■第十二回(最終回) アフリカへの誘い
本コラムも最終回となった。1年間おつきあいいただいた連載を始めた1年前と比べ、新聞等でもアフリカの話題が多くなってきた。また、東京外国語大学でも、今年4月から、アフリカ地域教育に力を入れた定員15名の学群が設置される。新入生15名は、まずは1年間徹底的に英語を身につけつつ、フランス語・ポルトガル語・アラビア語の中から一言語を選択し第二言語として学ぶ。そして、二年次からは、英語と第二言語を身につけ、さらに教養言語としてスワヒリ語をかじることになる。南部アフリカ共同体(SADC)に加盟するアフリカ12か国の大使たちによる英語での連続レクチャーも計画されており、まさに「生のアフリカの中の英語」に触れる機会となる。
受験生に戻ることができない皆さんには、是非アフリカを一度訪ねていただきたい。「百聞は一見にしかず」がアフリカほど当てはまる地域は地球上に存在しないのではと思うほど、アフリカのイメージと現実はかけ離れている。このコラムでもたくさんのことを紹介したが、やはり一度は、実際にアフリカの大地に抱かれ、直接にアフリカの人びとと触れ合っていただきたいと思う。
そして英語の達人たる皆さんには、是非アフリカの音楽CD、映画、文学作品に触れていただきたい。日本にいながらにしてアフリカのものが手に入る時代になった。中でもあえてお勧めするならば、映画『Amandla!』を挙げたい。ミュージカルの映画版であるが、アパルトヘイト下の南アフリカで、人びとが諦めることなく、不屈の精神と音楽と連帯の力で抵抗を続けた様子がドキュメンタリータッチで描かれている。ネルソン・マンデラの実際のスピーチも聞ける上に、音楽も素晴らしい。
文学作品については、本コラムでも紹介したナイジェリア英語文学の系譜を引くチママンダ・ンゴジ・アディチェのHalf of a Yellow Sun(翻訳本『半分のぼ登った黄色い太陽』)をお勧めしたい。1977年生まれの若い女性作家であるが、同書はOrange Prize for Fictionを、2003年に発表されたPurple Hibiscus はBest First Book Awardと Commonwealth Writers’ Prizeを受賞している。ナイジェリアの現地の言語に由来する言葉も多く、最初は読み進めるのが少し大変かもしれない。しかし、後半にかけての躍動、複数のパーソナリティーの物語が大きな戦争という物語に結実していく様は、感動的である。人間の弱さと可能性を痛切に感じる一冊。
また、アフリカについてもっと知りたい、学びたいという方は、筆者の編書『アフリカ学入門』(2010年、明石書店)をご参照あれ。
この連載中に、アフリカ、ドイツとの往復を何度も繰り返した。世界を何周かして思うのは、やはり日本にアフリカ的刺激と包容力が不可欠な時代が到来しているということ。世界のどの地域よりも、今の日本には停滞感、諦めが漂っている。これを脱するヒントは「危機の先進地」ぜひ、アフリカにこそあり。ぜひ、アフリカへ。へ。