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「アルジェリア人質事件」背景としてのグローバル化。最近日本に見られる「経済・武力万能主義」の危険

昨日はJETROでの勉強会で「講師」としてお話しした。
というより、参加者の皆さんと、現在の世界、アフリカ、日本、一人一人の私たちの関係性と10年後のそれに思いを巡らせ、「どのような関係」を「どこの誰」と「何のため」、「どう結んでいくこと」が、個人として組織としてのどのようなビジョンに結びついているのかを一緒に考えた。

世界は激変した。二十数年前、ソ連が崩壊し冷戦が終わると予想した人は殆どいなかった。十数年前中国がここまで飛躍するとも。六年前アフリカがブレークするとも。気づいたら、世界は、日本の「重鎮」らが慣れ親しんだものから豹変してた。なのに「過去の日本と世界関係感」に囚われの身のままの人が多い。いや、漠然として不安を抱えながらの過去の栄光への固執。さすがにJETROにそんな人はいなかったが。

政府や社会全般にまだまだ「日本は世界の中心部の一つ」と考えている、考えたい人は多い。しかし、「世界で日本がどうなのか」もさることながら、「日本は日本で一体どうなのか」つまり「日本は今、10年後、20年後、どうなっていくのか」を念頭においた時、現実は底なし沼のように問題だらけ。一過性、小手先の金融政策や公共事業ばら撒きでは、問題をより深刻化させるのは目に見えているのに、相も変わらずこんなことを続けようとしている。最大の問題は、これらの為政者らが夢見る「あの右肩上がり経済成長路線」は日本社会が再び手に入れることはないという現実。何もしなくても儲かった国内需要拡大(戦後貧困からの脱却、出生ブーム)が、あり得ないどころか、その負の遺産に立ち向かう時期に来ているというのに、未来から借金(カネだけでなく構造・環境破壊・社会崩壊)を重ねる形で、従来のやり方・従来の組織を救うために、利権者たちが蠢き、仲間内で「いいね、いいね」と自画自賛。

一方の我々庶民は、世界も日本社会も激変しているというのに、「大きな変化は嫌だ」と、「昔と同じ顔触れ、やり方」への憧憬と「違ったこと」への恐れから、耳触りの良い言葉の数々に、とりあえずは身を任している。足下で自分の生活が崩壊していっていることはさておき。急な大きな痛みよりも、緩慢な痛みの方がお好みで。あるいは、「誰かがなんとかしてくれる」の「お上がやればいい」のメンタリティから抜け出ることもなく。

さて、世界。
アルジェリアでの人質事件により、また「アフリカは危ない」という話になるのであろうか。あるいは世間でいわれているように、若者の「内向き志向(世界は危ないから日本が好き)」が進んでいくのであろうか。

でも、ちょっと待って、といいたい。
「アフリカが危ない」
のではない。
「我々が生きる21世紀初頭では、世界中が危ない」
のである。

冷戦後のグローバル化世界は、どこもが危険な場所となったのだ。
でもそれはアルカイーダ等の一部の武装勢力だけのせいというわけではない。
現在我々が暮らす世界の在り方こそが危険の源泉なのだ。
その自覚は、どこまで日本の一人一人にあるだろうか。

冷戦後、現在の「弱肉強食を是」とする「少々の犠牲を払っても儲けるのが一番」の考え方が世界を席巻し、それを助長する資本が世界の隅々に色々な姿形に身をまとって現れる現実の中で、世界各地の社会が根底から崩壊していきつつある。日本も同様である。

それが人びとにもたらしている底知れぬ不安、疎外感、不満に絶望を、私たちも身近で感じていないか?いや、私たちは「まだ勝ち組」だから、切迫感はないだろうか?でも若者の半数が非正規雇用の現実が目の前の中、働いても働いても生活を支えることができない中、思い当たることはないだろうか?そのことなのである。

あからさまな外国(異民族・異教徒)資本・企業による格差拡大への加担、圧倒的な豊かさと力とそれとの国内為政者の結託、お零れ程度に授かるかより悪化した暮らしを余儀なくされる人びとの間で高まる不満と出口のない絶望感。

このような根っこの部分にある民衆の絶望と不満を、変革にではなく破壊エネルギーに転換させている現状を無視し続ける限り、それに乗じて自らの勢力を拡大しようとする武装勢力は「仲間」を見つけるのは難しいことではなく、かつ自己正当化理由として使い続けるだろう。

それを無視したまま武力で抑え込もうとしても、根絶などほど遠く、「主戦場」が移っていくだけであり、それ以上に問題なのはこのような武力での解決は武装勢力側に自己正当化の機会を与え続けるであろう。かつて植民地支配した者らの、世界経済を牛耳る者らの空爆は、当該地の民衆にどのように受け止められるのだろうか?

残念ながら、中央アジアから中東を経て、北アフリカ・西アフリカまで。叩いても叩いても、別の所に現れる。民衆の中の根深い不満とそれに乗じた武装勢力の動きは、今後も止まず続くだろう。

「極端に不公平な世界でよし」が主流の世界である限り、彼らは自己正当化し続け、自己増殖し続ける。
「中東・アフリカの問題」なのではない。
世界の問題であり、我々の問題でもある。

経済至上主義と武力至上主義が、なぜ今日本で声高に叫ばれているのかの世界的潮流への注目、そのような主義が問題の根本解決ではなく次なる問題を生み続ける危険を、改めて喚起したい。

以上を考える上での好書
中山智香子著『経済ジェノサイド:フリードマンと世界経済の半世紀』(平凡社新書840円)

紹介を書きました
http://afriqclass.exblog.jp/17128446/

中山智香子先生のホームページ
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/nakayamac/
ブログもよいです。
by africa_class | 2013-01-18 12:02 | 【徒然】毎日がアフリカ
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