人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

Lifestyle&平和&アフリカ&教育&Others

afriqclass.exblog.jp

アルジェリア人質事件で自衛隊法改正?「火事場ドロボー」の責任回避、「世界民衆から嫌われる日本」への道

アルジェリア人質事件については先週投稿した通り。
■「アルジェリア人質事件」背景としてのグローバル化。最近日本に見られる「経済・武力万能主義」の危険
http://afriqclass.exblog.jp/17171835

アルジェリア人質事件を使って自衛隊機派遣とか、勇ましい話が持ち上がっているけれどおかしな話。

■「自衛隊法改正で自公に温度差 対策本部」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130122/stt13012211320002-n1.htm
「自民党の石破茂幹事長はその後の記者会見で、邦人の救出要件を緩和する自衛隊法改正の必要性を重ねて表明した。公明党の井上義久幹事長も会見で「邦人保護のあり方について自衛隊法改正を含めて検討したい」と理解を示した。」

本当に「火事場ドロボー」もいいところ。
事件が起こり、アルジェリア軍が反撃して数日、まったく情報が得られなかった日本政府なのに、話が真逆。世界で、地域で何が起きてるかも分からないで、自衛隊?話を逸らそう、利用しようとの魂胆が丸見え。

学生諸君はこういう報道に触れる時、「そうなんだ~」といつもの癖を捨てましょう。
「なぜアルジェリア人質事件の全容が分からない段階で、こういう話になるのか?」を問おう。
いつも、
①なぜ今この瞬間、
②なぜこれらのアクターが、
③なぜこういうことを言っているのか?
④どのような利害関係を②は持っているのか?
⑤可視化されている②以外のアクターは誰か?
⑥そのアクターと②はどのような歴史的関係にあるのか?

さて、
「この事件が起こって困っているのは誰か?」。
誕生したばかりの安倍政権、それを歓迎している政府関係者。
外交・防衛は、彼らのメインイシュー。

「誰が何に困っているのか?」
未だに事件の全容は見えない。
アルジェリア軍が施設を掌握したのは事件発生16日朝から1日後。
つまり、もう6日近く経過してるのです。
なのに情報は依然錯綜。

アルジェリアの日本大使館は何をしているのか?
外務省のアルジェリア所管の部局は何をしているのか?
そもそも官邸は何をしているのか?
そういう批判が起きてオカシクナイのです。

つまり、「責任回避」と「彼らの責任に関するメディアの力点回避」
に躍起になる必要がここ数日生じています。そこで出てきた論理は何か?
【論点回避例1】「自衛隊法が邪魔で『邦人救出ができなかった』」
■「自衛隊法改正、公明も検討へ 邦人保護めぐり」
http://www.asahi.com/politics/update/0122/TKY201301220035.html
【論点回避例2】「アルジェリア政府批判」
■「アルジェリア批判、安否確認に支障も」(東京新聞2面1月23日)
「政府筋はアルジェリアに物申さねばならない。米英両国が作戦に参加すれば、絶対こんなことにはならなかった」

【論点回避1・2】から派生して、次に来るのは、これでしょう。
●「自衛隊が軍ではないから、世界の情報(諜報)ネットワークに入れていない」
●「自衛隊が米軍と一緒に自衛だけでなく、集団防衛に踏み出せば、邦人救出でも協力してもらえる」


こうやって、「自衛隊は軍になり、米軍の世界のいかなる地域の軍事オペレーションにも協力ができる」ということを、今の政権は目指しているのです。もっと国家としては危なかった冷戦時代にすらやらなかったのに?

軍国主義の政治家・役人たちは、この機会を利用しようとするでしょう。
自分たちの無知、傲慢、信頼に値するネットワークの欠如を、以上の【論点回避】を使って乗り切ろうと。
そして、マスコミと共に、国民の間の世界への恐怖を煽って、「火事場ドロボー」的に自衛隊法改正に向かっていくだろう。そして、「そんなもんかな」と思わせる報道も始強化されるだろう。

皆さんはきっと、
「世界は危ないから政府にしっかりしてもらわないと」
「やっぱり自衛隊に守ってもらわないと」
「中東アフリカは危ないから行かないように」
などと思いこまされていくでしょう。

でも、皆さん、目を覚ましましょう。
311後、はっきりしたはずでは?
日本政府が一人一人の健康と命を優先などしてこなかったことを?
「原発ムラの存続」>「子どもの健康」「将来の安全」

の構図は明確です。

なのに、依然「政府が守ってくれる」と思ってるのですか?

そして、原発事故と同様に、一体何が問題だったのか、誰が責任を追うているのかは、うやむやになって気がついたら、前より悪い選択肢が何故か「新しい対応策」として浮上してしまっているでしょう。

メディアは後追いするだけ。

しかし、今回はっきりしたのは、やはり今世界でおきていることを軍事的に、中東・イスラームだけで捉えることの限界である。そもそも、欧州人も犠牲になった。しかし、NATOは今回の事態を予測しただろうか?何か対策を打っていただろうか?

今更アルジェリア政府を批判するが、独立以来政権に着き、同政府が民主化を拒み、民衆を大量殺害した時、日本政府は何をしましたか?チュニジアとエジプトで世界最長の独裁政権が倒れるまで、これら大統領を称賛し続けたのは、日本政府でなかったのでしょうか?

「アラブの春」後、手のひらを返したようにNHKでも「独裁者の●●大統領は・・・・」と言い始めた。どういうことでしょうか?

そんなアルジェリア政府と沢山の開発プロジェクトを推進しているのは、日本政府と企業ではなかったのでしょうか?その繁栄の陰で、民衆がどのような暮らしを余儀なくされ、どのような感情を抱いているのか、彼らから見ての世界、日本は何のか?

事件の首謀者であるのはもちろん武装組織です。間違いなく、彼らが最も非難されるべきです。しかし、それを抱く社会が国境を超え広がり、アルジェリアに根差せたこと、そして今回他のどこでもなくこのプラントが狙われたことの意味を考えている人は、政府内にいるのでしょうか?いると思いたいですが。

なのに、東京新聞ですら、「アフリカは・・・」としている。
問題は、アフリカ、中東、アルジェリアの問題というわけではありません。
世界の、日本の、我々の問題であるという視点が欠けたままであれば、永遠にこの悪循環は続くでしょう。ましてや、その「解決」を、自衛隊の軍への転換、日米同盟を世界での実効力をともなった展開に変えていくのであれば、日本人はもっとずっと危ない目にあうでしょう。


多くの答えは社会の内部にある。社会のひだに分け入って身を浸し、あちこちの人の本音に耳をそばだてない限り、何も分からないでしょう。結局、国境を超えた社会・政治・経済の問題なのです。むしろ、この「現地感覚」「世界の潮流理解」「深い洞察」のなさこそが、日本人・日本国が危険に晒される原因の大元であることを、我々はいつになったら気づけるのでしょうか?

大使館員やJICA事務所の何人が現地の言葉に通じ、週に何度現地の人と腹を割ってご飯を食べているのしょうか?政府の人間だけでない。市民社会や現地メディア、野党と、月に何度会ってその話に耳を傾けているのでしょうか?日本と同じに考えればよいのです。政府とだけ話してて、社会がみえないのは当たり前。

ましてや権威主義の国、弾圧のある国など、当然社会や民衆の本音は隠されています。どの程度、そのような声に耳を傾け、その国・社会を全体として掴もうとしてきたのでしょうか?

「現地政府とやれば済む」・・・この限界に21世紀になっても、気づかない悲しき日本のエリートたち。援助もそう。「形式的要請主義」なので、自作自演で要請を作って相手国政府にサインさせている。問題が生じれば、「相手国政府の要請があったので」「国家主権の尊重から」「相手国政府の一義的責任ですから」・・・んんん?どっかで聞いたセリフ!農薬供与でもそうだった。そして今プロサバンナ事業でも同様。
http://afriqclass.exblog.jp/i38

いや、気づいているが面倒なのかもしれない。本省からの問い合わせに四苦八苦してるのでしょう。それはそれで本当に可哀想。でもそれは内輪の論理。

大多数の民衆から乖離したまま行われる外交・援助・開発・・・・そして、その結果はプロサバンナ事業であり、アルジェリア人質事件なのです。

現地事情、世界潮流に気づかない/気づけないというより、もしかして、あえて気づかないのかもしれません。島国ニッポンの論理に閉じこもるからこそ、選挙に勝てる古い政治。このパターンを期待する政治家・官僚・メディアがいる以上、日本は本当の意味で脱皮はしないでしょう。我々も悪いのです。「殻」に閉じこもって、自分たちの論理で、同調してることに満足なのですから。

しかし、その結果、危険が危険を呼び、より強固な手段がより暴力を生むという連鎖に、イラク戦争以来入っていることをいい加減気づきませんか?

「戦争放棄の広島長崎の国・日本」のリスペクトがどれほど大切だったか、世界の隅っこを歩けば歩くほど実感してきた者には、小泉政権下のイラク戦争への実質的な「参戦」は、日本を「平和の使者でなく戦争の一方に繋ぐ」馬鹿げた政策でした。戦争理由の大量破壊兵器は茶番だったことは、戦争を主導した米国も英国も認め得いるというのに、依然認めない日本政府。

外務省の「検証」報告・・・これを検証と呼ぶのでしょうか?歴史家は首をひねりたくなります。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/taiou_201212.html
イラク戦争検証を求めるネットワークの緊急声明
http://notaru.com/notaru-news/2012/12/31/8134
http://iraqwar-inquiry.net/

内部の者だけでやった「検証」・・・意味なく、お金の無駄。
どうして第三者に任せないのしょうか?
その時点で「検証」なるものの正確は決まったもの。
これが民主党政権時に行われた事であることに本当に残念に思う。

これでは、自衛隊法が改正され、米軍の後方支援をする「ポチ」となることが決まってしまうと、もはや歯止めをかけられないでしょう。「なぜ戦争があったのか、なぜそれに加担するのか、それは正しかったのか」・・・その深い反省なしに、突き進んでいる現状こそ、日本がますます世界の中で危険になっていく第一歩であるというのに。第二次世界大戦と同じ。何も学んでいない。

さて、外大生の皆さん、特にアラビア語専攻のみなさんへ。自信をもって、君たちの現場感覚と語学力で情報発信してほしい。島国日本からしか世界がみれない一面的なモノノ見方を、SNSの力で豊かにしていこう。「地域から考える」はこういう時こそ。送ってくれたら拡散します。でも、ちゃんと調べて発信してね。引用元も常に明確に。

危機管理について。
私は、子どもにも学生にも「教え」たくない。なぜなら彼らが私を必要とする時、きっと私はそこにいないから。いたくないのではなく、現実は過酷で残酷。どんなに大切な我が子でも、「その時その瞬間その場に」いれるだろうか。不可能だと思う。だからこそ、彼らが彼らの洞察力と批判的思考と判断力、機転で、自分を救い、周りを救い、結果社会を救ってほしい。それだけ願ってる。

危機管理とはそういうもの。
誰かに任せるもんじゃない。
誰かが解決してくれるものでもない。
その「誰か」こそが最も危険なことを構造面で創り出しているかもしれないのだから。

だから彼らを私が「救う」とか『与える」のではなく(魚をあげる)、彼らが自分と周りを「救える」やり方を一緒に考える日々(魚の釣り方)。
by africa_class | 2013-01-23 11:31 | 【徒然】毎日がアフリカ
<< 援助・開発関係者が読むべき論考... グローバル土地収奪に関する国際... >>