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afriqclass.exblog.jp

【中身紹介】今週、モザンビークの研究所から出版した論文「プロサバンナの興亡〜三角協力から「小農抵抗」対抗戦略のための二国間協力へ」

昨夜に続き珍しく連投しておきます。
https://afriqclass.exblog.jp/239843535/

昨夜は、安倍政権下での日本の行政(援助行政を含む)を考える上で重要な、「匿名性」を打ち破るとともに、真実を追求していくことが、戦前・戦中の過ちをくり返す不穏な空気を押し止め、未来をきり拓く可能性について取り上げた。

日本陸軍が戦争に負けた瞬間にしたことが、大量の文書を燃やし続けることだったことを想起してほしい。もし、これらの文書が公開されるもので、軍人や政府関係者やその周辺の名前が晒される前提であったら、あそこまでの悪行を重ねただろうか?・・・そこを今一度考えてほしいのだ。

「日本軍」「日本政府」「JICA」「外務省」という組織を盾に、個人が名前を晒しては決してやらないことが続けられるとすれば、それはやはりおかしい。だから、JICAと外務省で、プロサバンナに関わるすべての情報、そしてその関係者の名前をきちんと記録・公開しておくことが、民主統治が風前の灯のこの国の今だけでなく、歴史の検証という意味でも重要だと考える。(名前を記すことで、思考停止から逃れ、人間としての尊厳を取り戻す機会がひらかれることについては、昨夜のブログを)

さて。今週モザンビークの研究所OMR(Observatorio Meio-rural)から出版された、私の英語とポルトガル語の70頁を超える「大作」論文の紹介を。


THE RISE AND FALL OF PROSAVANA:
FROM TRIANGULAR COOPERATION TO BILATERAL COOPERATIONIN COUNTER-RESISTANCE

by Sayaka Funada-Classen

https://omrmz.org/omrweb/publicacoes/or82/
(*ポルトガル語・英語版がダウンロード可能)


こんな分量(70頁…)の英語のペーパー…よむ気になりませんよね(笑)?
なので、概略と目次を日本語にして紹介しておきます。

【概要】
日本、ブラジル、モザンビークの間で、2009年に署名され、世界最大の土地収奪事業の一つと呼ばれた、あの有名なプロサバンナ事業に何が起こったのか?

「プロサバンナはもう死んでしまったのか?あるいは未だ続いているのか?」

これらは、この三角協力事業や民衆の抵抗に関心を寄せる人びとから、頻繁に寄せられる問いである。プロサバンナは、10年にもわたり、世界中のジャーナリストや研究者、実務者や活動家の関心を惹き付けてきた。しかし、この事業の全容を掴むことは容易ではない。

現在も、この事業は続いている。どのように続いているのか、なぜ続いているのかは不透明なまま。

この不透明性はどこからくるのか?それは、この事業が生き延びるにあたって、最も重要なプレーヤである日本の事業関係者に付随する複雑さと不透明性に起因している。プロサバンナ事業は、日本の資金なしには存在することすらできないからである。


したがって、この事業に関心を寄せる人にとって、日本の関係者の言動、文書、コンテクスト(文脈)の理解は不可欠であるが、これは極めて難しい。


以上から、本ペーパーは、日本のコンテクストに焦点をあてながら、日本の関係者の一次資料や会議記録などをもとに、プロサバンナ事業の歴史を掘り起こしていくものである。


【目次】

*英語から日本語にするととっても異様な目次になってしまうのですが、大体こんなことを書いていますということが分かると思うので紹介しておきます。英語の直訳だと伝わらないところは言葉を補ってます。


「プロサバンナ表と裏の歴史書」と思って眺めると理解できるかと思います。


*なお、ほぼすべての行に注がついており、その根拠としてJICAの一次資料(文書)か会議録のリンクをつけているので、各自で原典も含めて確認下さい。


1. 興るプロサバンナ(The Rise of ProSAVANA)

(1) アフリカに「セラードの成功」を!

(2) 中国への対抗心と日本の国際評判向上戦略

(3) プロサバンナ実現のための日本のイニシアティブと主導的役割の実態

(4) モザンビークへの日本・ブラジルによる投資促進共同ミッション

(5) ブラジルのFGVによるナカラ・ファンドとJICAとの関係(利益相反問題を含む)

(6) プロサバンナ開発イニシアティブ基金(PDIF)とマスタープラン


2. 小農による抵抗(Peasant Protest)

(1) モザンビーク最大の小農運動UNACによる反対の表明

(2) 「伝統的ドナー(援助国)」としての日本における市民社会の役割


3. JICAによる「小農抵抗」対抗戦略(JICA’s counter-resistance strategy)

(1) 小農の声の矮小化を図る

(2) プロサバンナ・コミュニケーション戦略

(3) 「外国の陰謀説」の最前線にモザンビーク政府関係者を配置する

(4) プロサバンナとセラードや土地収奪とのリンケージを神話化する

(5) プロサバンナをナカラ経済回廊開発から切り離す

(6) プロサバンナを土地収奪事業から切り離す


4. 三角協力から二国間協力へ(From Triangular Cooperation to Bilateral Cooperation)

(1) 日本における「止まらない公共事業」の慣習

(2) JICAに唯一残された「出口戦略」:「対話」とその既成事実化

(3) JICA資金で開催された「選挙集会のような『公聴会』」

(4) 地域社会における与党フレリモ支持構造を強化する


5. 2国間援助による「小農の抵抗」への対抗戦略(Bilateral counter-resistance strategy)

(1) UNACへのJICAと農業省による介入、そして代表の死

(2) 内部告発者のリークによって明らかになったCIAのような諜報活動

(3) JICAのためモザンビーク市民社会への「入口」を準備する

(4) 共通の敵「プロサバンナにノー! キャンペーン」を弱体化させる

(5) UNACの取り込み戦略、その失敗の結果としての矮小化作戦

(6) 現地NGOとのコンサルタント契約によって市民社会の「分断統治」を実現する

(7) 事実に基づかないインセプション・レポートへの資金投入による分断支援

(8) プロサバンナに支援された企業による土地収奪の事例

(9) 日本でのJICAの対抗言説確立のための支援活動

(10) プレスツアーの企画と対抗言説の拡散


6. 小さな勝利と「サティアグラハ(Satyagraha=真実の力)」

(1) JICA理事長への公開書簡

(2) 真実の力と外務省局長の決断

(3) 異議申立プロセスへのJICAの介入

(4) 日本の外務大臣による「指示」

(5)マプート行政裁判所によるプロサバンナ違法判決

(6) 訴えられた「農業省プロサバンナ調整室」とJICAの関係


7. プロサバンナの現状と歴史的起源(Current situation and historical roots)

(1) 使い古したトリックに戻るJICA:「地元受益者」の創出と社会分断、対抗言説への利用

(2) ナカラ経済回廊開発(天然ガスを含む)の推進によりプロサバンナの当初計画を実現する

(3) プロサバンナの歴史的ルーツ:中国北東部/「満州国」


8. 結論



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# by africa_class | 2019-12-06 21:47 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ

今の日本政府やJICAにおける「凡庸なる悪」( by アーレント)に抗うには?〜2019年12月、「神は細部に宿る」そして人類の叡智「真実は破壊できず、それ自体が力を宿す」ことを忘れないということ。

毎日新聞の総合デジタル取材センター局長が、以下の記事を紹介するにあたって、わざわざこうういう風に書いていた。

昨日も行われました、 #野党ヒアリング 。しつこく詳報し続けます。一見、細かいやり取りですが、じっくり読むと官僚の説明の破綻ぶりが非常によく分かります。

内閣府「データが消えるようになっているのではない」 「桜を見る会」野党ヒアリング詳報
https://mainichi.jp/articles/20191205/k00/00m/010/309000c

この投稿をみた瞬間、今から25年前、私がモザンビークの戦争の原因を探究しはじめた時から、日本のモザンビークへの援助・投資問題(農薬援助、大型農業援助「プロサバンナ」、ナカラ回廊開発・天然ガス)に関わるようになった現在まで、ずっとやってきたこと、それを世間様に説明する際の枕詞と同じだな…とふと思った。

特に、安倍政権になってからの7年間は、まさに真実を歪め、隠し、破壊する国家権力とその関係・周辺組織(外務省・JICAを含む)との「真実追求」の闘いだったと、最近実感するようになった。

「もりかけ」や「桜」の問題に絡んで露になりつつある文書をはじめとする「真実」をめぐる事態、政権関係者・与党政治家とその政権下で出世しよう(あるいはそつなく仕事を進めよう)とする官僚の信じ難い言動は、これまで「プロサバンナ」をめぐって見てきたことと地続きであって、私には驚きはなかった。そして、これらの出来事の真相を追求し、根拠をもって広く明らかにし、これ以上の規範や民主体制の崩壊をくい止めんと努力する野党や一部のメディア関係者の尽力は、過去7年間のプロサバンナに関わる日本のNGOの歩みと同じものでもあった。

「JICA職員も仕事だからやってるだけで…」「たまたまそのポストについただけ」「職員の名前まで書くのは可哀想」「もういいんじゃないか」そんな声も聴こえてくるが、それは現在の「桜」問題、あるいは「モリカケ」でも言えるだろうか?政権に忠実に嘘をつき続けた、しらばっくれ続けたご褒美に昇格したり訴追されずに悠々自適の退職生活を送る「高級官僚」たち。その陰で、真実を歪曲せよと圧力をかけられ続けて、耐えきれずに自ら命を絶った官僚がいた。あるいは、プロサバンナについて言えば、危険を顧みず内部告発をして、数十点もの内部文書をリークした人もいる。

文書隠しは、安倍政権の特徴である。その政権下で独立行政法人であるにもかかわらず、JICAもまた、文書隠し、黒塗りに余念がない。もし、JICAが胸を張って「モザンビークの小農のための援助をしています」と言うのであれば、なぜこんなことをする必要があるのか?
今の日本政府やJICAにおける「凡庸なる悪」( by アーレント)に抗うには?〜2019年12月、「神は細部に宿る」そして人類の叡智「真実は破壊できず、それ自体が力を宿す」ことを忘れないということ。_a0133563_07544051.jpeg



「上の命令だから/組織の決定だから、仕方ない」…この思考停止、そして政治主導という言い訳と匿名性に逃げ込める官僚制度(JICAも同じ)こそが、日本軍の数々の蛮行、あるいはここドイツでナチズムがホロコーストを大規模かつ徹底的に実行できた最大の理由であったことを、我々はいとも簡単に忘れすぎていないか?

まずはJICAが日本の税金で作った『プロサバンナ・コミュニケーション戦略書』(2013年9月)を見ておきたい。
今の日本政府やJICAにおける「凡庸なる悪」( by アーレント)に抗うには?〜2019年12月、「神は細部に宿る」そして人類の叡智「真実は破壊できず、それ自体が力を宿す」ことを忘れないということ。_a0133563_21465067.jpg
今の日本政府やJICAにおける「凡庸なる悪」( by アーレント)に抗うには?〜2019年12月、「神は細部に宿る」そして人類の叡智「真実は破壊できず、それ自体が力を宿す」ことを忘れないということ。_a0133563_21455795.jpg
今の日本政府やJICAにおける「凡庸なる悪」( by アーレント)に抗うには?〜2019年12月、「神は細部に宿る」そして人類の叡智「真実は破壊できず、それ自体が力を宿す」ことを忘れないということ。_a0133563_21462393.jpg

ハンナ・アーレントが『全体主義の起源』で全身全霊をこめて訴えたのは、まさにこの「顔なき官僚制」と「思考停止」という「凡庸なる悪」こそが「史上最大の悪」の源泉なのだという点であった。しかし、アーレントを読んだことある、学んだことがある、尊敬する、引用する人達ですら、このことを日々の暮らし・ものの見方に反映できていない日本で、官僚やJICA職員にそれを理解せよということの方がどだい無理な話なのだろうか?

否、私はそう思わない。
人間には、学ぶ力が備わっている。
それは自分自身が日々実感していることである。
人は過ちもおかすが、それを反省し、よくしたいと願う何か根源的な性質をもっている。
問題は、その人間性のベクトルが、いとも簡単に、集団であればなお操作されうるということである。
だからこそ、アーレントは官僚制からの脱却、思考停止からの脱却こそが、人間が尊厳を再び手にするために不可欠なことなのだと述べた。逆にいうと、思考停止のままでいるのならば、その人は「悪」に取り込まれていくであろう、つまり人間の尊厳を自ら手放していくことである、と。

だから、私はそれが南米への移民政策や移民、モザンビークの植民地支配、戦争、独立後の独裁、各国の不安定か工作でも、プロサバンナをはじめとする援助の問題でも、組織の人間であっても、関与者の名前を記すことで、その人達が「顔のない名のない組織の思考停止者」ではなく、その瞬間その行為を行ったまさに「生きた人」であったという事実を刻み込むことで、その人が人間としての尊厳を取り戻す道の可能性を閉じないようにしたいと、祈るような気持ちで書いてきた。

世間に知られることのない義母や義父の生前や終末期をこのブログで名前入りで紹介したように。その人の「生きた証」であるから。そして、その「生きた証」は栄光ばかりでも成功ばかりでもない。ましてや、国民・主権者や納税者の代理人としての仕事(官僚・JICA)を選んだ以上は、その行為にはどんな末端のポジションの人でも、どんな瑣末な仕事をしていても、説明責任(acountability=安倍政権のいうそれとは違う)を伴って当たり前である。

逆にいうと、名前を隠したいとすれば、隠さなければならないほど恥ずかしいことに手を染めているという自覚あってのことであろうか?2013年1月に開始したプロサバンナの意見交換会の議事録問題は、まさにこの問いを彷彿とさせるものであった。外務省のNGO・外務省定期協議会ODA政策協議会のスピンオフ会議として始まったこの意見交換会では、当初議事要旨は発言者の名前入りであった。それが、途中からJICAの強固な抵抗が始まり、第5回以降は、結局誰が言ったか分からない形での記載となった。この点についてはブログでもかつて紹介した通りである。

以下の外務省サイトでこれは確認できる。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/taiwa/prosavana/index.html

第5回の外務省・JICA出席者は以下の通りである。

外務省

1

貴島 善子

外務省 国際協力局 国別開発協力第三課 課長

2

佐々木 綜太郎

外務省 国際協力局 国別開発協力第三課 事務官

JICA

大竹 智治

JICAアフリカ部 次長

2

升本 潔

JICA審査部 次長

3

天目石 慎二郎

JICA農村開発部乾燥畑作地帯第一課 課長

4

本郷 豊

JICA客員専門員

5

大嶋 健介

JICA農村開発部乾燥畑作地帯第一課 主任調査役

6

篠田 孝信

JICA審査部環境社会配慮審査課

7

坂口 幸太

JICAアフリカ部アフリカ第三課 調査役


第5回プロサバンナに関する意見交換会(2013年7月12日@外務省)出席者名簿 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/taiwa/prosavana/prosavana_05.html (なお、この後にも多くの人が登場していくのだが、それはリンクからダウンロードが可能である。また別の機会に別のリストを紹介したい。)

なお、会議に出席した人達だけが「責任」を追うべき人達という訳でもない。会議にすら出てこず、NGOからの批判に対応もしないが、決定権を有した人達がいたこともまた記録されるべきであろう。つまり、2013年のこの時期であれば、これらの人々の名前は記録されるべきであろう。

田中明彦前JICA理事長
加藤宏JICA理事(アフリカ担当)
乾英二部長(アフリカ部)
那須隆一所長(モザンビーク事務所)

とりわけ、乾部長はこの件の直接の責任者であり決定権を有していたという点で、最も注目されるべき人物のひとりである。2013年の春から秋にかけてのメディアの取材に、JICAを代表してインタビューに答えていたのが、乾英二部長、本郷豊専門員、宮崎明博JICAモザンビーク事務所所員であったこと、文書の署名は那須所長であったこともまた、記録しておきたい。

議事録に戻る。
JICAの人達がなぜ自分の名前を発言記録から消し去ろうとしたのか?それについては、後に紹介する論文を読んでほしい。少なくともここでは、名前が掲載されない形で開催するために半年近く抵抗し続けたという事実が語る真実に注目しておいてほしい。

「彼らとて良心の呵責を感じていたが職務だから仕方なかった…」
(*なお「良心」は「行動」を伴ってはじめて「良心」と呼べるものになる。したがって「まずい」と思いながらも、何も行動に結びつけなかったのであれば、それは「良心」とは呼べない。自分がどれほどそれを「良心」と呼んで自分を慰めたくても)

そのような声もチラホラ聴こえてくるが、その人達は、では彼らがこの時期に何をやっていたのか…という事実について果たして知っているだろうか? あるいは、知ろうとした上で言っているのだろうか? 

ここで、冒頭の毎日新聞齊藤局長の「しつこく詳報し続けます。一見、細かいやり取りですが、じっくり読むと官僚の説明の破綻ぶりが非常によく分かります」という一言を思い出していただきたい。

まさに、歴史家の仕事もまた、一見細かいやり取りを丹念に丹念に追うことで、何かがクリアに見えてくるのである。

つまり、
「神は細部に宿る」
のであった。

真実の追求とは、細かいピースがばらばらになって、いくつかのピースが欠けているジグゾーパズルに取り組むようなもの。

でも、得てして、一番大きくて目立つピースは最後まで見えるようで見えないことが多い。細かい無関係なピースを繋ぎ合わせてった先に、ど真ん中にぽっかり空間が空いていることに気づき、そこから見失っていた絵が急に起き上がって目の前に現れる・・・そんなことを何度経験してきただろう。

あるいは、一番目立ち自ら語っているように見えるからこそ、その語りに呑み込まれず一旦それを脇に置く必要があることが多い。そして、周辺の小さなピースを丹念に探し、それを繋げていくと…それを支える論理や構造、犠牲にされるものが浮かび上がってくる。その先に、一番目立っていた大きなピースの真の姿と、全体の中での意味が掴めるようになる。これを、文脈化ともいう。

以上のJICA職員が、2013年7月の議事録以降、突如として、自らの名前を発言記録から削除しようとした事実は、どう分析されるべきであろうか?

今回の「桜を見る会名簿」と同様に、本来は民主統治における透明性と説明責任の観点から、明らかにしておかなければならない情報を行政の側が「あえて隠そう」とする際には、その「隠す」行為そのものが語っていることを追求する必要がある。

「桜」であれば、名簿には安倍政権が崩壊するだけの事実が書かれている・・・ということ。
そして、名簿をなかったことにすることで乗り切れれば、自分の役人としての身分も保障される、しくじったらその逆が発生するという経験則。

では、プロサバンナに関与するJICA職員の名前については?

歴史家の仕事というのは、出来事が「歴史になる」から可能となる。同時進行で追う仕事は、一義的にはメディアや市民社会の仕事である。だからその融合は、on-goingの出来事を理解する上で、様々な可能性をきりひらいてくれる。つまり、「過去」だけあるいは「現在」だけの二次元のパズルのピースを、「過去も現在も」含めた立体的三次元のパズルのピースとして捉える知的動作を要求する。それは、思考のスピードと深さを同時に追求するようなスリリングなものではあるとはいえ、出来ればこんなことに関わりたくなかったというのが、心の底からの率直な気持ちである。

そして、私は3次元パズルのピースを今日も探し、はめ続ける。
人はそれを「しつこい」という。
毎日の齊藤さんが自らそう書くように。
でも、私の中ではそれは「しつこさ」でも、「執念深さ」でもないのだった。
もうこの25年、日々休まずやってきた、真実の飽くなき探究にすぎなかった。

1995年、実務の世界から学術の世界に戻ろうと決意したのは、まさにこの真実の飽くなき探究を限界無くやり続けた先にある地平線を眺めてみたいと思ったからだった。学問の基盤は、真理の追究とされる。だから、米国の大学は、必ずラテン語のveritasをそのモットーに掲げる。

しかし、真理も真実も英語やラテン語にすると同じtruth/veritasである。

私の中では、二つは同じであるようで違っていて、また同じである部分があって、いずれも探究されるべきものと考えている。たとえば、歴史的事実を求めて精進し続けた道の物陰に、真理がふと立ち現れる・・・しかし、その真理は真実の中にずっと眠っていたものなのだ、そんなイメージをもっている。

だから、私は「プロサバンナ」の問題もまた、「モザンビーク戦争の起源の研究」と同じように、lux et veritas(光と真理)=真理の探究という学問の基礎であり目的でもあるビジョンで、取り組んできたのであった。

モザンビーク最大の小農運動に呼出されて7年。
その間に本当に沢山のことが起った。それを一個ずつは書かないものの、これら起ったことを、今は亡きアウグスト・マフィーゴ農民連合代表の死を悼みながら、「lux et veritas」の精神で追求していった結果が、一昨日モザンビークのOMR研究所(農村モニタリング研究所)から出版された以下の論文であった。

Sayaka Funada Classen
"The Rise and Fall of ProSAVANA: from Triangular Cooperation to Bilateral Cooperation in Counter-resistance"
Observador Rural #82, December 2019
https://omrmz.org/omrweb/publicacoes/or82/
*英語とポルトガル語のPDFファイルを以上サイトからダウンロードすることができる。
*日本語の解説と目次は→https://afriqclass.exblog.jp/239845161/

その中で、これらのJICA職員が名前を隠したかった理由も示している。

読むのが面倒だが関心のある人は、2013年7月以降に何が起こっていたのかを辿っていけば、色々明らかになるだろう。ヒントは、上に紹介したJICAの『プロサバンナ・コミュニケーション戦略書』が、2013年7月に契約準備され、8月1日から着任した現地コンサルタント企業が作成し、ドラフトのやり取りをJICAとした後に、9月に完了し、JICAの正式文書になったことにある。

なお、この『戦略書』は三角協力なのにJICAだけが関与し、JICAだけが保有している。
JICAの誰が何のためこのような『戦略書』を欲したのか?
JICAの誰がこのような『戦略書』の作成を思いつき、GOサインを出したのか?
JICAの誰がこの作成者とやり取りしたのか?

いずれにせよ、この『戦略書』の存在すら市民社会は知らないままだった。

パズルのピースでいうならば、次から次へとボロボロ発見される小さなピースは、ど真ん中に空いた空間の存在を指し示すようになっていた。そこに、何らかの大きなピースがあるはずだった。しかし、分からなかった。

そこで、まずは発見された小さなピースの情報開示請求をやって、そこで発見されるさらに周辺のピースを掘り起こし、その周辺のピースの情報開示請求をして、周りを繋げていった先に、この『戦略書』の存在可能性が浮かび上がったのである。このプロセスは、日本の市民社会にとって今後役に立つかもしれないので、要望があれば書きたいと思う。

さて、決してその存在すら知られていないのに、情報開示請求されてしまったJICAは、何ヶ月も様々な手法を使ってこの開示を引き延ばした。しかし、2016年2月、これは開示されてしまったのである。

そして、ど真ん中のピースが現れた瞬間に、パズルは一気にくっきりと全体像を示したのであった。つまり、2012年10月にモザンビーク最大の小農運動がプロサバンナ事業への反対を表明して以降、JICAはこのような声をつぶすために、「市民社会との対話」の陰で、このような抵抗運動つぶしのための対抗戦略を練り、実行に移していたのである。

とはいえ、この時点ではまだ「仮説」である。歴史家であればこれを実証するには、事業が「過去のもの」とならなければ難しい。しかし、リアルタイムで事業をフォローする市民社会の一員としては、この「仮説」が実証に耐えうるかどうかの判断材料は次々に集まってくる。そして、ついに、内部者からのリークとなった。(もちろん、それ以外にも大量の根拠文書が情報開示請求から集まった)

だからこの論文のタイトルは、「プロサバンナの興亡〜(農業援助の)三角協力から小農抵抗への対抗戦略のための二国間協力へ」なのである。

この論文は、最後にガンディーの非暴力抵抗運動の思想「Satyagraha(サティアグラハ)=真理の力」でしめくくられている。ガンディーは最近アフリカ人に差別的だった、アフリカの解放を阻害していたということで批判されているので、ここでガンディーを持ち出すことに躊躇がなかったわけではない。しかし、サティアグラハの教え(真理/真実の力に引っぱってもらうこと)、プロサバンナの抵抗活動の根幹を占め、実際に市民社会側だけでなく権力側にも影響を及ぼしてきたと考えるため、あえてこれを紹介した。

奇しくも、lux et veritasと同じ土台をサティアグラハがもっていると気づいたのは、下書きを書き終えてからのことだった。権力者は「真実/真理」を隠そうとする。歪めようとする。壊そうとする。でも、最終的には「真実/真理は壊せない」・・・そこに人類の長い闘争の土台と展望があると、世界的な「フェークニュース」時代だからこそ思い出したいと思う。

だから、歴史家の仕事もまた、真実/真理の探究を通じた闘争である。
そして、主権者として社会をよりよいところにしようともがき闘う際に、真理/真実を求め続け、それに引っぱってもらうことが意味をなし、また未来への道しるべとして立ち現れてくるのだった。

最後に。
ホロコーストで「顔なき名前なき凡庸なる悪=世界最大の悪」に手を染めてしまった官僚や一般のドイツ人たち。この人達が裁かれるようになったのは戦後すぐではなかった。真実/真理の追求には時間がかかるのだった。その状況のただ中にいる人達が、真実の積み上げから光を得る(構造的理解を掴む)には、別のところにいる、別の世代の人々のクリアな視線と心を必要とした。あれほどあからさまな出来事においても、そうであった。そして、「ただ職務に従っただけ」と主張しつづけたのは、アイヒマンだけではなかった。戦後直後の多くの「普通のドイツ人」が「自分は歯車の一部にすぎずまさかそんなことが行われているとは思わなかった」「知らなかった」「無事だと思っていた」と言い続けた。家族の会話でも、裁判所でも。

でも、アーレントも1968年以降のドイツも、これこそがホロコーストの真因だとの結論に至ったのだった。

ドイツの法律には「抵抗の権利」が書き込まれている。
良心的徴兵拒否だけでなく、国家や権力が間違ったことをしたと思ったら、これを拒否し、抵抗する権利が市民に保障されているのだった。これを「闘う民主主義」と呼ぶ。

毎年、ヒトラーを暗殺しようとして失敗し処刑された将校の死亡日に、この「抵抗の権利」が記念式典やメディアで紹介されるだけでなく、メルケル首相をはじめとする国家権力のトップに、リマインドされる。軍人を前にしてのこのスピーチに、日本の人だけでなく、世界中の人達が間違いなくビックリするであろう。

しかし、それは数百万人を普通の人々が協力し合いながら、組織的かつ近代的に虐殺してしまった国の、歴史的真実とそこから得られた真理に基づく、制御策なのであった。

だから、今日も「桜」や「もりかけ」や「プロサバンナ」の文書を求め、真実を探究し続け、個々人の名前を記録し明らかにし人を人として戻してあげることは、「顔なき名前なき思考停止した官僚や普通の人々」が、すでに人類が通ってきてしまった「史上最大の悪」に加担することから守る為にも、不可欠な闘いなのだと、私は思う。

そして、もし思考停止から目覚め、人としての尊厳を自分の手の中に取り戻したいと願う人がいたら、ともに真実の探究をしてほしいと思う。あるいは、「良心的抵抗」について考えてみてほしい。政府の中にいようと、準政府組織にいようと、あなたはあなたであり、そのあなたもまた主権者である。その主権者として、この国の腐敗に加担し続けるのか、と。何らかの抵抗ができるとすれば何だろうか、と。

それはもしかして、
「こんなこともう続けられません」と言いうことなのか、
「いつかバレることを本当にすべきなのか」と同僚と話し合うことなのか、
「この担当から降ろして下さい」と直談判することなのか、
「一旦止まりましょう」と提案することなのか、
「それはマズいと思います」と諭すことなのか、
あるいは他の人がしたように内部告発者となることなのか、
またはリークすることなのか、
それは分からない。

でも、もう決断すべき時期はとっくにきていると思う。
そして、私は聞きたい。
「まだこんなこと続けるつもりですか?」
と。

ガンティーの教えによれば、JICAがどれほど努力しようとも、真実は壊れることはなく、墓場からすら蘇ることを、そしてそれを蘇らせるのが、歴史家の使命であり仕事であることを、これを機会に認識してもらえればと思う。

「モザンビーク小農の父」であったマフィーゴ代表がいつも口にしていた言葉を。
A luta continua(闘いは続く)

今の日本政府やJICAにおける「凡庸なる悪」( by アーレント)に抗うには?〜2019年12月、「神は細部に宿る」そして人類の叡智「真実は破壊できず、それ自体が力を宿す」ことを忘れないということ。_a0133563_07544051.jpeg

JICAが開示文書の大半を黒塗りしたために、インクがもったいない、紙の無駄と思ったのか、数頁をまとめて黒塗りしたことにしているという開示文書としてはあり得ない運用をしている現物。ここまで徹底して黒塗りされまくったこの文書は、JICAからプロサバンナ本部に派遣された契約コンサルタントの月報。



# by africa_class | 2019-12-06 07:55 | 【考】土地争奪・プロサバンナ/マトピバ

森と畑のお仕事>失敗しない移植と挿し木のやり方を紹介します。

ブログ、、、しばらくぶりです。
久しぶりにウロウロしてたら体調を崩したり、畑の冬支度、論文の最終化などに追われ、なかなか気軽に書けない感じだったのだけど、ツイッターで紹介した移植術に関心を寄せた人が多かったので、まとめてこちらで紹介しておきます。

自分でいうのもなんだが私…「移植名人」なのです。
ドイツのこの庭に移植・挿し木した木々はハーブを含めるとおそらく100本近くいってると思うのだけれど、ほとんど成功している。そのコツを紹介しておきます。

なお移植は年中いつでも出来ますが、かんかん照りが続いている時はヤメた方が良いです。また作業は必ず夕方に。根っこを日光にあてないで下さいね。植物の根っこは司令塔で、お日様が嫌い。

あと、私の移植術が他の人達と違う点はコンパニオンプランツを必ず一緒に植える点です。コンパニオンプランツとは、直訳すると「一緒に暮らす植物」で、お互いが力を合わせてよりよく成長するために支え合うってこと。大切にしたい木のそばに植えることで、栄養分をあげたり、あるいはきてほしくない虫を追い返したり、あるいは自分が虫を惹き付けることで木を守ったり、病気を防いだり・・・農薬なしの庭・畑を実現するには不可欠なものです。

【根っこがあるもの=移植】
実は、最後まで読めば分かるのですが、この手法は樹木だけでなく、野菜の苗にもすべて応用できるものです。ぜひ参考にしてみてください。

(0)移植前に枯れた葉っぱなどはとり、剪定しましょう
*枯れかかった花や葉っぱは必ず取って下さい。病気っぽい葉っぱはとくに。
*密集した枝などは剪定してやってっください

(1)移植の前の夕方に、バケツに水+焼酎+お酢を入れる
*焼酎がなければウォッカでも(笑)。要は蒸留酒。
*お酢はなんでも。ドイツでは🍎酢が超安いのでリンゴ酢。
*分量は水100に対して1と1ぐらい。でも適当で大丈夫。

(2)これに鉢のままつける
*鉢の底から2,3センチ浸かるぐらいに。
*掘り出した木の場合仮に鉢に入れて浸ける。(少し土を補ってあげる)

(3)翌日の夕方に、移植する場所に穴を掘って、コンポストの土など栄養分のある土を底に、この時点で水をたっぷり目に穴に入れる
*そんなに多くしなくて大丈夫。なるべく、根っこより深いところに栄養のある土やたい肥をおくことで、根っこが頑張って伸びるように誘導。
*木によっては灰も少し入れてあげる。
*水は後で説明するように移植後にあまりあげないが、穴の下の方がしっかり湿るようにたっぷり目にかけておく。

(4)バケツごと移植する木を穴の横にもってきて、取り出し、少しだけ根っこの先っぽを切ってあげる
*根っこに刺激を与えることで頑張る力を引き出す
*幹の近くに上に向いて伸びてしまっている根っこがあればこれも切る(おそらく土のかけすぎが原因)
*市販の木などでポットいっぱいに根っこが苦しんでいる様子であれば、少しほぐしてあげる
*上の方にコケなど生えていたら取り除いてあげる

(5)埋まりすぎず、浮きすぎない程度に土を詰めたところに木をおいて土をかける
*土は栄養分ありすぎる状態じゃない方が良いが、密度がつまってたり、粘土質の土は避けること
*根っこが上に出ないように、幹の周りにこんもりかけないように

(6)植えた木の特徴にあわせたコンパニオンプランツをすぐそばや周りに植える
*たとえばうちでは果樹の根元の周りには、センティッドゼラニウムを植えることが多いです。(注意:日本で一般的な「ゼラニウム」ではない)
*「センティッド」というのは香りのことで、ローズゼラニウムやレモンゼラニウムは、ポプリ、お茶やスキンケアなど女性に素晴らしい役割を果たしてくれるハーブで、虫やナメクジ除けになるだけでなく、毎日使えるハーブです。
*栄養が必要な🍎などには、ローズゼラニウムの外に、マメ科の草を植えます。シロツメクサ(白くローバー)は一度生えると瞬く間に庭中に広がるので、クリムソンクローバーやヘアリーベッチをおすすめします。特にへアリーベッチは霜にも病気にも強くこぼれだねで広がるが根っこが白くローバーほど強くなく扱いやすくおすすめの緑肥です。<=畑にも是非。

(7)必ず草や藁のマルチで土の表面を保護してください
*日本では果樹園でも畑でも土をむき出しにすることが多いのですが、これはやめましょう。土の中の微生物や菌、小動物を殺してしまっては、結局農薬や化学肥料のお世話にならなければならなくなるので
*ジメジメした梅雨時であれば、ぜひ乾かした藁や草を使ってください。なぜなら敷いた草が腐敗してしまうと、結局は病気や虫の原因になるからです。乾かした草や藁は本当に重宝。そのためにも、麦や米は有り難いですね。
*ゼラニウムを植えたとしても土のすべてはカバーできないので、草マルチは必要。
*緑肥の種をまいても草マルチを。生命力強いので勝手に草をかきわけて芽を出します。霜が降りる前にそれなりに育つタイミングまで。ただ青々した草マルチをかけると種の発芽率を落とすので、枯れたものの方が良いです。
*あとはたっぷり目の草・藁マルチはカエルなどの虫を食べてくれる小動物の隠れ家にもなります。
*なお、日本の皆さんがナゼか大好きなビニールのマルチ…やめておきましょう。

(8)水やりは最低限、コンパニオンプランツにかけ、土を湿らせる程度で、次の水やりは3日目ぐらいに
*ここが一番重要かも。多くの人は移植後にたっぷり水をやらないと木が死んじゃう!って思って、じゃんじゃんかけるのですが、そうすると根っこの定着が遅れるのです。なので、土が湿っているぐらいで大丈夫です。そのためにも草マルチは不可欠なんです。
*温かい時期に移植すると次の日に元気をなくしているように見えるかもしれませんが、我慢してください。水は3日目ぐらいにあげるのが一番根っこを強くし、定着を促します。(季節や日当り、気温にもよるので、様子をみながら判断してね。ばあいによって2日目の方が良いかもなので)

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ちょっと元気がなかった市販の🍎の木の下の植生を変更。ローズゼラニウムが少しだけ見えるかな?この他、クリムソンクローバーとマメ科の草(名前知らず)も生えている。1メートルぐらいの高さなのに今年は11個も実がなった。
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こちらは冬になり、ホームセンターでほぼ捨てられた状態にあったプラム。可哀想なので購入。霜の降りた後だったが、しっかり定着した。マルチはビオトープの茅を刈って乾かしたもの。本当はもっと広い面積をカバーする予定が足りなかったのでこの程度。今芝生のお庭を徐々に果樹とハーブと畑のコーナーに転換しつつあるプロセス。



【根っこのないもの=挿し木】
ハーブはこの方法で増やすことが可能です。

(0)ハーブを剪定し、新芽の部分を活用
*残りの部分はお料理にポプリにお茶に
*私はハーブの収穫で出る枝を挿し木に活用しています
*実は新芽でなくとも根は出るのですが、確実に増やしたい方はぜひ伸びがいい枝を選んでください

(1)花、余分な枝、枯れた葉などがついていたら削除
*枝がたくさん出ている枝よりも、一本だけの方が上手くいきます
*が、私の経験では元気な枝は沢山の枝がくっついていても生き延びることもあります(確実性をもとめるならぜひスリムにしてあげてください)

(2)コップやバケツに水、根が出るまでしっかり水に浸ける
*どのハーブの本にもこのように書いてあり、実際そうすべきでしょう
*根っこが出てくるのを愉しみにしながら、キッチンテーブルの上で観察するのも楽しいのでおすすめです。
*水はカルキや塩素が強い、硬度が高いものより浄水器をとおったものが良いですが、いつもキレイな水であることが重要

<<しかし、私はコップのプロセスを飛ばしていきなり挿し木、その方法>>

(3)雨の後、そしてその後も雨が続くことを天気予報で確認して、増やしたい場所に挿し木(根っこの出たものも)
*根が出てなくとも、以下のハーブは強いのでこの方法で根っこが出て定着する確率が高いです
(ローズマリー、セージ、ラベンダー)
(オレガノ、タイムは、引っぱれば根っこがついてくるので、挿し木ではなく根っこごと移植しましょう)
*降るはずの雨が降らないときはとにかく土壌が乾かないように水を頻繁にあげてください

(4)草・藁マルチはMustです
*これを忘れると根っこは出てこないので、確実にたっぷりの草マルチを被せてください。

(5)あえてコンパニオンプランツは不要です
*ハーブ自体が優れたコンパニオンプランツなのでとくに要りませんが、その強さ故に広がって行くことをイメージして植える場所を決めてください
*以上のハーブの形成する灌木は作物を食べる虫の天敵となる虫や小動物の素晴らしい住処になるので、そのこともイメージして植えると良いです。

<=一年草のハーブは毎年植える必要がありますが(こぼれダネで発芽させる方法もあり)、灌木になるハーブは忙しい人には本当にありがたい助っ人。料理、お茶のおともになるばかりか、お医者さんとして活躍してくれる。ぜひ庭や畑の周囲や真ん中にハーブコーナーを大々的にもうけることをおすすめします。

<=ハチもクモもカエルも大好きなハーブコーナー。農家にとって救世主でもあるのに日本では広がらない…。ぜひ色々試してほしいです!


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11月上旬。雨が続き、剪定もしなければだったので、剪定したラベンダーをただ差して茅マルチで覆っただけ。1週間後、しっかり根っこが出て定着したことが分かった。

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なにがなんだか分からないと思うが、いま果樹園にかえようとしている森と庭の境界線コーナー。ここは芝生と石南花、松のモノカルチャーコーナーで暗かった。石南花を減らし、枯れた松を切って右奥に積んでハリネズミやリスのお家にしてる。剪定した石南花の枝は2年かけて乾かして薪ストーブの燃料に。葉っぱは肥料に。道なりに古代麦(スペルト麦)を植え、徐々に果物の木を移植中。50メートルプールx2ぐらいの面積に、今は🍎5本、梅6本、ベリー5本、チェリー3本の苗が植わっている。




# by africa_class | 2019-11-30 23:39 | 【食・農・エネルギー】

【現在、無料公開中】朝日新聞社『論座』連載フィナーレ「イスラム国がモザンビークを攻撃」の衝撃(結)ロシアの軍事支援、「資源の呪い」国家への階段

少しご紹介が遅くなりました。

2019年10月22日に公開された朝日新聞『論座』の連載のフィナーレ「結」をご紹介いたします。
今なら全文無料で読めるので、まずはこの「結」からご笑覧下さい。そして、お気に召せば、「上」「中」「下」とお読み進め下さい。


「結」の構成を紹介します。
おそらく、この連載を最初から知っている皆さんとして、このような「結」に至るとは、思ってもみなかったと思います。つまり、「ロシア」が最後に重要アクターとして登場するとは・・・。

ロシアからの軍事支援の到着

ロシアの⺠間軍事会社ワグネル社とは?

ワグネル社とプーチン大統領との関係

「欧米と日本の利権の核心」にロシアが現れた意味

モザンビークをめぐる欧米諸国とソ連/ロシアの確執

天然ガス開発と「隠れ債務」問題

天然ガスとの取引で「悪い統治」が容認される?

天然ガスと軍事力で「臭いものに蓋」をする

ロシアの登場で懸念される「戦争経済」の影

「資源の呪い国」への階段を駆け上がる

真実を追求し、情報操作に惑わされず、腐敗と不公平な国家運営に抗う



実は、私もそうでした。
ただし、連載を始めた時から、想定していた結論は変更する必要がありませんでした。
むしろ、それがより強力な出来事の数々にバックアップされた形で現実のものとなってしまった…。
第二の故郷モザンビークの人びとの直面する大きな困難と深い闇。
それをえぐり出さなければならなかったこの数週間は辛かったです。

「悪い統治」「隠れ債務」「不処罰」「市民社会空間の弾圧」「戦争経済」「資源の呪い」「選挙暴力」「権力掌握」「暴力の激化」

これらはすべて、モザンビークで天然資源が(再)発見され、日本を含む世界の官民マネーがなだれ込み、資源開発とインフラ整備が進んでいくプロセスで、顕在化・強化されていったものです。

以上のプロセスが始まったのは、ゲブーザ政権の一期目から二期目にかかる時期(2009年-2010年)。丁度、ナカラ経済回廊開発・プロサバンナ事業、モアティズ炭鉱への三井物産の参画など、日本の官民が前のめりでモザンビーク北部に関与していった時期と重なります。そして、サハラ以南アフリカの国として初めてのモザンビークとの投資協定…。天然ガス開発への三井物産とJOGMEGの関与…。

2014年にニュシ大統領に変わっても、このプロセスは止むどころか加速化し、市民社会関係者やジャーナリストの暗殺が相次ぎ、暴力は中部から北部へと場所を移しながら悪化を遂げ、そして今年前半期で以上のすべての問題が決定的な形で、立ち現れました。

ここ数年、国際社会が真相解明を強固に迫ってきた「巨額隠れ(消えた)債務」の詳細が、昨年末のFBIやニューヨーク地裁の登場で明らかになり、健全なガバナンスの最構築に向けての機運が高まるかと期待されたその瞬間に、その道が天然ガスによって塞がれていくプロセスを目の当たりにしました。その先頭に、日本の三井物産とJOGMEGなど、税金で支えられる機関がいました。(三井物産のモザンビーク投資には、公的基金による融資・貿易保証が付与されています)。その先には、日本の電力消費者がいます。

「遠い」アフリカ。「遠い」モザンビーク。
私たちの暮らしや税金が、「遠いどこか」の「誰か」の暮らしと未来を破壊しつつあることを、日本の人達は知らない。
だからこそ、ペンを取りました。

「下」で終るはずだった連載が、「結」を必要とした理由。

それは、ロシアの関与で、懸念していたことが、くっきりと構造的に可視化されてしまったからです。
正直なところ、最悪の事態と言わざるを得ません。

今後ますます、モザンビーク北部の天然ガスと暴力は、きってもきりはなせないものとして結びつき、またモザンビ−ク全体、そして東アフリカ全体のセキュリティに大きな影響を及ぼしていくでしょう。

本当はこの分野(戦争、暴力、平和)とはおサラバしたつもりでした。
食と農の分野における構造的問題とすでに世界にある可能性・オルタナティブの紹介に全力をあげたい気持ちは、今でもそうです。

しかし、運命のコマがめぐりめぐって、2019年のこの時期に、過去の仕事を引っぱり出させてしまった以上、今後もこれについて日本と世界の皆さんに分析を提供していきたいと思います。来月にはドイツの国際会議で少し話すことになりました。でも、分析軸をいくつか提案したので、あとは他の人が研究を進めていってくれればと願っています。


【現在、無料公開中】朝日新聞社『論座』連載フィナーレ「イスラム国がモザンビークを攻撃」の衝撃(結)ロシアの軍事支援、「資源の呪い」国家への階段_a0133563_17271588.jpg


# by africa_class | 2019-10-26 17:31 | 【記録】原稿・論文

【あと26時間無料】朝日新聞社『論座』の連載(「イスラム国がモザンビークを攻撃」の衝撃(下)〜天然ガス開発の深刻な影響と日本の関与)が掲載されました。

おはようございます。
前回ブログの反響がどうやらすごいのですが(笑)、また改めて投稿したいと思います。人生をかけての、私の役割は、ファクトに基づきつつ「タブーに切り込む」ことで、いろいろな人が考えるきっかけを提供することなんで、議論を喚起できれば幸いです。

今日は、あと26時間経つと、無料では読めなくなるので、昨日掲載された連載の最新記事を紹介しておきます。
(*掲載から48時間無料なので、多分月曜日夜までは無料)

実は、この連載のグランドフィナーレ「結」も書き終えており、火曜日夜に掲載の予定です。自分でいうのも何ですが・・・みなさんが、ビックリするような結末を迎えますので、どうか事前に(上)(中)(下)と読み進めておいてほしいのです。その結論は、最初からイメージしていたものでした。しかし、現実が私の不安を遥かに超えたものとして、立ち現れてしまいました。

「イスラム国が #モザンビークを攻撃」の衝撃(下)
天然ガス開発の深刻な影響と日本の関与


「知らなかった!」「もっと読みたい!」の方は、ぜひ「論座」読者になって、(上)と(中)をお読み下さい。



天然ガス輸入で日本も関係大。「遠いアフリカの国」の出来事で片付けられない



攻撃の背景に関する四つの分析




この連載を書こうと思った理由を少し紹介します。


(1)『モザンビーク解放闘争史』(御茶の水書房)を出版してから、はや12年が経過しました。アマゾンではない本の紹介ページを探してたら、なぜか峯陽一さんの書評が出てきたのでそちらを紹介させていただきます。

勿体ないほどのお言葉ですが、同時に前段の峯さんの想いもまた、この連載につながってくる話なので、時機にかなったものかな・・・と思い、皆さんに是非ご一読いただけたら。実は、この書評読むのが10年ぶりぐらいなので、目から鱗の発見がいっぱいありました。

(1)でやろうとしたことを、こんなに的確に短くシャープにまとめてもらったのは、本当にいくら感謝しても感謝しきれない。700ページ。。。あの時代は、どうしても簡単に説明するということが出来なくって(今もだが)、こんな風に書けばいいのだな、と本当に勉強になる。自分の思い入れがあることを、少し離れたところから見て、表現するって、本当に重要ですね。まだまだそこが苦手です。



一部十分に伝わっていないこと(解放闘争期のフレリモの評価、マシェルの評価、国際関係の重要性)があるのに気づきました。伝えるって難しいですね。特に、マシェルの評価はそう書いたつもりなく、またモザンビーク戦争の原因を「内部要因」に求めないためにも、歴史と国際関係の縦軸と横軸を広げたのだけど・・・本全体の中で「内部」に触れる割合が大きいとやっぱり伝わらないんだな、と。前段階で枠組みを広げてからやったので、大丈夫かと思ったのだが、甘かった。でも、そうかもしれないと思ったので、あとで紹介する(3)『解放と暴力』で補足したつもりです。峯さんに、いつかぜひ(3)の書評を書いていただきたいなー。

でも、学問の場から離れて暮らすと、そういう学術的なやり取りが恋しくなったりする。鳥の声を聞きながら生きとし生きるものたちからの深く複雑な学びもまた格別ながら。

私の言葉で(1)を紹介するならば、長い植民地支配、それからの解放の死闘、そしてすぐに勃発した過酷な戦争・・・。世界と歴史に翻弄されながらも、時に抗い、時に流れに乗り、生きてきたモザンビークの人びと。歴史の縦軸と国際関係の横軸で、人びとの生との綱引きをあぶり出そうとした・・・のかな?

実は、これを着想し書いてる間、ただ研究していたわけではなく、同時進行で、モザンビークや世界、日本の仲間たちと、モザンビークの和平と民主化に関わりながら、祈りながら調査し、考え、書いたものでした。

そしてモザンビークはどんどん進化を遂げ、モザンビークの新しい多様な人びとが、未来の土台をつくっていっているのを眩しい思いで見た時代もありました。平和や民主主義が社会に根ざしたものになるようにとの機運は、アフリカの中からも、世界でも、広がっていました。その運動に参加しながら、(2)をまとめたのでした。


(2)『アフリカ学入門』(明石書店)を出してから、9年。



日本でも政権交代が実現した時期でもありました。
アンゴラの腐敗を尻目に、「資源がなくてよかったね」と平気で口にできる外交官や政府関係者、研究者やNGOたちと、モザンビークの持続可能な未来を、夜な夜な語り合ったのもこの時期。

しかし、2012年夏にプロサバンナの問題で、モザンビーク小農運動に呼び出された時に、すでに(2)で見た夢が遠のきつつある現実にうすうす気づくようになりました。確かに、モザンビークの農村部の環境は激変する兆しを見せていました。

あとは怒濤の日々でした。
警告したことのすべてに、日本の官民が手を染めていくのを、後追いすることに疲れ切った時期もありました。

何度も何度も、この道は行ってはならぬ道と、ファクトを集め、提供し、伝えてきました。
でも、立ち止まらなかった。その道を突進していった…。

小農運動に呼び出されて、気づいたらあれから7年。
日本を離れてなお、日本について考え、動き続けないといけないのは、正直辛いです。
でも、1994年にモザンビーク北部の村々で出逢った人びととの約束が、私を突き動かしてきました。「世界に伝えて」との言葉に。

考えたら、私には「ペン」しかなかった。
それを十分に活かすことを許さないような自分の健康と日本の市民社会の状況がありました(今もある)。

でも、「世界に伝えて」と言葉を託してくれたモザンビーク北部の人びとのほとんどが生きていない現実の中で、やはり私はこの「宿題」を果たし続けないといけないと、ようやく思い当たりました。

なので、以下の6章は、この間みてきたモザンビークの変化を、歴史の中に位置づけながら描いたものです。自分の20代から40代半ばまでを共にすごしたモザンビークと日本のかつての仲間へのレクイエムとしても書きました。

(3)小倉充夫先生との『解放と暴力ーアフリカの植民地支配と暴力』(東京大学出版会)


そして今、6章で書いたことが、さらにパワーアップ&最悪の形で、モザンビークに立ち現れています。日本の関与をもって。
だから、(3)の続編として、この『論座』の連載を始めました。

学術界の知っている人にだけ伝えるのではなく、より広い層の皆さんに伝えたいと思って。
連載を続けながら、事態は悪化していきました。
それも分かっていたことでしたが、最初に想定した以上の展開となってしまいました。

でも、結論は同じです。
そのことが、悲しいです。

最後の「結」を読めば、問題の大きさに気づいていただけると思います。

分析は徹底的に悲観的にして、目標はポジティブに立てる。
そうやって生きてきました。
でも、いつもこの悲観的な分析が当たらなければ・・・とも思っていました。

当たってしまった今、私たちに残されているのは「希望」だけなのかもしれない。
だから、今日も「希望」を紡ぐために畑に向かう。

【あと26時間無料】朝日新聞社『論座』の連載(「イスラム国がモザンビークを攻撃」の衝撃(下)〜天然ガス開発の深刻な影響と日本の関与)が掲載されました。_a0133563_18520697.jpg
写真は、『論座』の連載(下)でも使わせていただいた「モザンビークのいのちをつなぐ会」さんのもの。マコンデの人びとの伝統儀礼の様子です。








# by africa_class | 2019-10-20 19:28 | 【記録】原稿・論文