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震災・原発事故から18か月。先月福島で行われた意見聴取会での声から

(国際協力の投稿の続きは週末に。今それについて論文書き始めました)
9月11日も終わってしまった。毎月11日をどう過ごすか考え、答えなきままに18か月を迎えてしまった。あの日、逃げるしか何もできなかった自分への怒りと、守るらなければならないものを守ろうとする本能を思い返し、あの日の東京の抜けるような青い空に、不条理と無力感に苛まれる。 まだ見つかっていない多くの皆さんとそのご家族、友人たちに、なんと声をかけられるのか考えても考えても答えがないまま、1年が経った石巻の穏やかな海に問いを投げつけたまま、また半年が経ってしまった。
 当事者ではない私が何を書こうとも無意味だ、と思う。私の当事者性に基づいてこの1年と半年をふり返るのであれば、電力を使う側・原子力政策に異議を唱えなかった有権者として、立ち上げずにいられなかった「関西疎開プロジェクト」や「福島乳幼児妊産婦ニーズ対応プロジェクトFnnnP」や、現在の脱原発関連アクティビティが思い出されるのであるが、もっとプライベートな面でいうならば、それが自分たちの決断であったとしても、まだ小学生の一人だけの息子と17か月も離ればなれになって暮らすことになるだなんて、考えてもおらず、彼が私を必要としているときにそばにいることができなかったという想いばかりが募っていく。

 想いを語り合うことは重要だ。一人称で語り合うことにこそ、2011年3月11日を経た日本の私たちがこの苦難を乗り越えていく重要なカギだと思う。なぜなら、心の奥底の叫びから出た言霊は、嘘や虚構を越える力を持ち、他の人達の心を揺り動かし、何かを変えようとする力となって羽ばたいていく可能性を秘めているから。
 だから私は下手でもいいから自分のことを語る。そして、人が自分の想いを語るのを聴きたいと願う。そして人がそうやって想いを表現した時、その声に耳を傾けてほしいと願う。

 本当は生の声の数々をここに書きたい。でも、それは別の機会に。今日は、このブログでも繰り返し紹介した「国民の意見を聴く」という目的で開催された意見聴取会。当初は予定になかった福島での、より沢山の人びとの、自由な意見を表明する場が実現したが、何故政府(内閣府国家戦略室)はそれを最初から設定しなかったのかと憤る。そもそも、エネルギー問題、原発問題を議論することになったのは、去年の原発事故とその後の被害によるものではなかったのか、と。昨日、まさに原発事故発生のその日に、国民が選んでいない内閣が、国会を無視して、原子力規制委員会の人事を承認してしまった。規制委員会を作らねばならなくなったのは、そもそもは、原発事故が従来の推進者が規制側を牛耳っていて「安全神話」に基づき、危険予防に務めなかったから発生した、という結論に基づいていたはずだった。それが、16万人もの人が故郷に帰れず、留まってなお不安に生活する福島の人たちがいるにもかかわらず、何故か「事故は収束」し、「元の生活」など望むこともできない状態に人びとを追いやったまま、彼ら・彼女らを犠牲にする形で行われてしまった。
 これらのことについて、やはり当事者の皆さんの声を一人でも多くの人に届けなければ、と思い8月2日の東京新聞朝刊に掲載された声の数々を転記したい。

◆福島 怒りの聴取会 「収束」「再稼働」政府不信一色
(東京新聞 朝刊 2012年8月2日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2012080202000203.html
「東京電力福島第一原発事故で計り知れない打撃を受けた福島県で一日、将来の原発比率をどうするか、県民の意見を政府が聴く会が開かれた。将来0%どころか「すべての原発の即廃炉」を求める声が相次いだ。政府は事故収束宣言や原発再稼働など県民の心を逆なでしてきたため、政府への不信感や怒りの声に染まった。(中略)
 聴取会は四時間に及び、原発比率の議論より、政府の姿勢を疑問視する声が目立った。特に、昨年末の「事故収束」宣言や、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働、さらには原子力規制委員会の人事といった一連の政府の対応がやり玉に挙がった。
 福島県の各地では、数多くの人が避難生活を余儀なくされ、放射能の影響も広く残っている。そんな中で政府が「サイト(原発)内に限っては」と前置きをしようと、収束宣言は切り捨てと映ったようだ。「政府ではだれも事故の責任を取っていない」「何の根拠があって収束宣言したのか」など次から次へと批判の声が出た。
 再稼働問題はほぼ全員が問題視した。「あれだけの事故があったのに、もう再稼働させてしまった。失礼だ」「山も森も放射性物質。そんな中で再稼働に踏み切った政府に憤りを感じる」などの意見が出た。
 規制委人事でも「また原子力ムラで固めるつもりなのか」と疑問が出されると、会場から「ふざけるな」の声が一斉に上がった。」

◆ネットに掲載されたのはここまで。2面にはもっと具体的な声が出てくる。それを転記。原発事故から1年半経っても、普通の生活が続けられないほどの迷惑をかけている皆さんに、ここまで言わせないといけない政府の在り方に、そんな構造を支えてきた自分に、憤りが止まらない。何故、加害者の政府に、被害者の福島の人達が訴え続けなければならないのか。繰り返される犯罪的対応。世界中で起きてきたことが、ここでも繰り返されている。しかも現在進行形で。

記事冒頭「ある人は拳を振り上げ、ある人は涙に声をつまらせて脱原発を訴えた。福島第一原発事故の被災地、福島市で1日に開かれた意見聴取会では、福島の人達の怒り、嘆きが渦巻いた。『福島県民は国民ではないのですか』。福島市の女性はこう発言し、政府が事故原因不明なまま事故の収束を宣言した上に、『国民の生活を守るため』と大飯原発を再稼働させたことを憤った。女性は続けた。『私たちは何度も何度も国に捨てられている』(後略)。

●シナリオを討論すること自体が矛盾している。原発は制御できないことを学んだ。(田村市男性)
●0%シナリオを選んだが、思いは一日も早く原発をなくしてほしい。これだけの放射性物質をまきちらし、原発も輸出する。それでどうて国際貢献なのか。(伊達市女性)
●意見を聴く会というが、単なる福島のガス抜きではないか。まず反省すべきは、事故を起こしたあなたたち(政府)だ。事故収束もしていないのに、なぜ再稼働なのか。(福島市男性会社員40代)
●この会をアリバイにしないでほしい。事故は収束していない。首相は「国民生活を守る」と大飯原発を再稼働させたが、私たちは国民ではないのか。(福島市女性50代)
●電力会社の人が「事故で死んだ人はいない」と発言したと聞き、出席する気になった。あんなに元気だったのにっていう人が亡くなり、自ら命を絶った人もいる。(富岡町から避難中男性30代)
●東電のおそまつな対応、政府も東電のいいなりで事故になった。ふるさとを失った苦しみがあなたたちに分かるのか。この会をにわか実績、アリバイづくりにするな。(浪江町から避難中男性農業)
●線量計で測定してから子どもたちを外で遊ばせるようになった。子どもたちには「間違ったら素直に反省し改めなさい」と教えている。大人の潔さを子どもたちに教えるべき。(福島市小学校教諭男性50代)
●首相は大飯原発の再稼働を決める際に、ッ国民の生活を守るといったが、関西電力は原発を動かした途端に火力を止めた。原子力ムラの考えることは理解できない。(福島市男性会社員)
●事故が起きたのにもう再稼働だ。本当に収束したのか。首相は再稼働を決める際に「自分が責任を取る」といったが、今回の事故の責任は誰が取ったというのか。(須川市女性50代)
●即時廃炉を求める。福島は健康に生きる権利を奪われた。最も懸念するのは子どもたちへの影響だ。原発は人権の問題だ。そもそも福島事故の責任はだれが取ったのか。(郡山市市議女性50代)
●安全対策が不十分なまま再稼働を許すとは、脳みそがメルトダウンしているのか。日本はどうしてごめんなさい、って言えなくなったの?(相馬市団体職員男性30代)
●ゼロシナリオを選んだが、この会場で示されているものとは違う。求めるのは、今すぐ原発ゼロを選択することである。原発と命は共存できない。安全神話と決別すべきだ。(福島市労組職員男性50代)
●もっと地元に行って多くの人の意見を聴いてほしい。私も平日のこんな時間来るのは難しかった。多くのことを訴えたい女性はたくさんいる。そうした声を聴いていない。(伊達市生協職員女性40代)
●使用済み核燃料の最終処分問題が解決しない限り、原発はだめ。この問題を解決してから、原発比率の話を考えるべきだ。今回の事故が転換するきっかけとなることを期待。(浪江町から福島市へ避難中の男性)
●長崎で被爆した。原発では労働者が被ばく覚悟で働く。8月に決めるなんて拙速なことはやめ、まずは5%とか中間目標を定め、確実になくしてほしい。(福島市無職男性70代)
●すべて廃炉にすべきだ。ドイツは福島事故後、脱原発を決めた。当事者の日本がなぜできないのか。首相はドジョウに戻って泥をかぶり、すべての原発を廃炉にしてください。(富岡町から福島市へ避難している男性)
●細野大臣は、原発をなくせとの声が圧倒的なのを覚悟の上江で来たのだろう。でも再稼働のアリバイ作りに利用されないかと不安がある。(会津若松市男性)
●電力を完全自由化し消費者が原発由来か、火力由来化、再生エネ由来かを選び比率が決まっていくのがいい。(福島市団体職員男性30代)

以上、新聞に掲載されているのはすべて転記できたと(腕が痛い)。何故かネット上ではこういう意見が読まれることが少なく、外部の人達の勝手な思い込みが流れること多々。まずは当事者の声に耳を傾けよう。

そして、「福島県民は国民ではないのですか?」「捨てられた」と言わしめている背景に、私たちの無関心が、沖縄の基地問題と同様あることを、今一度思い出そう。それが18か月を超えた今日(昨日)に改めて我々が出来ることの最低の一歩。
by africa_class | 2012-09-12 02:19 | 【311】原発事故と問題
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