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afriqclass.exblog.jp

【中身紹介】今週、モザンビークの研究所から出版した論文「プロサバンナの興亡〜三角協力から「小農抵抗」対抗戦略のための二国間協力へ」

昨夜に続き珍しく連投しておきます。
https://afriqclass.exblog.jp/239843535/

昨夜は、安倍政権下での日本の行政(援助行政を含む)を考える上で重要な、「匿名性」を打ち破るとともに、真実を追求していくことが、戦前・戦中の過ちをくり返す不穏な空気を押し止め、未来をきり拓く可能性について取り上げた。

日本陸軍が戦争に負けた瞬間にしたことが、大量の文書を燃やし続けることだったことを想起してほしい。もし、これらの文書が公開されるもので、軍人や政府関係者やその周辺の名前が晒される前提であったら、あそこまでの悪行を重ねただろうか?・・・そこを今一度考えてほしいのだ。

「日本軍」「日本政府」「JICA」「外務省」という組織を盾に、個人が名前を晒しては決してやらないことが続けられるとすれば、それはやはりおかしい。だから、JICAと外務省で、プロサバンナに関わるすべての情報、そしてその関係者の名前をきちんと記録・公開しておくことが、民主統治が風前の灯のこの国の今だけでなく、歴史の検証という意味でも重要だと考える。(名前を記すことで、思考停止から逃れ、人間としての尊厳を取り戻す機会がひらかれることについては、昨夜のブログを)

さて。今週モザンビークの研究所OMR(Observatorio Meio-rural)から出版された、私の英語とポルトガル語の70頁を超える「大作」論文の紹介を。


THE RISE AND FALL OF PROSAVANA:
FROM TRIANGULAR COOPERATION TO BILATERAL COOPERATIONIN COUNTER-RESISTANCE

by Sayaka Funada-Classen

https://omrmz.org/omrweb/publicacoes/or82/
(*ポルトガル語・英語版がダウンロード可能)


こんな分量(70頁…)の英語のペーパー…よむ気になりませんよね(笑)?
なので、概略と目次を日本語にして紹介しておきます。

【概要】
日本、ブラジル、モザンビークの間で、2009年に署名され、世界最大の土地収奪事業の一つと呼ばれた、あの有名なプロサバンナ事業に何が起こったのか?

「プロサバンナはもう死んでしまったのか?あるいは未だ続いているのか?」

これらは、この三角協力事業や民衆の抵抗に関心を寄せる人びとから、頻繁に寄せられる問いである。プロサバンナは、10年にもわたり、世界中のジャーナリストや研究者、実務者や活動家の関心を惹き付けてきた。しかし、この事業の全容を掴むことは容易ではない。

現在も、この事業は続いている。どのように続いているのか、なぜ続いているのかは不透明なまま。

この不透明性はどこからくるのか?それは、この事業が生き延びるにあたって、最も重要なプレーヤである日本の事業関係者に付随する複雑さと不透明性に起因している。プロサバンナ事業は、日本の資金なしには存在することすらできないからである。


したがって、この事業に関心を寄せる人にとって、日本の関係者の言動、文書、コンテクスト(文脈)の理解は不可欠であるが、これは極めて難しい。


以上から、本ペーパーは、日本のコンテクストに焦点をあてながら、日本の関係者の一次資料や会議記録などをもとに、プロサバンナ事業の歴史を掘り起こしていくものである。


【目次】

*英語から日本語にするととっても異様な目次になってしまうのですが、大体こんなことを書いていますということが分かると思うので紹介しておきます。英語の直訳だと伝わらないところは言葉を補ってます。


「プロサバンナ表と裏の歴史書」と思って眺めると理解できるかと思います。


*なお、ほぼすべての行に注がついており、その根拠としてJICAの一次資料(文書)か会議録のリンクをつけているので、各自で原典も含めて確認下さい。


1. 興るプロサバンナ(The Rise of ProSAVANA)

(1) アフリカに「セラードの成功」を!

(2) 中国への対抗心と日本の国際評判向上戦略

(3) プロサバンナ実現のための日本のイニシアティブと主導的役割の実態

(4) モザンビークへの日本・ブラジルによる投資促進共同ミッション

(5) ブラジルのFGVによるナカラ・ファンドとJICAとの関係(利益相反問題を含む)

(6) プロサバンナ開発イニシアティブ基金(PDIF)とマスタープラン


2. 小農による抵抗(Peasant Protest)

(1) モザンビーク最大の小農運動UNACによる反対の表明

(2) 「伝統的ドナー(援助国)」としての日本における市民社会の役割


3. JICAによる「小農抵抗」対抗戦略(JICA’s counter-resistance strategy)

(1) 小農の声の矮小化を図る

(2) プロサバンナ・コミュニケーション戦略

(3) 「外国の陰謀説」の最前線にモザンビーク政府関係者を配置する

(4) プロサバンナとセラードや土地収奪とのリンケージを神話化する

(5) プロサバンナをナカラ経済回廊開発から切り離す

(6) プロサバンナを土地収奪事業から切り離す


4. 三角協力から二国間協力へ(From Triangular Cooperation to Bilateral Cooperation)

(1) 日本における「止まらない公共事業」の慣習

(2) JICAに唯一残された「出口戦略」:「対話」とその既成事実化

(3) JICA資金で開催された「選挙集会のような『公聴会』」

(4) 地域社会における与党フレリモ支持構造を強化する


5. 2国間援助による「小農の抵抗」への対抗戦略(Bilateral counter-resistance strategy)

(1) UNACへのJICAと農業省による介入、そして代表の死

(2) 内部告発者のリークによって明らかになったCIAのような諜報活動

(3) JICAのためモザンビーク市民社会への「入口」を準備する

(4) 共通の敵「プロサバンナにノー! キャンペーン」を弱体化させる

(5) UNACの取り込み戦略、その失敗の結果としての矮小化作戦

(6) 現地NGOとのコンサルタント契約によって市民社会の「分断統治」を実現する

(7) 事実に基づかないインセプション・レポートへの資金投入による分断支援

(8) プロサバンナに支援された企業による土地収奪の事例

(9) 日本でのJICAの対抗言説確立のための支援活動

(10) プレスツアーの企画と対抗言説の拡散


6. 小さな勝利と「サティアグラハ(Satyagraha=真実の力)」

(1) JICA理事長への公開書簡

(2) 真実の力と外務省局長の決断

(3) 異議申立プロセスへのJICAの介入

(4) 日本の外務大臣による「指示」

(5)マプート行政裁判所によるプロサバンナ違法判決

(6) 訴えられた「農業省プロサバンナ調整室」とJICAの関係


7. プロサバンナの現状と歴史的起源(Current situation and historical roots)

(1) 使い古したトリックに戻るJICA:「地元受益者」の創出と社会分断、対抗言説への利用

(2) ナカラ経済回廊開発(天然ガスを含む)の推進によりプロサバンナの当初計画を実現する

(3) プロサバンナの歴史的ルーツ:中国北東部/「満州国」


8. 結論



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by africa_class | 2019-12-06 21:47 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ
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