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【自壊する日本の外交力】モザンビーク和平後最悪の危機:死者50人(公式)、100人以上(非公式)

阪神淡路大震災から19年。
アルジェリア人質事件から1年。
色々な事を考えた一日だった。体調悪く、再び布団の中で・・・。

あまりセンセーショナルに書きたくないのですが、このこと(モザンビークで起きていること)について、日本のメディアにはまったくでないので・・・。

2000年のモザンビークを襲った大洪水の時のような気持ち。
でもあの時は報道自体が皆無だった。
でも、今回は、モザンビークについて、モザンビークから山のような記事と映像が日本から送られてきた。でも、「問題の核心」がすっぽり抜け落ちていた。

首都マプートの煌びやかなホテルの様子、フラッシュ、立派な政治家・企業家たちの姿。すべては滞りなく、未来を予感させ、美しい。。。その500キロ先のイニャンバネで何が起きようとも。1000キロ先の中部地域で、4000人が難民となって家を追われようと。

モザンビークには問題なんてないのだ。
あるのは、資源と広大な「余った」土地と、気の良いアミーゴ(友達)だけ。
みんな、日本の投資と援助を待っている。
まだまだ貧しいし、教育も必要。そういえば、保健衛生や農業もね。
中国のは搾取で、日本のはそうでないよう気を付けるから大歓迎!
インフラと鉱山開発だけど、
なんせ「人材教育」もついてくるし。
大学間協定も結んだ。
・・・・そんなストーリーが新聞紙面を沸かず。

中身についても色々書きたいけれど、今日のところは「首都の最高級ホテル・ポラナの中と外の現実の違い」にのみ焦点を。

安倍総理が行っている間にも、刻一刻と状況は悪化していましたが、共同声明で「治安強化」等が強調される始末。。。これでは、モザンビーク国内で起きている暴力と抑圧、民主化の後退にお墨付きを与えたようなもの・・・ああ、誰が助言しているのでしょうか。モザンビークにおいてさらに「日本」の名前に傷を残してしまいました。

招かれておいて、大統領が自我持参するのに「いやちがう」とは当然いえず、「はいそうですね」ということになり、声明にまでこれが書かれると、日本が今の状況を「認めた」ということになります。つまり、「紛争の当事者にそのままどうぞやってください。支持してますから」とお墨付きを与えたわけです。

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共同声明
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/page3_000615.html
ゲブーザ大統領は,モザンビ-クにおける現在の政治情勢,特に2013年11月に実施された地方自治体選挙が平和裡かつ公正な方法で行われたと説明した。また同大統領は,モザンビークが地方で治安上の試練
に直面しており,同国政府が対話を通じ秩序回復に努ていることを伝達した。
安倍総理大臣は,粘り強い対話を通じて国家の安定に向けて取り組むモザンビークの努力を支持する旨表明した。
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そし、ここにお得意の「対話」という言葉が出てきます。

勿論レナモも批判されるべきですが、そもそもこのような事態に陥ったのは、政治問題、あるいは警察の出る程度の治安問題に、国軍を使って野党党首の拠点を軍事攻撃して野党議員を殺し、党首の「首を取ろうとした」こと(防衛大臣ははっきりそう述べています)。なので、今でも党首は逃亡中。

で、どうやって「対話」????当然ながら、未だにレナモ党首と「対話」は実現していません。そもそも「首取り」に軍隊で来られて、ノコノコ出て来れないのは彼がどんなに問題のある人物でも、それぐらいは理解できるかと。なのに、一方的に会談の日時と場所を指定しておいて、たくさんのメディアを呼んで、「忍耐強く待つ姿を報道させる」・・・ことで、「はい。対話終わり。来なかった方が悪い。せっかく折れて対話の席についたのに。ご招待したのに」・・・という茶番が繰り返されています。

4月からずっと「国際監視団の同席」を求めてきたレナモ側の要求を政府は一切聞かず。この判断をしているのが、現農業大臣(プロサバンナ事業の担当大臣として一躍日本関係者に有名に)で次期大統領候補(自他共に)のパシェコ大臣(レナモ交渉担当大臣)です。そして、何を隠そう、元内務大臣。

そして、国際社会が批判するこの間のゲブーザ政権の軍事対応や「対話問題」に、わざわざ日本のトップが共同声明で「支持」を出してしまった・・・。こういうの「外交力」と呼ばない。国民と諸外国にクレームを受けている為政者と握手をするのはとっても簡単。なんの知恵も工夫も要りません。だって、「交渉」ですらない。

島国だからでしょうか。あまりにわかってなさすぎる。
「初めての訪問」である以上、タイミングが重要だったのに、わざわざモザンビークが独立してもうすぐ40年も経って、あるいは和平合意後順調に進んで22年・・・の、最悪のこの瞬間に!?????!!!
いや、「初めての訪問」ぐらい、関係が薄いから、本当に社会のことが分からないのでしょう。外交の事・・・はさておくとして。

そもそも今回の危機は、ゲブーザ政権が、選挙直前に、自ら戦闘状態を創り出して、「強いリーダー」を「演出」しようとした浅はかな考えによるものでした。

しかし、事態は泥沼化。特に、中部地域では、疑心暗鬼な権力側の不当逮捕や若者の軍への強制徴用、そしてついに先日レナモ政治家の暗殺などがあり、住民のFRELIMO政府への反発は強いものになってきちます。

ほっておいても滅びかけていたレナモを、逆にこれで息を吹き返させることになるかもしれません。幸い、第三政党のMDMが中部中心部を政治的に抑えているのですが、MDMもかなり選挙妨害を受けていたので、共に彼らが手を組むとどうしようもなくまずいことになる可能性が出てきています。

その前に、大統領選挙が10月にあり、おそらく、次の狙いは「非常事態宣言」でしょう。
そうすれば、唯の政府の悪口だけでも取り締まれますから。国家反逆罪とかで。実際、すでにゲブーザの退陣要求を出した研究所所長が検察に取り調べられているところ。その退陣要求を掲載した新聞2紙も同じ目に。しかも元々フェースブックに書いたもの。そんなんで「逮捕できるの?」・・・本来できません。もちろん、人権侵害です。しかし、強権下の国家権力とはそういうものなんです。つまり、このこと一つでも、モザンビークの人権(表現の自由)はきわどいところにきています。肩書きのある著名人ですらこの状態。ましてや一般市民に対して行われる日々の抑圧など・・・。

このように現政権が、どうしようもなくバッド・ガバナンスをやっている最中に、他の外交団がこの政権との距離をおいて、なんとか平和に戻そうと尽力している最中に、モザンビークに初めて日本の首相がノコノコ握手しに出かけて行っている・・・日本外交のセンスがどうしても理解できません。「アミザージ(友好)協定」と呼んでいるらしいですが、本当にアミザージを結ぶべき「真のモザンビーク人」らとではなく、それらの人達を抑圧する政権と、それが今暴力化している最中に「友情を交わす」・・・ということの全モザンビーク的、世界的、歴史的意味を、今一度考えてほしいと思います。

あるいは、これから日本は、そういう権力者とドンドン組むんだよ、資源と市場のために(中国みたいに!)という表明だったの?!恐れ入りました。。。でも違うよね、きっと。

ちなみに、「人材育成」5年間で300人って年間60名。ポルトガル語のクラスの2つ分ぐらい。そして、これ一年間とかディプロマがもらえるぐらいのものではなく、数週間のものですよね?これまでJICAの人材育成事業(研修)に3年関わってきましたが(フランス語圏アフリカの治安・司法部門の人達の平和構築研修)、そしてかなり良い研修ができた自負がありますが、それでも毎年60名を「研修」して、その国の何かが変わる・・・というわけでは当然ありません。

本気で資源の呪いを回避し、汚職を避け、資源開発を地域社会や住民に還元するのであれば、「急いで掘るな」の一言です。国家が公正なる分配を確実にし、モニタリングの主体・仕組みを整えるプロセスを醸成していくしかないのです。

しかし、仕事でモザンビーク事情を把握している人たちは一体何をしているんでしょう。ポルトガル語読めないからこうなるのかな・・。読めても、本当に起きていることころをみようとしない、自分の都合の良いように解釈するため・・・なのか。あるいは、どうでもいいから・現地社会で起きていることなんて?

結局、ゲブーザ政権が「治安」を「維持」してくれればそれでいい・・・・のでしょうね。「臭いものに蓋」・・・そうやって「平和と安定」を語ろうとする。

だからアルジェリア事件のようなことが起こるということを、1年経っても理解がないようです。「危機管理セミナー」を企業と政府はやっているそうですが、なぜこのようなことが起こるかのルートコーズ(根本原因)・土台から理解できていない以上、近い将来の悲劇は避けられないと思います。このような外交が、めぐりめぐってますます日本人を危険に晒すのですが。

「アフリカが危ない」のではなく、「アフリカを危ないところにする外部勢力の一つ」に、日本も声高らかに参入した宣言===が、今回の訪問の一つの結果でもあったと思います。


■地元O Pais紙「モザンビークで政治軍事緊張の288日間で50人が死亡」
”Mais de 50 pessoas mortas em 288 dias de tensão político-militar no país”
Sexta, 17 Janeiro 2014 00:00
http://opais.sapo.mz/index.php/politica/63-politica/28524-mais-de-50-pessoas-mortas-em-288-dias-de-tensao-politico-militar-no-pais.html
「2013年4月4日の最初の軍事攻撃の開始以来、市民・政府軍・レナモ軍の間に50名以上の死者が出ている。ただし、この数字は公式に確認されたものであり、死者数は100人前後と考えられる。1992年の終戦以来、最悪の危機である。これは、10月の半ば、政府軍がアフォンソ・ドゥラカマ(野党党首)が拠点としちたサントゥンジーラを占領してから悪化した。以来、レナモのゲリラ兵が国の中部での攻撃を強化しており、北部と南部に拡大しようとしている。」

そして、この最中に(いやこの最中だから9、わざわざ首都で「ゲブーザ大統領を讃える市民のマーチ」の開催をFRELIMO党の書記が発表。なんか本当に、どこぞやの国に似てきました・・・・。21世紀というのに、真逆をいこうとするモザンビークの為政者たち。当然、snsや独立系新聞で、この情報は「笑いのネタ」となっています。。。。でも、権力者というのは、こういうのを大真面目でやるんですよね。特に、「太鼓持ち」のみなさん。競って権力者に好かれようとする。こうやって、民衆と権力中枢部との乖離がどんどん生まれるから、政治運営はどんどん暴力的・対立的になる。

■O Pais紙 FRELIMO党は土曜日にゲブ-ザ大統領を讃えるため2万人を期待
Frelimo espera cerca de 20 mil pessoas na homenagem a Armando Guebuza no sábado
http://opais.sapo.mz/index.php/politica/63-politica/28526-frelimo-espera-cerca-de-20-mil-pessoas-na-homenagem-a-armando-guebuza-no-sabado.html

ということで、どうだったのか?
政府系は2万人を強調しますが、独立系新聞の建物屋上からの映像をみてみましょう。
http://www.verdade.co.mz/destaques/democracia/43357
10月31日の平和マーチと比べて少ないですね。
この記事のタイトルは、「マーチはゲブーザ大統領の人気のなさを確認してしまった(Marcha de exaltação confirma impopularidade do Presidente Guebuza」

当然、FRELIMO党という40年にわたって権力の座につく政権与党によるマーチ。下部組織も農村から都市の地区まで根をはっており、その動員力は都市部でも農村部でも凄いものがありました。一声かければ集会なんて人集めは容易。逆に集会に行かないとしたら、酷い目に合うことも。その組織的動員力で、しかも基盤の南部でも、この程度の人数???というのは、確かに驚きです。

で、集められた人達の声が面白い。
「ゲブーザ大統領が今年で任期が終わりなのでお別れの会だと聞いてやってきた」という人の声多数。実際、党の書記長はそのように宣伝。しかし、「大統領がいない!どして?わざわざ来たのに!」FRELIMO党員のマーチ参加者の中の声を新聞は紹介しているのですが、「パパ・ゲブーザに、レナモとの紛争を止めろと言いに来た」「平和なしに発展なしといいに来た」が、「大統領がいない!」と。。。

太鼓持ちが大統領の支持をみせるために企画し、次期大統領候補の2名(上述パシェコ大臣など)がその忠誠と後継者ぶりを示すために現れた集会である以上、大統領自ら現れる必要ないのです。が、あまりに盛り上がらず、逆に不人気ぶりを露呈した・・というのがこの新聞の報道。

なお、北部の中心地(ナカラ回廊)のナンプーラ市では、地方都市選挙において、歴史において初めて第三政党MDMが選挙に勝利しています。つまり、FRELIMO市政は反対されたということ。日本の外交関係者らは、何故かまことしやかに、「何度も投票が行われ、投票率がすごく低い状態(20パーセント台)で行われたため野党に有利に働いた」というのですが、これは民意を否定するもの。なんか、与党が勝てば「民意が示された」と主張し、野党が勝てば「といっても一部の意思」あるいは投票率を問題にする・・・・日本と同じですね。

そもそも、ナンプーラ市でMDMが勝利したことの背景。
●歴史的にFRELIMOが弱い地域
●初回の投票用紙が与党に有利に作成されるなど政府や選管への不信感
●都市では、動員力が大きい(行政・学校・病院などの機関の職員は全員与党の党員カードを取得させられている)FRELIMOこそが有利のはず。日本の選挙でも、「組織票」がいつも低投票率の際に決定的に重要。しかし、公的に動員ができるFRELIMO候補者が落選。
●つまり、3回投票を重ねるうちに、組織的動員を回避することは容易になり、本当に政治を変えたい人だけ(真の投票者)が投票に行った。FRELIMO党員カードを持っている人ですら、FRELIMO市政を望んでいたわけではなかった。

ということですね。
日本の選挙分析でもされないような、「低投票率は野党に有利」ということを、日本の外交関係者らが平気で口にすることが、今のモザンビーク情勢の把握のおかしさ、日本・モザンビーク関係が本来望ましい方向にいかない決定的な理由でもあります。

つまり、物事の理解をすべて自分たちの「現政権とのコネクション堅持=資源・援助」という論理でしかみられない。。。。。。狭い関係者らの思い込み、思い付きの理解ばかりが、流布され、検証もされないまま、まことしやかにぐるぐる回る・・・・かつて、UNACを野党だ、一団体だと言い張ったように。

そしてこれも言われていないことですが、深刻なことに、ナカラ回廊沿いにあるプロサバンナの対象地でもあるナンプーラ州のムルプーラ郡(調査団でも調査に行ったモゴヴォラス郡のすぐ横)で機動隊による一般市民3人の殺害がありました。そして人権リーグが国に対し、調査を求めています。すべて同じ銃弾での殺害だったそうです。レナモだといって殺されたようですが、詳細は不明で、少なくとも狩りの一般市民も含まれているようです。

■Vítimas de fuzilamento em Murrupula exumadas
http://www.verdade.co.mz/nacional/43301-vitimas-de-fuzilamento-em-murrupula-exumadas

どこで衝突が起きているかは、以下の地図で確認が可能です。
http://www.verdade.co.mz/

なお、誤解をされてもいけないので。
私は、援助のすべて、人材育成のすべて、農業支援のすべて、投資のすべて、に反対なわけではありません。当然ながら。そのいずれもを、モザンビークで20年にわたって実践してきました。もちろん、とってもとってもミクロな規模で。トライアル&エラーのなかではありますが。

問題は、何故やるのか。

もうこれに尽きると思います。Win-WInって聞こえはいいけれど、本当はとても難しいこと。中国の互恵関係と日本のwin-winは同じノリなんだけど、要は我々も設けないのであれば、あなたたちと関係結びません・・・ということなんです。

民間である以上しかたない・・・そりゃそうだけれど、実は本来は「儲け」は後に来るはずなんです。win-winにも順番(優先)があるはず。そこが見えなくされているから大問題。またこrもいつか書きます。ここが、実はすごく偏っていることを見破られているから、モザンビーク市民社会は怒ってのです。

ということで、何故何のためにやるのか・・・という問いが考え抜かれ、共有され、合意されなければならないおですが、御多分に漏れず日本のあらゆる政策や行為において「何故何のため?」という一番根っこの部分は、最後に回される傾向にあります。だから、上手くいかないすべての責任もまた曖昧にされる。あるいは、問題があっても止められないまま続いてしまう、のでした。

だから、目的が明確になるのが大前提。
その上で、誰とやるのか。
とすると、何をどうやるのか。
だから、いつやるのか。
ひと様の社会で何かをやる以上、当たり前ですが・・・。
by africa_class | 2014-01-17 23:05 | 【情報提供】モザンビーク
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