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Lifestyle&平和&アフリカ&教育&Others

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講師の下平さんからお返事

4月に公開講演会に来てくださった下平明子さん(元大使館専門調査員・
JICA専門員・現モザンビーク在住)から皆さんの質問へのとても丁寧な
お返事が届きました。

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教育
モザンビークの初等教育で改善すべき問題は
(答)改善するためには多様な対策をとることが必要ですが、特に教員の質の向上、自動進級制度の見直し、また各学年の進級テストの実施などが必要。
都市部と郊外の先生の質の違いは?
(答)都市部ではある程度は必要学歴を満たす教員が確保できるが、郊外、僻地では無資格教員が中学校では半分以上である。内戦後初等教員養成が進められ、有資格教員の割合は増加したため、都市部と郊外における教員の質については、それ程差異はなくなってきている。しかしながら、戦後着実に進学者数が増えた中学校については、教員養成が間に合わず、高校卒業者が、教授法や教育心理学など何の訓練もなくそのまま教え始めるケースが激増した。とくに郊外・僻地ではそれが顕著である。
教育の質を改善するための方法はあるのか
(答)教員の質の向上が不可欠。定期的な教員研修が効果的。
教師の養成大学はどれぐらいあるのか
(答)初等教員養成学校(中卒レベルを1年集中教育する学校)モザンビーク全11州それぞれにすくなくとも2校存在する。
中等教員については、2007年ごろから高卒者に教員大学で1年間集中訓練する制度が開始した。教員大学は1校のみしかなく、首都マプトに本部があり、支部がここ数年でほぼ全国各州に開校された。高等学校教員は、大学卒業者に限られるとされており、多くの教員大学卒業者が高校教員となる。
なぜ教員研修は困難なのか
(答)予算的制約
なぜ教師が少ないのか
(答)内戦後着実に初等・中等教育進学者が増加したが、教員養成数がその増加に全く間に合わなかったため。
教師の増加率は
(答)不明
教師の社会的位置づけは
(答)それほど高くない。より優秀な人材は民間や省庁就職を目指す傾向にある。
公教育制度は整っているのか
(答)質に問題はありますが、小学校数は拡大に増え、何とか徒歩通学距離(遠い場合は片道20kmと小さな子どもが歩ける距離ではない。)が短くなってきており、整ってきている。中学校については、全国各郡に少なくとも1校設置されているが、十分ではなく、高校については、各郡設置は学校設備と教員人材の不足から難しく、不十分。大学は首都および地域拠点に集中する傾向にあり、狭き門となっている。
モザンビークの子供たちの1番好きな科目は
ポルトガル語、音楽、図工、理科
モザンビークでの就学率は
(答)モザンビークの関連教育指標について以前まとめたものがあります。ご参考までに以下添付します。数字をじっくり見つめると見えてくるものがありますね。
教育年全体内女子
非識字率(3)200453%68%
全初等教育の純就学率(3)200583%
前期初等教育修了率の近年の変化(3) 199926%200557%
後期初等教育修了率(3)200534%28%
EP1教員一人当たりの生徒数(3)200574
前期初等教育留年率(4)20058.1%
後期初等教育留年率(4)200510.7%
前期中等教育総就学率(3)200521.4%17.5%
前期中等教育留年率(3)200528%
後期中等教育総就学率(3)20055%4%
出所:(3) Government of Mozambique “Plano Estratégico de Educação e Cultura (PEEC) 2006-2010/11” June 2006
(4) 教育文化省統計(2005年結果)

なぜ女子が少ないのか
(答)いろんな要因があります。まず男子より、女子のほうが家事手伝い、水汲み、畑仕事、より小さい兄弟の面倒に借り出されることが多く、学校におくる余裕が家庭にないこと。6歳での小学校入学が奨励されていますが、このような理由から入学が遅れる場合が地方では特に多い。仮に10歳で入学した場合、早期結婚が慣習となっている地域では、14、15歳で結婚し妊娠して、初等教育途中で教育を断念するケースも多い。多くの場合、小学校で教育を断念するため、相当年齢が中学校、高校を勉強する男女比を比較すると、特に地方では女子の割合がかなり低くなる。
女子教育の改善への方法は
(答)根気強く、地域リーダーや女性団体を通じて、女子教育の重要性を啓蒙する、ロールモデルとなる女子教員の増加、教育省の様々な層における女性幹部の登用、同時に戦略的取り組みの強化
みんな制服を着ているのか
(答)経済的理由から6割がたしか着ていない。
子供たちの卒業後の進路は
(答)近年の教育熱から可能な限り高い教育を目指す人が多い。大卒であれば、選ばなければ公務員、民間、あるいは自営業で就職することが可能。中卒、高卒で経済的理由で進学ができない人の中で、より優秀なものは、前者は初等教員養成学校、後者は教員大学での1年間の短期教員養成コースや看護士養成学校を目指す人たちが多い。
小学校卒だけでできる仕事は限られており、家事手伝い、自営業手伝い、畑仕事、女中、男中職、工事手作業などがある。
教材は何を使っているのか
(答)小、中、高校レベルについてモザンビークで検定を受けた教科書
どのような科目があるのか
(答)初等教育:算数、ポルトガル語、理科、体育、音楽、図工、(小学校高学年の6・7年生から)英語
母国語と公用語による教育
(答)公用語がポルトガル語であり、ポルトガル語教育で統一されている。
公用語は土着の言語に影響を与えるのではないか。それによる家族への影響はあるのか。
(答)公用語であるポルトガル語の使用については、疑問はほぼありません。というのは40を超える現地語があり、ポルトガル語が唯一の共通語となるケースが多いため。他方、初等教育の無償教育が進められていますが、教育の質の問題があることなどから、とくに地方ではクラスの半分弱が小学4,5年でも読み書きができない、という現象が生じている。その場合、現地語は依然主要な言語であり、家族・友人間の言語は現地語でありつづけているといえます。

教育無償化による変化はあるか

(答)ある。経済的負担が減ったことにより、子どもを学校に行かせやすくなった。しかしながら、入学費などの負担がなくなったことにより、小学校は、以前は入学費を自己資金財源として、学校の維持管理費や清掃人、掃除人への支払いを行うことができたが、初等教育の教育無償化により、その財源を失い、支障をきたしている。教育無償化となったため、父兄に寄付を求めても、得ることが困難となったという難しさがある。
モザンビークの学費は
(答)中学校以上、すべて必要。
学校とキリスト教に関係はあるのか
(答)国立・公立校については関係はない。
医者になれる割合は
(答)国立医学部は首都マプトの1大学(日本の東大に相当)にしか設置されておらず、定員は現在100名ほど。他学部と比べて難関であり、かなりの競争を得て、その中でより優秀なものが入学できる。ちなみに、高校卒業者が毎年4万人ほど、その上、進学浪人者も数多く、医学部に入学できる割合は(かなりつかみですが)1%以下。入学できても、他学部と比べて、訓練年数が長く、教育内容も多様で、試験も厳しいことから、途中で断念する学生も数多い、医者になれる割合は以前であれば0.5%、最近の緩和化で0.7%ほどかと思われる。

アフリカでの生活
アフリカ生活への不安はあるのか
(答)初めてアフリカ大陸に渡った94年当時は不安で一杯でした。しかし何度かアフリカと日本を行き来を繰り返し、99年ごろには、特にモザンビークに関しては不安を感じることはほぼなくなりました。他方、非常に治安が悪い南アフリカについては、何度訪れても不安を感じることが多いです。
アフリカではどのような生活をしているのか
(答)慣れてしまえば、平凡な毎日ともいえる。3度のご飯をつくり食べ、朝と午後に子どもの幼児教育を行い(あまりに僻地で保育所がないので)、家の整理整頓をし、飼い犬の面倒を見て、3日に一度ぐらい近くの市場に野菜や魚の買出しに出かけ、また友達の家に遊びに行き、時に旦那の仕事着のアイロンかけを行い、子どもが寝る前に絵本を読む、また新鮮な卵が手に入るときにはケーキを焼くというような生活をしています。また、私たちが生活するザンベジア州の州都キリマネは車で約3時間ですが、2・3週間に一度ぐらい買い出しに出かけたりもします。
すぐに地域社会に溶け込めたか
(答)基本的に用心深い人間なので、直ぐではなく、少しずつ、可能な限り主人の知り合いを通じて、知り合いを増やし、溶け込みつつあります。
アフリカでの生活で自分自身は変わったか
(答)両親などに確かめたいところですが、自分としてはかなり変わったと思います。アフリカに感化されて、もともとスローな人間だったのがもっとゆっくりとなったこと、家族と友人とのつながりを前以上に大切にするようになったこと、人の親切がとてもありがたく感じるようになったこと(歳をとったのでしょうね)、など。
モザンビークに魅かれた理由は
(答)温かくて、親切で、奥ゆかしい人が多いこと、また17年もの内戦の後の和平により、これから生活をよくしていこうという意欲に燃えた人が95年当時から2000年ごろまで多かったこと。
モザンビークから見た日本人の印象は
(答)生真面目、せっかち、短気、ジョークが通じない、ちなみに中国人と日本人の見分けは不可能。村を歩くと子どもたちによく中国人とはやし立てられる。
普段の子供たちの生活はどのようなものか
(答)家事手伝い、畑仕事手伝い、子守、水汲み、学校、群れ遊びで一日がすぎる。日本の子どもと比べて、よく家の手伝いをする。
モザンビークの産業は
(答)主要は農業と漁業、モザンビーク南部を中心にアルミ工場設置や天然ガスパイプラインプロジェクト、中部では石炭工場再建関連の海外投資が行われている。基本的に天然資源を利用した、海外投資が多い。
モザンビークの治安は
(答)隣国南アフリカと比べ比較的安全。しかしながら、南アフリカから流れてくる強盗集団もあるため、特に首都マプトではプロによる銀行強盗などが突発的に起こっている。
なぜモザンビークが貧しい国になったのか
現地語の習得方法は
(答)ザンベジア州の1現地語をゆっくりペースで練習中。主人の親類を中心に、基本的な挨拶や単語をポルトガル語から現地語に直して、メモを取って暗記。
お子さんへの教育方針は
(答)初等教育まではできるだけのびのびと外で遊ばせたい。その上でモザンビーク公用語のポルトガル語をベースとした基礎知識・学力を積み重ねさせたい。日本語については、私の両親と支障なく会話できる程度に会話の機会を作り続けていきたい。
将来の夢は

援助
なぜ国際協力(またはJICA)の道を選んだのか
(答)大学院で途上国開発理論を学んだが、それを受けて、開発の実践を行える組織で仕事をしたかったっため。
JICAの仕事をして良かったことは
(答)JICA本部で1年強職務についたが、その際かかわったモザンビークの教員養成校建設や橋梁建設などの案件の実現をその後現場で見て、裨益者とも会ってインパクトを確認することができたこと。JICA地域事務所(私の場合は南アフリカやモザンビーク事務所)での仕事は、専門家を支援したり、無償や開発調査案件の支援をしたり、案件発掘形成に関する情報収集をしたり、黒子的な地味な仕事が多いです。政府関係者と折衝することも多いですが、その際、非常に誠意があり熱意がある職員にであうことがあり、そういう方たちと一緒に協力案件を考えることができたのは喜びでした。
JICA就職に必要な技能などあるのか
(答)日本社会、組織でのチームワーク能力と協調性、途上国への適応性、ずうずしさ、押しの強さ、外国語の語学力
アフリカの人々とどのように関わっていきたいか
(答)彼らの目線に立って、一緒にどうやったら国をよくできるのが、依存するのではなくできるだけ自立的にそれぞれの生活を改善できるのか、を考えながら、問いかけながらかかわっていきたい。
最も取り組むべき課題は何か
アメリカで学んだ理論は生かせなかったのか
(答)いろんな理論があります。いろんな理論の実践を現場で目撃できたので、生かせたのだと思います。より適切な理論を模索中です。
理論を学んでよかったことは
理論と現状のギャップを埋める方法は
日本政府の援助の足りない点は
レシピエントは国籍などでドナーを選ぶか
援助する側の心得は
参加型開発のマネジメントにおいての重要な点と困難な点は
JICAによる援助は現場のニーズに応えているのか
発展に伴い、コミュニティーはどのように変化していくか
NGO、JICA、外務省の相違点は
日本と他国のドナーの援助の違いは
現場では、どのような人材が求められるのか
(答)英検準1級程度の語学力、冷静さ、忍耐力、図太さ、ある程度の生活の不便(電気・水・通信状況が不安定、入手できる食材もかなり限られている)を我慢できる力と適応力を有し、人間関係が安定している人材が求められています。
CSR
アフリカに進出している企業の数は
お勧めの会社は
CSRを行う会社に対してどう思うか

メディア
世界的ニュースはどれくらいでアフリカ全域にいきわたるのか
日本のニュースはあるのか
(答)ほぼない。首相が変わったり、地震や津波があったり、というニュースがない限り流れない、他方日本のモザンビークの援助に関するニュースは月に3,4回流れる。
下平さんのメディアに対する印象は
(答)政府系日刊紙ノティシアスについては政府統制がなされており、かなり与党よりの記事が多い。時によく調査・検証を行わず記事になるものも多く、半信半疑です。

その他
下平さんのパワーの源は
(答)家族・友人とのつながり、そしてよく食べ、よく休み、たまに可能なときには外食するなど自分へのご褒美を怠らないこと。
学生時代のアフリカへの印象は
(答)開発学や国際政治学の勉強でイメージとしてあったが、かなり遠い場所。
下平さんは現在も国際協力を行っているのか
(答)現在は行っておりません。1外国人としてモザンビークの僻地で生活しているだけといえます。次の動きを構想中です。
by africa_class | 2009-07-28 10:12 | 【大学】国際関係とアフリカ
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