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2018年 09月 13日 ( 1 )

ツイッター経由できた南アフリカからの一通のメール

大学を辞めて、あちらのメールアドレスを見ないようになってしまったため、どうやら色々な人が困っているらしい。子どもの頃から年賀状が嫌い。自分からは基本連絡しない主義なので、メールアドレスを変えるたびに、色々な問題が発生するのだけれど、なんとなくもうそれでいいかな…と思って諦めてる。

でも私を見つけるのは実は簡単。
SNSをしている理由は、筆無精な私として、かつての仲間や知り合いやその他の皆さん一人ひとりに今どうしてるかとか、何を考えているかとかのお便りをするのではなく、全部公開してしまえば双方楽かなと思ってのこと。

ただもう一点メリットがあったようで。
最近は、日本の出版社からのお願いや連絡調整は、SNS経由、あるいはSNSで確認してからということも増えてきた。それはそれで、面倒なやり取りを省けるので楽なのでいいのだけれど、今この瞬間のように、原稿がおくれてたり、ゲラが戻せていなかったり、連絡できてなかったりすると、「見られてる感」はやや気になるところ。。。なら、ちゃんとサクサク出せばよいという結論に至るわけだけれど、そこはなかなか思うようにいかないのが、出版物の常。

気合を入れないで書けるブログと異なり、やはり出版物となると、いくらなんでもベットの中で書いてると辛いものがある。でもそうせざるを得なかったりした本もあるのだが。

さて。すっかりご無沙汰してしまっていた人達と再会できるのもSNSの魅力ではある。そもそもフェースブックが同窓会のために作られたように。でも、英語でSNSをしてないので、日本の人以外に見つけてもらうのにはなかなかハードルが高い。なのだけど、ある日、南アフリカはケープタウンの出版社のTwitterをフォローしたら、すぐにフォロー返しがきて、ダイレクトメッセージが届いた。

「ずっと探してた!」

そうだ。せめて自分の出版社ぐらいには連絡先とか伝えておくべきだったと反省しきり。

「とにかく伝えたいことがあるからメールさせて。」

ということで、ビクビク・・・。

なんかやるといってたことをやってなかったとか、本があまりに不評だから絶版にするとか、本が書評でこき下ろされてるから反論しなきゃとか、とってもまずいことが起こっているのに、私がちっともお返事しなかったのだと思って、メールがくるまで落ちつかない気分になった。それでなくとも体調悪いのに、やだな。。。

この出版社から出した本はこちら↓
(無料ダウンロードもできるようにしてあります)
http://www.africanminds.co.za/dd-product/the-origins-of-war-in-mozambique-a-history-of-unity-and-division/

メールをあけると、そこはさすがに敏腕編集者<兼>出版社の創設者。まずはおべんちゃら。

「The Origins of War in Mozambiqueは、我々African Minds Publishingという小さな王国の宝石だよ」

そういう風に書く時は、どうせ何か悪いニュースがあるにきまってる、と身構える。
すると、私がずっと病気で大学をやめて療養していたこと、せっかく一方の病気は治ったのに別の病気になったことについて労りの言葉が続く。

労りながら、なんか悪いニュースに違いない・・・と依然として身構えていたのだけど、意外にメールは短く、とにかく添付のExcel表をみて、これが君を励ますことになることを心から祈ってる、と締めくくられていた。

表を空けてみた瞬間、目が点になった。
信じられなくて、なんどもみたのだけど。


2017 Downloads
1 The Origins of War in Mozambique 2045
2 The Social Dynamics of .... 834
3 Beyond .... 805
4 Open Data in Developing ..... 791
5 Sounding the .... 694
6 Adoption and Impact of OER in the .... 654
7 Lajuri....511
8 International8 Educational Challenges..... 484
9 The Delusion of Knowledge..... 438

見た瞬間、思い浮かんだのは、今は亡き人びとの顔だった。
1994年から2012年まで、400名近い人びとに話を聞いたのだけれど、出版の時点で大半の方が逝ってしまった後だった。だから、本を届けることすらできなかった。まず日本語で書いたのも大失敗だった。

さらに何時間も何時間も話を聞いたのに、その一部しか本にその声を直接入れることができなかった。本全体には、彼女や彼らの肉声を反映させようとしたのだけれど、それでも十分だともいえない。といっても、日本語でも600頁を超えるボリュームで、これ以上はどうしようもなかった。せめて今のように動画や音声が簡単に撮れたり、アップできる日がくると分かっていたら、直接紹介することもできたのに。

「あの時」はもう二度とこない。
沢山の経験を内に秘めたまま逝ってしまった人びとの経験を、もう一度聞こうと思っても不可能なのだ。以前のモザンビーク農村なら、その人達の経験もまた、周りの人びとがしっかり耳を傾け、継承されている部分も沢山あったと思う。でも、時代は変わってしまった。戦争がそれを加速化したというのもあるが、昔話や歴史に価値がおかれる時代ではなくなってしまったのだ。

一方で、権力者たちの都合のよい「歴史」が繰り返し連呼される時代となった。
そして、都合の悪いことが書かれた「歴史」は書き換えられるだけでなく、攻撃され、破棄され、隠されつつある。アフリカでも、日本でも、世界でも。また、それらがもとにしていた人びとの声、一次資料もまた、忘れ去られるままになってしまっている。中には、意図的に。

今、日本の各地で、戦時中の資料が焼却されていたことが明らかになっているように。戦後直後の陸軍による焼却の話ではない(それはそれで大問題)。戦後70年を経て、「収蔵スペースが確保できないから」との理由で、捨てられ、燃やされる資料の数々。

後の時代になればなるほど物事を明らかにできる可能性が高まる・・・と考えることができた時代は、もはや過ぎてしまったのかもしれない。1990年代に話を聞けた人びとはもはやおらず、あの時に見せてもらうことができた公文書は現在は政府の管理下におかれてアクセスができない。その意味で、600頁というあり得ない長さの本であっても、資料的価値はあるのかもしれない。

もちろん、後の時代から別の角度でみたときに別の結論も可能だろう。記録といっても、私の目から選択され、文脈に入れられ、加工されている以上、そのまま受け止められるべきでもない。検討・検証されなければならず、その結果として、本全体の問題が明らかにもなるだろう。

それでも、私に語ってくれた人びとの声が、ただのダウンロードとはいえ、こんなに多くの人にわずかなりとも届いているのかもしれないとすれば、20年をかけた意味もあったのかもしれない。そして、何よりも、この本(日本語版)の誕生に力を貸してくれた御茶の水書房の橋本育さんをはじめとする皆さん、訳者の長田雅子さんをはじめとする英語版チームの皆さんのお陰であった。この場を借りて、心から感謝を捧げたい。

本は一度世に出すと独り歩きする。
もうあの本は、私の手をとっくに離れて、世界のあちこちに自由に飛び回るようになった。著者の意図はおかまいなしに。文字の不思議、出版物の不思議、ネット空間の不思議に、しばし立ち止まる。著者そっちのけで広がる書物の潔さに感じ入っている。

そして、今この本を凝縮した日本語の本を来月出版すべく、最終局面にある。
600頁のボリュームではきちんと読んでもらえないので、10分の1に圧縮したのだった。

実は、10年以上も追い続けたテーマとは、今年で「さようなら」することを心に決めている。人生の残りの時間がいつまでも長くあるわけではないと気づいたときに、その時がきたら「次」に行かなければならないと思うから。そして、「その時」が来たと、なぜか実感している。

本当はまだまだ足りないのを自分が一番よくわかってる。3部作が完成してはじめて1994年に戦後直後のモザンビークに足を踏み入れてから誓った仕事が終るということについても、今でも変更はない。でも、もう時間もないとも思う。これから先、アフリカ、戦争と平和、モザンビークで書くことは、ほとんどないだろう。ここからは、後の人達がもっと前に進めてほしいと思う。批判し、踏み台にして。まったく別の歴史を書くでもいい。違ってたよ、でもまったく構わない。ただ、今は亡き人達の声については、少し立ち止まって耳を傾けてほしいとも思う。

丁度このタイミングでこの南アフリカからきたニュースと来月の本の出版が、「留まれ」といっているとささやく自分もいるのだけれど、次へいってもいい号令だと捉えようと思う。大学を辞めておいてきたもの。この仕事を最後においてくるもの。少しずつ店じまいをしながら、次に向かっていこう。未だ見ぬ場所へ。

追伸:
日本語版は2007年に出版された『モザンビーク解放闘争史』
https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA81471652


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by africa_class | 2018-09-13 04:54 | 【記録】原稿・論文