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ナチスによるホロコーストの歴史を熱心に外国人に教えるドイツ国・社会の「新しい価値」について。

去年7月から難民や移民、外国人配偶者などと共に、地域の市民学校で、ドイツ語のコース(社会包摂コースの一貫。ただ誰でも受講が可能)を受けてきた。クラスメートは、シリア、イラク、アフガニスタン、イラン、パレスチナ、トルコ、モロッコ、ソマリア、ガーナ、フィリピン、中国、ポーランド、ルーマニア、ロシア、エストニア、カザフスタンなど、私を入れて17カ国25人。

毎朝8:20から12:20まで4時間、月曜日から金曜日まで、ドイツ語を叩き込まれ(たはずが、脳がまったく受け付けず、消えていった・・・)たが、昨日最終試験があり、ドイツ語は終った(と思いたい。試験に落ちていれば再度チャレンジ・・・・)。

去年6月に手術をしたばかりで、かつ民衆会議もあり、あまりに怒濤の日々で、免疫が落ちている中、次々にクラスメートの子どもたちが学校でもらってくる風邪を親からうつされ、とにかく学校に行っては病気になるの繰り返し・・・。正直いって、本当に辛かった。

でも、すごく面白い経験だった。大学で語学を11年も教えていた自分が、毎朝教わる側に座るのは新鮮で、学びが沢山あった。何よりも、自分より格段に若いクラスメートたちに支えられ、休んだ日のノートや宿題などを携帯で送ってもらい、昨日の試験でも全員で励まし合いながら望んだのが、この年齢で学校に行ったことのご褒美だったな、と。世界各地の色々な年齢の性別のクラスメート。それぞれ、色々な経緯を経て、辛い想いもありながら、教室に集った。なにせ初級から中級までの8ヶ月近くを、「異国の地」で毎日一緒にすごしたので、もうすぐお別れだと思うと寂しいものがある。いつか、難民・移民らと過ごしたこれらの教室の様子を皆に紹介できればと思う。

人間、国籍じゃない。
確かに、文化的背景・影響は強くある。
しかし、やっぱり「人を人として見ることの大切さ」・・・を改めて実感した8ヶ月だった。
しかも、3人の先生は全員ドイツ人というわけではなく、1人はロシア人だった。そして、地域の外国人担当者は外国人。彼女らがいっていたのは、ドイツ語がきちんとできれば、ドイツでは外国人にも同等の機会が拓かれているという点。

2016年に百万人レベルの「難民」(自称を含む)が押し寄せたドイツ。
普通に考えてとんでもないレベルの社会プレッシャーだが、3年経過して、勿論政治的課題は出てきているが、それでもドイツ社会はよく持ちこたえていると思った。その土台に、わたしが去年から参加してきた「社会包摂コース&オリエンテーションコース」のシステムの御蔭だと思う。2005年ぐらいから整備してきたというので、もう13年のベースがある。子どもには学校システムを使った特別のサポートがある。

日本はこのような制度が皆無のままに、現政権下で世界第四位の外国人流入国になった。ドイツ、米国、英国に次いでで50万人近く、知ってた?さらにこの政権は大幅に外国人「労働者」を増やそうしている。これが「労働者」に限らず、移民国への転換点だということは、世界中の先進国や歴史が証明しているが、まったく無策。

私はかつて移民研究、また世界の戦争と平和を研究してきた経験から、大量の外国人・難民の流入を政策として促進するのは反対の立場。だけれど、すでに外国人の子どもたちが地域で生まれ、成長する。労働者として日本社会で役割を果たしてくれた人々の人権が守られないばかりか、それらの人々が日本社会を知る機会をもらえず、交わらずに、パラレル(並行して)に暮らし、苦しむ、あるいは問題を起していることを考えれば、抜本的な制度設計が不可欠なことは間違いない。

なので、私の経験が、少しでも参考になればと思う。

ドイツ語のコースは、社会包摂コースの一貫だったので、教科書が純粋にドイツ語だけをターゲットにしているわけではなく、外国人には気づきにくいドイツ社会のありようをベースにした会話や話が絶妙な形で織り込まれているのが、本当に面白かった。日本で外国語のスキットを準備すると、日本的なやり取りの中に落とし込まれる傾向があるので、違いが如実に感じられた。私がポルトガル語を学習したとき、日本語の教材がまったくない時代だったので、アメリカのジョージタウン大学の教科書を使っていた。なので、英語経由でポルトガル語を学び、英語の単語が分からなければポルトガル語も分からない・・・という二重ぐらいの苦労をしたことを覚えている。その後、外国語学習は、日本語を経由せずに、外国語を使って最初から外国語で学ぶ方向にシフトする先生が多かったが、1年生にはそれは遠回りだな・・・と今でも思っている。世界中の難民と学ぶ場合は仕方ないにせよ。

さて、本題。
ドイツ語コースが終わり、今度は3週間のオリエンテーションコースに突入。教科書の構成からして面白い。

1. 民主主義の中の政治
(1) ドイツにおける政治と民主主義
(2) 国家のシンボル
(3) 国家の構成(州などの紹介)
(4) 政党と連邦選挙
(5) 政党と州選挙
(6) リベラル民主主義的秩序(憲法、法治国家の基礎)
(7) 政治的影響(国家秩序における民主主義の基本原則、コミュニティレベルにおける政治的参加の手法、ボランティア活動への関与)
(8) ドイツにおける法治主義、市民の権利、市民の義務(基本的人権、裁判制度、犯罪)
(9) ドイツにおける行政ストラクチャー(連邦、州、コミューン)
(10) ドイツにおける社会的市場経済(司法、国家による福祉の義務、社会福祉システムと財源、民間のサービスの必要性、職業局[ハローワーク])

2. 歴史
(1) 歴史と責任(ドイツの歴史への紹介)
(2) 国家社会主義(ナチスドイツ)と第二次世界大戦
(3) 戦後のドイツ
(4) 分断から再統合まで
(5) ドイツへの移民の歴史
(6) EU(ヨーロッパ連合)

3. 人々と社会
(1) ドイツのすべて(地域、宗教的多様性の紹介、教育と学び、文化間の勾留)
(2) 各地域の多様性(ドイツ語の方言)
(3) ドイツにおける人々(暮らし、家族構成、家族の機能、女性の解放、世代間関係)
(4) 国民の課題としての学び(政治学習、学校システム、教育の価値、生涯学習)
(5) 宗教上の多様性
(6) 典型的なドイツ人(知的な競争力、文化間の潜在的な紛争)
(7)文化的なオリエンテーション


もう一度確認したいが、これは「外国人向け」の教科書の構成。
当然ながら、ドイツの子どもたちはこれと同様、そしてより深い内容のことを学校で必ず学ぶ。多くの点で注目したいことが沢山あるのだけれど、日本だったら地理とか文化とか縄文時代・弥生とか・・・・没政治的な解説に終始するのだけど、「民主主義のシステムと価値」を最初に教えている点。その中での、国家の義務と市民の権利・義務が明確に示されている点。社会福祉システムと税の関係も教えられている。

その上で、歴史が「責任」という形で紹介されている。
そして、学ぶべき歴史の最初が、ナチスドイツ時代の功罪というのが、何よりも注目すべき点。それをわざわざ外国人に教えている。

ページ数もハンパない数が割かれており、どのような手法でナチスドイツが権力を奪取したのか、そのプロセスで民主選挙がどのように使われたのか、野党やメディアがどのようにコントロールされ(逮捕、収容所送り、虐殺)、本がどのように燃やされ、ユダヤ人が虐殺対象になるプロセス、ホロコーストの実態、周辺国への侵略に使われたイデオロギー、その結果民衆はどのようなふたんを強いられたのか、若者が学校を通じてどのようにナチスに取り込まれたのか、その一方でどのような抵抗があったのか(軍人高官のヒトラー暗殺未遂、ミュンヘン大学の学生グループ「白バラ」のゾフィー・ショルの紹介)・・・。

先生は、最新の新聞記事から、今でも歴史を掘り起こそうとする動きが熱心に続けられていること、新しい事実を紹介してくれた。その上で、ドイツの街に必ずある「歴史を忘れないモニュメント」を散策するために、街に出た。ユダヤ人のためのシナゴーグがあった場所、シナゴーグがナチスの支援者によって焼かれたこと、野党関係者が次々に逮捕・監禁された場所、誰が強制収容所に送られて死んだか、襲撃されたユダヤ人の店、収容所に送られたユダヤ人が住んでいた建物の前に埋め込まれた石(名前と送られた収容所名、その後{見た人は全員死])、主筆が強制収容所に送られ死んだローカル新聞の本社、「ヒトラー広場」と名づけられ若者たちが娯楽に使った広場跡、ユダヤ人のお墓、ヨーロッパ中から強制労働のため連れてこられた人達のお墓・・・など。

今日はじめて参加したイラク人はナチスドイツの歴史を学ぶ前にあった「歴史と責任」の授業を受けてないこともあり、不思議そうに全部を回って、先生に聞いた。

「ドイツ人はヒトラーを今嫌って否定しているのに、どうして彼のことやナチスを学び、『忘れない』ことを重視してるのか?忘れた方がよいのではないか?」

先生は本当に驚いた顔をして、「二度と同じことが起らないために、繰り返し、繰り返し、どのように過ちが生じたのかを教え、学び続ける必要がある。しかも、未だすべては明らかになっていない。もっとヒドいことが行われていたことが次々に分かっている。これらを掘り起こし、二度と起きないようにするのは、我々の責務であり、国家の責務」と説明した。

そして教室に戻ると、ホロコーストのページの下にドイツ連邦憲法が貼ってあり、先生はそれを皆で読み上げるように言った。

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ドイツ連邦憲法第3条
1 すべての人は法の前に平等である。
2 男女は、平等の権利を有する。国会は、男女の平等が実際に実現するように促進し、現在ある不平等の除去に向けて努力する。
3 何人も、その性別、門地、人種、言語、出身血および血統、信仰または宗教的もしくは政治的意見のために、差別され、または優遇されてはならない。何人も、障害を理由として差別されてはならない。
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まさに、過去の負の遺産を学ぶことは、現在の皆の権利を守るために不可欠な、on-going(継続的な)営みの土台と延長上にあるのだということが、教科書においても、先生の意識の中でも、はっきり示されていたのだった。

そして、先生は「憲法雑誌」を片手に、基本的人権の重要性、とくに「自由権」の重要性を紹介した。その上で、雑誌に書いてあるように、これは「闘って手にし続けるもの(闘い取られなければならないもの)」として紹介した。

もう少し深く紹介したかったけど、時間切れ。
続きはまた書きます。



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大学生たちのナチス抵抗運動の紹介。ゾフィーとハンス・ショル姉弟の写真。歴史の本から先生が持って来てくれた。独裁や戦争から逃れてきた難民や移民の皆さんは熱心に聞いている。
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どのようにヒトラーやナチスが権力を握ったのかのプロセスを選挙結果を示しながら説明。プロパガンダが多用され、野党が禁止されたり弾圧されたとはいえ、有権者が選んでこのような野蛮かつ独裁の政府が出来てしまったことを、批判的に検証。だから、歴史を繰り返さないための歴史教育が必要と。
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焼き討ちにあったシナゴーグの跡地で、先生の説明を聞くクラスメートたち。いまは学校の敷地になっている。
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この道の前の建物にかつて暮らし、強制収容所に連れて行かれ殺されたユダヤ人ひとりひとりの名前が刻まれた黄金の石。ドイツ中の街の道にこのような石が埋め込まれている。5分歩いて20名ほどの石に出あった。

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憲法


by africa_class | 2019-03-23 18:50 | 【徒然】ドイツでの暮らし