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新刊『国境を越える農民運動』(シリーズ「グローバル時代の食と農」第2巻)の訳者解説に書いたこと。

このご時世に9巻のシリーズ刊行に賛同してくれる日本の出版社を見つけるのはほとんど不可能に近いことだった。しかも訳本とあって、どの出版社も売れそうな巻だけの出版しか賛成してくれなかった。やっと同意してくれたのが、明石書店さんだった。

■シリーズ本については以下の投稿を!

明石書店さんとは、『アフリカ学入門』を2010年に出版させていただき、4刷まで行ったこともあって、話はもって行きやすくはあった。

舩田クラーセンさやか(編)
『アフリカ学入門〜ポップカルチャーから政治経済まで』
明石書店、2010年
http://www.akashi.co.jp/book/b67746.html

*見てわかる通り、私は本の表紙・装丁にスゴくこだわりがある。持ち歩いて目立ち、「え?なにその本?素敵だね!」と言ってもらえるような本の装丁を目指している。

各種シリーズものも出しているし。でも、最後は社長との直談判、そして販促計画をたて、これを具体的に実行するという条件で合意してもらった。当然、私たちには一銭も入らない条件(*日本の出版業界の現実はこうなのです…)。

でも、社長との約束以上に、とにかく危機迫る世界と日本の食と農の問題について、一人でも多くの日本の皆さんに知ってもらうには、この本を届けたい。そんな想いでこれを書いている。

さて。
国連総会で「小農の権利に関する国連宣言」が採択されたことは、この本の重要性を高める結果となっている。この宣言採択のプロセスは、6章に詳しいので、ぜひ読んでほしい。でも、この本の意義は他の点にもある。

ここら辺のことは、訳者解説にかなり詳しく書いたので、一部を抜粋するので、残りはぜひ本を手に取って読んでもらえれば。

マーク・エデルマン&サトゥルニーノ・ボラスJr.
監訳:舩田クラーセンさやか、訳:岡田ロマンアルカラ佳奈
『国境を越える農民運動〜世界を変える草の根のダイナミズム』
明石書店、2018年
http://www.akashi.co.jp/book/b420388.html

*こちらの表紙は小林舞さん(総合地球研究所)のスケッチ。素敵でしょ?シリーズの色は日本の古色で揃えていて、この巻は「柿色」。

===
 2018年9月28日、素晴らしいニュースが飛び込んできた。

 本書の第6章でも取り上げる「小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言」が、国連人権理事会で採択されたというのである。あとは、今年中の国連総会決議を待つだけとなったが、これも圧倒的多数の賛成が予想されている。

 この国連宣言の草稿となった諮問委員会の第一ドラフトは、2008年に世界最大の小農運動といわれるビア・カンペシーナが発表した「小農権利宣言」を土台としていた。さらに、この「小農権利宣言」は、本書でも紹介されているように、1990年代末からインドネシアのビア・カンペシーナに加盟する小農が協議に協議を重ねてつくりあげ、2008年のビア・カンペシーナの国際会議で採択された宣言文をもとに準備したものであった。また、ビア・カンペシーナとその協力者らは、「小農権利宣言」だけでなく、2014年の「国際家族農業年」、そして来年から十年間の「国際家族農業の10年」の国連総会での採択も実現させている。

 「国境を超える農民運動」をテーマとした本書は、この世界80カ国の2億人の小農が加盟するビア・カンペシーナの誕生と国際舞台での活躍抜きには成立しなかったであろう。逆にいえば、このような現象こそが、本書が世界に必要とされた背景ともいえる。

 かつて国連を研究対象とし、国際関係学に身を置きながら、アフリカの小農の歴史を学び、アフリカや南米の小農運動と一緒に活動してきた筆者にとってすら、これは驚くべき出来事である。「南の小農」が、国際政治の最前線にあたる国連に対して、アジェンダ設定を提案し、国連文書のたたき台を提供し、国家間協議に参加して意見を述べ、「ソフトロー」とはいえ現実に新しい国際法の成立を導いた事実は、2008年の「先住民族の権利に関する国連宣言」と並び、世界史に残る出来事といっても過言ではないだろう。

本書の特徴

 しかし、本書は単にビア・カンペシーナをはじめとする「国境を超える農民運動」を讃える本ではない。その挑戦に理解を示しながらも、厳しくも冷静なまなざしで、農民運動の課題と可能性を、歴史的背景と政治的ダイナミズム(力学・動態)にもとづき、明らかにしようと試みる。

 本書は、戦前(1920年代)に北米で結成され広がりをみせた世界農村女性協会を最初に取り上げ、農村女性が女性同士の連帯にもとづいて「国境を超える農民運動」を形成したことを紹介する。そのうえで、政党(農民党、共産党、後に社会民主党)、植民地解放運動あるいは反独裁運動、宗教(たとえば、カトリック教会)、農村を手伝う都市住民のボランティア活動が、小農運動の越境性(跨境性)にどのように影響を与えたのか(国際条件がどのような影響を各国・各地の小農や小農運動に影響を与えたのか)を、明らかにする。特に、「なぜ、どのように関係が構築されたのか」に注目している点が本書の特徴といえる。そのため、多様な農民運動の歴史的な展開を重視しつつも、国際的な政策の潮流の変化を縦軸に、社会の様々な層と小農の関係を横軸に、多角的な分析を試みている。

 前者(縦軸)については、戦後の福祉国家に向かう動きが紹介された後、その観点からは「異端なもの」として冷笑の対象となっていた新自由主義的な政策が世界に広がっていき現在に至るプロセスが示される。後者については、各農民運動の加盟農民の階級分析を土台として、運動の目的や戦略、アライアンスの形成先の違いを明らかにしている。

(中略)

 このように本書は、社会運動や農民・農民組織、国際関係学に関心がある人だけでなく、開発援助や外交政策に関わる実務者、国際法の研究者にも役に立つ本となっている。1980年以降の日本では、歴史は忘れられ、所謂「途上国の小農」は「助けてあげなければならない対象」のイメージが根強い。

 しかし、特に南の小農が世界史的に果たしてきた役割の大きさはとてつもなく大きかった。現在では、国際常識(規範)上は絶対悪とされる「植民地支配」や「傀儡政権による支配」も、南の小農の抵抗や闘い抜きには、規範の転換も現実の消滅(後者は道半ばとはいえ)もあり得なかった。その意味で、世界の民主主義の発展において、南の小農が身を挺して果たした役割は大きかったといえる。

 しかし、その多くは国家レベルから国際レベルまでの失政あるいは圧力によるものだったとはいえ、世界とりわけ南の小農が直面した1980年代や90年代から現在まで続く厳しい状況の中で、小農は「貧しく、代替案を持たない、援助を待つ存在」として認識されるようになった。これは北の援助者にとどまらず、南のエリートも同様である。

 このような認識は、新自由主義的な政策の導入プロセスのなかで、ますます強化され、「粗放農業しか知らない現地農民は農業ポテンシャルのある広大な土地を余らせている」との言説が世界的に広められていった。その典型事例が、2009年に日本がブラジルと組んでモザンビークに導入しようとしたプロサバンナ事業であった[i]。

 21世紀に入ってからの凄まじい農地・水源・森林収奪は、「ランドグラブ」として世界の注目を集めるようにはなった。しかし、農村地帯を「空白地」として眺め、そこに暮らし耕し命をつないできた小農の存在は無視あるいは軽視し、国家計画や経済効率のために空間を明け渡すべき存在として「客体化」する傾向は依然として強いままである。世界的に生じたこの現象に、歴史的にも現代においてもその尊厳と主権を踏みにじられてきた小農が、尊厳ある「主権者」として立ち上がり、あらゆるレベルの人びとや運動とつながりあいながら、世界にその存在を認めさせるようになりつつある。大きな限界に直面しながらも、危機を転換する力を小農が内包していたこと、それを可能とする条件や協力者がいたこと、この点について本書は詳しく紹介している。

 本書は、第5章で「私たちなしで、私たちのことを語るな」という当事者らの強烈なメッセージを紹介しているが、「小農のために」と語りがちな都市あるいは北の私たちに鋭い課題を突きつける。これは表象や政治的な正しさ(political correctness)の問題にとどまらない。小農に多大な影響を及ぼす政策や計画・事業が、小農以外の人びとの頭の中で考え・決定されることへの異議申し立てである。「小農権利宣言」のドラフトには、これらの外から持ち込まれる政策などを小農が拒否できる権利が書き込まれていた。このことの意味を、日本をはじめとする世界の都市住民はしっかり認識すべきであろう。

 その意味で、本書が農民運動や農家内のジェンダーや世代問題を取り上げている点は、注目に値する。日本のジェンダーギャップ指数が2017年に114位と低かったことに示されるように、この問題が日本で真正面から語られることは依然として少ない。ただし、これはアジアや中南米、そしてアフリカでも同じである。ここでも国境を超える運動が果たす役割の大きさが、本書で明らかにされる。

 年功序列・男性優位の農村社会や農民運動が、まずは国境を超えた女性同士の出逢いによる課題の共有から始まり、女性たちが一致団結して国際レベルでのリーダーシップの参加を要求し、それが実現した後、国際レベルから各国の運動、そしてローカルな運動に持ち込まれていったことも記されている。現在、世界で最も活発で動員力のある運動とされるのが「女性運動」である。女性運動を介して、都市の女性と農村の女性の運動が出逢い、政治を動かしつつあることまでは本書は触れていないが、いつかの機会にこれを紹介することができればと思う。

 (中略)

 最後に、国際機関と小農運動がどのように関係を結んできたのか。その背後にあった多様な小農運動のさまざまな戦略、そしてそれを支えるNGOや非政府系のドナー、政府系の援助機関の動きについても本書は丁寧に取り上げており、国際関係学や開発援助の研究者にも大きな示唆を与えるだろう。

 (後略)
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以上は、2018年11月21日の3カ国民衆会議の国際シンポジウムの際、原書を紹介してくれた元ビア・カンペシーナ国際局スタッフのボアさんのプレゼン。ボアさんはジュンの教え子でもある。
http://triangular2018.blog.fc2.com/blog-entry-32.html

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2018年11月24日、国際開発学会(筑波大学)で発表するボアさん。



by africa_class | 2018-12-22 06:52 | 【国連】小農の権利宣言