大学の教員や関心のある市民の間で、今回の原発事故とそれ
に関連する情報の出し方や報道の仕方についての議論が活発
です。一般の方もこの点に関心が高いようで、昨日のラジオ番
組でも、この点について女優の高木みほさんがかなり突っ込ん
だ発言をしていました。
その中で一番評価が低いのが、朝日新聞です。長年の購読
者で、多くの友人が働く新聞社でもあり、本当に哀しいことです。
一番評価が高いのが、産経新聞と東京新聞です。実際、これを
機に、朝日を止めて、産経新聞を読んでいるという人もいます。
当初は朝日と同じようなトーンで報道していた毎日新聞が、最
近もっと独立的な報道になりつつあり、評価を戻しつつあります。
学生の皆さんには、後期の授業で、同じテーマを新聞2紙がど
う報道しているかの比較分析してもらっていますが、これが非
常時には意味を持つことが分かります。ただし、日本の新聞は、
やはり日本の新聞としての限界を持っているので、外国語を学
ぶ学生としては、外国の新聞も是非リサーチしましょう。(これは
前期の国際関係とアフリカ地域の課題でもあります)
さて、朝日新聞・・・そんな批判を知ってだと思いますが、昨日
(4月20日)の3面で、「放射能情報 いかに伝える」という企画
がありました。これもネット上ではなかったので、是非紙で確認
を。多様な専門家の意見を聞いている点は評価できますが、一
般論について聞いていて、朝日新聞の報道はどうなのかについ
て点検してもらっていない点で、せっかくの企画が勿体ない状態
です。
しかも、これらの専門家による同社の報道分析はされていない
のに(つまり朝日新聞の報道を特に対象として議論されていない
のに)、なぜかゼネラルエディター兼編成局長の西村陽一氏に
よる、同社の報道への自己弁護的な意見表明が合わせて掲載
されておりすごく不自然です。紙面だけをみていると、誰も批判
していないのに、自己弁護している印象が強いですが、何のた
めに、ここにゼネラルエディターが出てくるのか、小見出しもなく
唐突に以下のような文章が始まるので、とても不自然です。
「正確なデータ、分かりやすい解説、全体像の提示に務めた。
政府の評価がまだ「レベル5」だった3月下旬に「少なくともスリ
ーマイルを上回るレベル6相当」と踏み込んだ記事を掲載した
ように、ことさら抑制的にしたことはない。ただ、将来のシナリオ
については、影響の規模やその蓋然性などを説明する根拠に
あいまいさが残る場合は、不安をあおらあないよう十分気をつ
けた・・・」
逆に、今回の報道の在り方について、同社に対する批判が少
なくないため、これを掲載したんだろうな、と勘ぐってしまいま
す。それであれば、堂々と検証記事にし、一方的な自己弁護
ではなく、議論のプロセスを掲載すれば、共感を呼んだかもし
れないのですが。どこか、政府発表を思わせる手順で、読者
の共感という意味では、逆効果ですね。以下、当該記事です。
***
福島第一原発の事故による住民の避難はいつまで続くのか。・・
政府は冷静な対応を呼びかけるが、先が見えないなかで、不安
は収まらない。放射能をめぐる各種の情報はどのように提供さ
れるべきか。識者に聞いた。(・・・)
■「ただちに~ない」は不信のもと
■被害の予測をわかりやすく
■あおっても抑えても不適切
■報じ方にもジレンマ伴う
以上が、小見出しで、メディアについて。
■メディアには何が求められているのか。
災害・リスク心理学の専門家・広瀬弘忠教授
「独自の調査と解説で切り込んだ報道」
「明らかになったこと将来想定されることについて、最悪のケー
スも含めて継続的に伝えるべき」
被ばく者調査の長瀧重信・長崎大名誉教授
「政府が下した判断の是非を問う視点」
元毎日新聞科学環境部長瀬川至朗早稲田大学教授
「その日その日の細かい事象にこだわるあまり、大局をわかり
づらくしている面がある」
***
いずれも、私がこのブログで指摘してきたことです。
危機の時こそ、物事の本質が露わになるといいいますが、
長年の読者としては、本当に哀しいです。今からでも遅くな
い。頑張れ!朝日新聞。
*ちなみに、何故私が今回これほどメディアに注目してい
るかというと、専門の戦争研究において、メディアの負の役
割の大きさを実感として持っているからです。現代の紛争
においては、メディアの役割抜きには語れません。そして、
その時確信犯的に戦争に加担するメディアもいますが、
第二次世界大戦中の日本の新聞各社のように、有形無形
の圧力を受けて、あるいは世論に迎合するうちにいつの間
にか・・ということが事実として起こったからです。
知らない間に、「社会全体の空気」が創り出され、その時
犠牲になるのは、各実に名もなき人々です。後で気づいて
も遅い。だから、前に前に、警鐘を鳴らし続ける必要がある
のです。
健全な批判的精神こそ、日本の我々が、特に教育界が
育んでこなかったものであり、それこそが、このような原発
事故を招いた問題の根幹だと思います。そして、大学で教
える私も、その責任者の一人です。
何事にも「遅すぎる」ことはないので、今からでも変わっ
ていきましょう。変えていきましょう。