれ、コミュニティからこれらの土地を奪うには諸々のプロセスがあるといわれますが、実際にそれが守られているかというと、それはまったく別の話となります。
 コミュニティは様々な仕掛けによって彼らの土地を奪われています。そのようなことが起り続けています。問題の根本は、モザンビークでは名目上はコミュニティに土地の強い支配権を与えているのですが、実質的にはこの権利は行使されていないということにあります。
[PR]
by africa_class | 2012-12-29 02:18 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ

JICAプロサバンナ批判@ブラジル雑誌、14日(金)14時~NGO外務省ODA協議会@外務省で本件協議

 周知のとおり、私は、教育も研究も活動も、アフリカも福島も脱原発も市民社会もモザンビークも、何もかも忙しい。5足の草鞋だったのが、現状で10足ぐらいになってしまっている。特に、8名近くのスタッフ(福島乳幼児妊産婦ニーズ対応プロジェクト)の給料日が近い月初め、卒業論文のラストスパートの年末は。そんな忙しいところに、次から次へと色々なことが発生。学生のことなど楽しい話題であればいいのだけれど、酷い状態の国政(原発政策や福島対応)に選挙に加え、ここ数か月、日本の援助で残念なことが続いている。
 以下に、1.何が起きているのか、2.外務省でのこの問題に関する協議会(12月14日)のお知らせを記載。なお後者への参加申し込みは今日中(6日)なのでご注意を。

 国際協力を志す若者、あるいは現在やっている皆さんは、是非"DO NO HARM(この言葉知らなかったら致命的!)"そして「当事者主権」という言葉をもう一度思い返してほしい。「善をしてあげよう」以前にこれが徹底できない日本の援助が繰り返し起こしてきた当該社会への負の遺産を、いい加減立ち止まって見つめてほしいと思う。
 人びとの権利を蔑にする日本の深い闇は311とその後の展開で明らかになった。そこに暮らす人びとの権利と生活へのリスペクトのない日本の公共事業の構造と闇こそが、アフリカや世界に輸出され、再生産されている。そのことに無自覚な援助関係者には、ぜひ一度「他人の社会を変えてあげる」という驕りを捨て、日本のごく普通の市井の一人としての生活を見渡してほしい。皆さんが、歳を取って暮らす社会はこれでいいのか?これ以上「人」を無視した政策でいいのか?援助とは麻薬だ。自分の社会を変えてこなかった人たちが、他人の社会を変えられると信じることを可能とする。だからこそ、いつも他人の社会のことなど分からないとの謙虚さが必要なのに、そもそもその「社会」に関心がないからこんなことになる。

□「成功例」とされるセラード開発に関する報告会記録→http://afriqclass.exblog.jp/16942534
□プロサバンナに関するJICA・市民社会報告会記録→http://afriqclass.exblog.jp/16942666 http://afriqclass.exblog.jp/16942699

■世界・アフリカでの土地争奪問題→http://afriqclass.exblog.jp/16415050/
■Win-Win、BoP、打ち上げ花火的援助を考える→http://afriqclass.exblog.jp/16786709/
■福島、ジュネーブ人権委員会、国際協力→http://afriqclass.exblog.jp/16701475/
■当事者の「権利」を重視した福島乳幼児妊産婦ニーズ対応プロジェクトのアプローチ→http://fukushimaneeds.blog50.fc2.com/blog-entry-471.html 

1.モザンビーク全国農民組織によるJICA事業の批判
先週ブラジルでDe Fatoという雑誌で、日本のJICAがブラジルと共に行っているプロサバンナ計画(日本・ブラジル・モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発プログラム:ProSAVANA-JBM)を批判する記事が掲載されたのをご存知だろうか?
「モザンビークにおけるブラジルの大規模プロジェクトが何百万という農民を排除する危険性」
http://landgrab-japan.blogspot.de/2012/12/blog-post.html
ブラジル政府及び民間セクターは日本と協力しつつ、モザンビーク北部において大規模な農業プロジェクトを推し進めつつある。プロサバンナと呼ばれるプロジェクトは1400万ヘクタールの土地を利用して、ブラジル企業が大豆やメイズなどの商品作物を生産し、生産物を日本商社が輸出することを目指している。ナカラ回廊と呼ばれるモザンビークのこの地域は、数百万の小農世帯が生計を営んでいるが、このプロジェクトによって土地を奪われる危険性に直面している。
 ナカラ回廊はナンプラ州のナカラ港からザンベジエ州の北部を通り、ニアサ州のリチンガにつながる鉄道線路沿いに広がっており、モザンビーク国でも最も人口が集中している地域である。肥沃な大地と恵まれた降雨によって、数百万の小農民が自給向け、また地域内市場に向けて食料を生産している。
 しかしながら、プロサバンナ・プロジェクトはこの大地を日本やブラジルの企業の手に引き渡し、大規模農園を設立して、輸出向けの基幹作物低価格で生産することを目指している。サバンナを広大な大豆とサトウキビ農園に転換したブラジルのセラード開発のアフリカ版を、ここナカラ回廊で実現しようとプロサバンナ・プロジェクトは目論んでいるのである。
(*続きは、以上No Land Grab Japanのサイトでご確認を)

この援助については、先月明治学院大学で報告会があり、私がコメントした通り。
「モザンビークでのJICA熱帯サバンナ農業開発プログラム市民社会との勉強会」

http://afriqclass.exblog.jp/16705156/
(明治学院大学国際平和研究所(PRIME) 「平和学を考える」AJF・JVC・HFW・明治学院大学国際平和研究所(PRIME)共催 連続公開セミナー「食べものの危機を考える」2012年度 第5回)

その際配布されたのが、以上の記事を書いたモザンビーク最大の全国農民組織UNACの声明文だった。
「プロサバンナ事業(日本援助)に関するモザンビーク農民連盟の声明」
http://landgrab-japan.blogspot.de/2012/10/blog-post_23.html
 我々、ナンプーラ州農民支部、ザンベジア州農民支部、ニアサ州農民連盟、カーボデルガード州農民連盟の女性農民と男性農民、全国農民連盟(UNAC)の全メンバーは、2012年10月11日にナンプーラ市に集まり、プロサバンナ・プロジェクトに関する分析と議論を行った。
 当該プロジェクトは、ブラジルのセラードにおいて日伯両政府によって実施された農業開発事業に触発されて行われたものである。セラード開発は、環境破壊や同地に暮らしていた先住民コミュニティの壊滅をもたらし、今日、セラードでは、大規模な産業としての農業やモノカルチャー栽培(主に大豆)が進んでいる。ナカラ回廊地域は、ブラジルのセラードと類似するという気候上のサバンナ性や農業生態学的な特徴、国際市場への物流の容易さにより(当該プロジェクト地として)選ばれた。
(*続きは以上サイトで)

 本当に、日本の市民として、一納税者として、ブラジルに留学していた者として、モザンビーク、とりわけ同国北部の人びとと社会に長年関わってきた者として、恥ずかしく、また情けなくなるような事態である。
 先に書いた通り、日本の援助の問題(とりわけ農業・農村開発援助)には2000年から関わっていた。その後、問題が日本の対アフリカ政策全般にあると分かり、2004年からはTICAD市民社会フォーラムを立ち上げて政府・援助機関・市民社会の対話と政策改善を促してきた。その甲斐あって、2008年が終わる頃にはある程度の改善がみられていたし、政権交代もあり、援助ウォッチの活動は他の人びとにバトンタッチして、「新しいものの創造」と若手育成に取り組む決断が出来た。その後、日本とアフリカの現場で出来ることを中心に、大学でのアフリカコースの開設や、カフェモサンビコ、日本の過疎地対策、手や感性を使った平和プロジェクトlukasaの推進、アフリカ起業塾設置準備に取り組んできた。その間、まさかこんなことがこのように起きていようとは・・・。

■過去・現在と今後の日本の開発援助についての論考→http://afriqclass.exblog.jp/16081930

2.NGO外務省・ODA政策定期協議会でのプロサバンナ議論
ということで、残念ながら、またしても重い腰を上げなくてはならなくなり…。来週の外務省での政策協議会にて、プロサバンナ事業に関するNGO側の問題提起を行う。
 アフリカ日本協議会AJFの創設者である元代表で日本のアフリカニストの重鎮中の重鎮吉田昌夫先生、そしてアフリカ市民社会のサイドで長年にわたって活躍されてきた津山直子さん、私が、この件についての問題提起を行う。参加申し込みは今日6日(木)中なので、参加ご希望の方はご注意を。またNGO「関係者」の参加が前提となっているので、所属しているNGO名をあわせてお送りください。大学が含まれるかは直接お問い合わせください。

●2012年度第2回ODA政策協議会●
 日時:12月14日(金) 14:00〜16:00
 会場:外務省内会議室
●協議案●
 ㈰マラリア対策へのODA拠出内容について
 ㈪釜山閣僚級会合フォローアップにかかる日本政府の対応について
 ㈫特例公債法の国際機関への拠出および補正予算に関する影響
 ㈬モザンビークPro SAVANA事業の課題
 ㈭シリアの現状に関して:政府とNGOによる連携した人道支援などのあり方
●報告事項●
 ㈰NGOとの共同レビュー
 ㈪ポストMDGsに関する最新状況共有

・ご参考:NGO-外務省定期協議会ODA政策協議会の現在までの議事録は下記HPをご覧下さい。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko%5Coda/shimin/oda_ngo/taiwa/kyougikai.html

●参加申し込み●
・メールタイトルを「2012年度第2回ODA政策協議会参加申込み」としてください。
・申込締切り:12月6日(木)≪厳守≫ 
・申込先:NGO側事務局 oda.advocacy<@>gmail.com
----------------------応募フォーム------------------------------
2012年度第2回ODA政策協議会に当日参加を希望します。
1.氏名 :
2.所属団体(公式名称):
3.ご担当(役職):
4.E-mail :
5.当日事前会合の出欠 :参加する 参加しない

*NGO「関係者」の参加が前提になっているので、所属の団体名をお申込みの際に書いてください。任意団体もNGOです。大学については直接お問い合わせください。
-----------------------------------------------------------------

選挙直前でなかなか難しい点もあるが、21世紀の日本の開発援助がこれでいいのか、一緒に考えたい人たちに是非参加してほしい。
[PR]
by africa_class | 2012-12-06 05:21 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ