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デンマークで大学無料&学生に月10万円が支給されていることについて

先週、デンマークのオーフス大学に呼ばれてレクチャーに行ってきた。
講演タイトルは「日本のグローバル・アグロフードシステムへの援助・外交・投資を通じた関与:1890年から現在まで」。久しぶりだったのでやや緊張したが(見えなかったと思うが…)、伝えたいメッセージは伝わったと思う。つまり、(1)どうやら我々は負の歴史を21世紀になっても繰り返していること、(2)構造が戦前に似通ってきていること、(3)他方で下からの動きが国連などの場を通じて国際規範を変えつつあること。で、(2)については、マネーと結びつく為政者らのパワー、そこに中間層がポピュリズムを通じてくっついていくこと、底辺に位置づけられる人びとの搾取が再生産・拡大されていくこと、これが日本や南の国々だけでなく、世界的に展開しつつあること。だから人類が長い歴史のなかで闘い勝ち取ってきた民主主義を、どう鍛えていくのか・・・そいう狙いまで伝わったかは分からないけど。

「食」をいまこの世界で考えることは、私たちの日々の暮らしと世界に繋がる沢山の課題に気づかせてくれる。なので、最初に、全員に昨日何を食べたのか、求める社会や世界像がどんなものか話してもらって、最後はそこに戻ってみた。

この世界には「どうせ何を期待しても、希望しても、無理。構造を変えることなんて不可能。どうせ自分はチッポケな存在」という諦めモードが蔓延している。なので、無理かもしれないけど、夢をみないのであれば、もっと状況が酷くなることについて、ちょっと皆で考えられたらいいなーと思った。これは大学で教えてたときに、最初の方の授業で全員とやってたこと。「変えられない感=無力感」は、社会に最もパワフルでネガティブな影響を及ぼすものだから。歴史がそれを証明している。そんなところに、ヘイト意識とか、資源戦争とか侵略とかのガソリンを投入すると、ばっとやる気満々になる人が急増したのも、歴史が示すところ。日本だけの話ではない。ここドイツもまたそうであった。その結果もたらされたのは、ホロコーストと呼ばれる人間によるある特定の背景をもつ(とされる)人間の「消滅」を目的としたジェノサイドだった。まだ、あれから70年程度しか経っていない。

さて、いつも前置きと書きたかった中身がマッチしないのがこのブログの特徴。だけど、実は私の中ではすべて繋がってはいる。

ドイツの公立大学の多くが無償であることについては広く知られていると思う。ただし、ドイツの大学に入るには、アビトゥアというとんでもなく難しい大学検定に通らないといけないので、そんな簡単なことではない。アビトゥアのレベルは日本の大学の教養ぐらいなので、高校を出ただけでは検定で良い点は取れないので、卒業後に独学で2,3年勉強する人も少なくはない。だから、ドイツの大学生は歳を取っている人も多い。もちろん、卒業後いろいろやってから大学に入ろうと決意する人が多いことも影響がないわけではない。

ドイツの話はまた今度。
さて、デンマークの大学の話はあまりに衝撃だったので(私にとってすら)、根掘りは掘りきいてきたことを書いておきたい。本当はリサーチしてから書きたいのだけど、オーフス大学の先生に聞いた話なので、とりあえずその前提で読んでいただき、あとは各自でリサーチを。

なお、デンマーク大使館サイトには大学無料(EU市民等。それ以外は有料)という点は書いてありました。
http://japan.um.dk/ja/infor-about-denmark/denmark/welfare-and-education/

【デンマーク大学事情】
(1)国立大学は無償
(2)入学後、各学科の規定の在籍期間は月10万円程度の生活支援費が政府から全員に払われる。(税金はかからない)
(3)留学中も受けとれる。
(4)半年休学して世界を放浪などのときは、その期間を受けとらず、戻ってきてから再開できる。
(5)成績が悪い、大学に来ないなどの場合は支給を止められる。

Woow!そんなんなら、私ももう一度大学行きたいわ・・・とつい言ってしまうほどの好条件。先生いわく、それぐらいしないと、若者がなかなか大学に行ってくれない、とのこと。「大学に行ってくれない」とは凄い台詞だと思う。ちなみに、先生は50前後なのだけど、先生が大学生時代からあった制度ということで、もう30年近くこれをやっていて、デンマークは財政破綻をしていないという事実に皆さん注目を。

【デンマーク博士課程事情】
(1)在籍者は月30万円相当が「給料」として支払われる。(税金は支払わないといけない)
(2)仕事はティーチングアシスタントと「博士論文を書くこと」
(3)この期間に産休を取って、子どもを何人か産む人も多い
<=博士号をとっても就職先が少ないため。

こちらも就職先の問題がるために、候補者が沢山いるわけではないとのことでした。ただ、大学生も院生も英語は極めて堪能で、デンマーク外に仕事を求めて行く人も多い。実際、デンマークから出る人も、デンマークに働きにくる人もいて、国際的。私が会った大学の先生の多くはデンマーク人以外の人、ドイツ人2名、エルサルバドル人1名でした。授業も英語。(デンマーク語でとれる授業もあるらしい)

で、みなが気になる「社会保障が充実=税金負担が重い」という点は?
確かに、物価は安いとはいえない。
でも、スーパーで買い物をしても、外食しても、日本より「食べる」ということに限ればむちゃくちゃ高いとは感じなかった。

例えば…
ワインカフェでワイン一杯370円
野菜のスムージー(大サイズ)で350円
超もりもりのサバの薫製のサンドイッチを素敵なお店で買って400円
豆乳ヨーグルト、ブルーベリー1パック、プラム1キロを買って850円
(すべて税込み価格)

先生にも聞いてみたが、所得税は確かに高いといっていた。そのうえで、「給料も高いから」とさらりと一言。
「給料・・・高いのね・・・」

先生はコロンビア大学でも教えてたことがあるし、日本にも留学していたので、いろいろ大学の先生の懐事情もよく知ってる。日本の国立大学で教えていた私の給料は、実はドイツの親が経営するシュタイナー学校のフルタイムの先生の給料より安かった・・・。この事実はしっかり胸に刻んでほしい。

で高い給料が実現できるのはなぜなのか?
人口が少ないとか、色々いえるかもしれないけど、ちょっと待って。
そもそも、2000年以降まで、ひとり当たりのGDPは日本とデンマークではほとんど変わらなかった。
http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=NGDPDPC&c1=DK&c2=JP

そして、日本の税金や社会福祉の負担額は高給取りには安いのだけど、中間層から下には決して安くはない上に、ヨーロッパにあるような低所得家庭へのフルのサポートがないので、貧困の再生産が繰り替えされ、悲惨なことになる。

その意味で、結局は「税金負担額が多いか少ないかで福祉制度の充実が決まる」のではなく、国家予算や政策の優先順位こそが重要なことが分かる。

そして、その優先順位を誰が決めるのか?というと、ヨーロッパでも有権者が選挙で選ぶ政党や政治家を通じてという部分が確かにあるのだけれど、それを支える市民社会のコンセンサス(自分たちの権利として社会福祉を国家に保障させる)がある点についても注目しておきたい。

政府や税金は自分たちの求める社会像を実現に近づけるためにあるのであって、自分たちを規制したり、自分たちからただ奪うためにあるわけではない・・・この「民主主義(主権在民国)の当たり前」は、とにかく何度でも日本の皆さんに伝えたい。

ドイツでも、デンマークでも、30年前に、人びとが勝ち取った制度であって、それを人びとが一生懸命守り育ててきているのだということも知ってほしい。(つまり、天からふってきたわけでも、ヨーロッパだから普通というわけでもない。日本でもできるということ)また、油断するとあっという間に、「企業の競争力ために」とかいって取り上げられかねない労働者の権利や市民の権利が多くあり、ヨーロッパ各国でも常に市民が声を挙げ続ける必要がある。

ただ・・・日本はそれ以前の状態にあるのも事実。
住民・国民のために使われるべき国家予算を、アメリカの大統領に言われたから高額の武器を買わされました、住民が反対しているのに基地を米軍のために作ってあげます、なんだか低レベルの大学だけど首相のお友達だから100億円ぐらい土地代を含めて融通しましたとか、クールジャパンのお店をマレーシアにつくって億単位でお金流してますとか、そうことを許して、さらに10%に消費税をあげたとしても、デンマークやドイツが実現している社会福祉は決して日本の私たちの手に届くことはないでしょう。

つまり、予算を何に使うべきなのか・・・を真剣に考えないと、もうすでに大変な状態の社会がさらに大変なことになって、若者・子どもたちに申し訳が限りなくたたないわけです。

また、さっきのデータ(ひとりあたりGDP)をみてもらえれば分かるように、1990年代前半は日本の方が勝っている。しかし、2000年代に入ってからどんどん差がついてきていることがこのグラフでも一目瞭然。

つまり、21世紀的な新しい時代・世界についていけているのか、いけてないのかという点が見逃せない部分。やはり、世界で活躍できる、EU地域、世界とつながれる、イノベーションをうめる人材を育てているか否かは決定的に大きいと思われる。

大学にくるまでのデンマークの教育は実に斬新だという。
自主性、主体性に徹底的に委ねる点で、シュタイナー教育とかなり似ている。
成績もつけない。評価をしない。
それぞれの尊厳を認め、それぞれがそれぞれの意見を持つこと、それを伸ばすことに重点がおかれているという。

しかし、大学に入るための準備段階から評価が出て来て、大学に入るとやはり評価システム(試験やレポート)があるので、学生たちはストレスで大学に来なくなることもあるという。また、中間テストをやろうにも、「なぜそれが必要なのか」を学生と相談・協議して、コンセンサスをつくらないといけないので、とっても大変とドイツの上から目線大学教育を受けたドイツ人の先生たちはこぼしていた。

先生と学生が一緒に授業をふりかえるという時間ももたないといけないらしい。これは教師にとってはチャレンジングだけど、とっても良い方法だと思った。結局、大学教育がなんなのか?・・・と考えれば、一人の人間としてどうやって知的に社会的に立てるひとを育てるのかが問われている以上、学生からみたときの授業のあり方というのは大学が重視しなければならない点でもある。

そうやって自由に育ち、批判的に考え、自己を確立していった若者は、たしかにこの混沌とした、そしてAI時代には強いだろうなと思った。実はドイツよりデンマークの方が気に入ってしまったのだけど(若者感じも含め)、デンマーク語をとてもマスターできる気がしないので、とりあえず隣国から時々お邪魔してみようと思う。

とりあえず、以上見聞きしてきたことをとりとめもなく書きました。
(原稿の締切問題が継続中なので、これにて失礼)
またフォローアップしますね。
介護の話も衝撃的だったので、これは絶対お伝えしたい。

写真はオーフス大学考古学部のキャンパス。
どこかの隠れ家ホテルにしか見えない!

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考古学キャンパスの森

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現在の考古学部の建物。茅葺き!以前はここが博物館だった。



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by africa_class | 2018-10-22 21:01 | 【紹介】ヨーロッパのあれやこれや
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